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48歳暴力息子を追い出した78歳親の決断

プレジデントオンライン / 2019年2月7日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Satoshi-K)

今回の相談事例は、70代後半の両親と48歳息子の3人家族。母親が認知症を発症し、ひきこもりの息子は父親への暴力を激化。元会社役員の父親は6500万円の貯蓄を残しているが、このままではいずれ行き詰まる。相談を受けたファイナンシャルプランナーの出した解決策とは――。

■48歳長男は母親の庇護のもと20年以上が過ぎた「結果」

相談者は、78歳の父親でした。

48歳の長男は、高校を1年で退学。その後、数カ月程度のアルバイトをしたことが何回かあるが、「年単位」で継続して働いた経験はない。

アルバイトを辞めてしまう理由として、本人いわく、「上司が自分ばかりに『仕事が遅い』だの『順番が間違っている』、『のみ込みが遅い』といった文句を言うから」だという。20代半ばまでは不定期ながらも働いてはきたが、最後のアルバイトを辞めてからすでに20年以上の月日が流れている。

生活パターンとしては、昼ごろに起きて、テレビを見たり、本を読んだり……自室ではパソコンに向かっている時間が長いという。

おなかがすくと、母親(75)に食事の催促をする。催促されるたび、母親はできたての食事を用意している。食事は、午後(14時から15時頃)と夜(20時から21時頃)の2回とのこと。

長男と母親の関係は良好で、母親も働けない長男のことを「安心して、働ける先が見つからずにかわいそうだ」ととらえているよう。母親がやさしいのか甘やかしているのかはわからない。だが、現実的には母親の庇護のもと、なんとなく20年以上が過ぎてしまったということだ。

■72歳の父親は元会社役員、企業年金を含む年金は多い

父親は息子の将来を案じ、少しでも貯蓄を増やしたいと、72歳まで会社に残り、役員として仕事を続けてきた。企業年金を含めて年金額が多いこともあり、70代後半の現在でも、家計収支は赤字になっていない。

現在の状態がずっと続けば、親が残したお金で、長男は一生働かずとも生活が成り立ち、金銭面での不安はそれほどないはずだった。

【家族構成】
父親 78歳
母親 75歳
長男 48歳
【家計状況】
貯蓄 6500万円
収入 父親年金合計320万円(企業年金含む)
母親年金 60万円
本人収入 0円
支出 年間350万円程度
※長男の国民年金保険料は親が払っている

■母親に認知症の症状が出て、長男が父親に暴力を振るう

ところが、3年くらい前から母親に認知症状がみられるようになってきた。最初は、「年相応の物忘れだから、よくあること」と、父親は思い込むようにしてきたそうだが、現在ではひとりで外出すると、自宅に帰れなくなる機会が多い。妻を探しまわることも増えているが、長男は探しに出るのを嫌がるため、ひとりで探し回るのがつらくなってきている。

妻の異変に気付いたきっかけは、冷蔵庫の中に同じ種類の食品が、「これでもか」というくらい詰め込まれるようになったこと。買い物したことを本人は忘れてしまうようで、買い物に行くと、すでに冷蔵庫に入っているものを、何度も買ってしまうのだという。

妻に、「○○が5個も入っているよ」と注意すると、「あら、そうだったかしら。うっかりしていたわ」という返事が返っては来るが、翌日も同じことを繰り返すのだという。

ひとりで外出すると迷子になることもあり、スーパーなどもできるだけ父親は付き添うようにしていた。ところが最近、それも難しくなってきた。長男は父親のことを極端に嫌っており、自分が起きている午後の時間は、「できるだけ外出しろ!」と強要するからである。

最近では、父親のトイレの扉の開け閉めにさえ「うるせえー。静かに閉めろー」と毎回文句を言う。長男と父親が一緒に食事をすることなど想像もできず、長男が食事を取っているとき、父親は寝室にこもり、息を殺したように長男が食べ終わるのを待っているという。

さらに長男の要求はエスカレートする。ここ数カ月は、「俺が起きている時間は、家の中にいるな」と父親に命令するありさまで、しかたなく、父親は図書館などの公共施設で時間をつぶすように努めているそうだ。

■「俺を殺すために、こんな料理を作るのか!」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/coldsnowstorm)

いっぽうで、妻の状態も日に日に悪化。父親が帰宅すると、台所にボヤのあとが何度も見られたそうだ。妻は火をつけていることを忘れてしまうらしく、ボヤで済まない時が来るのではないかと、父親は恐れている。すでに母親は、食事を作れるような状態ではないにもかかわらず、長男は母親に食事を作らせている。

味覚も変わってきているため、「まずい! 俺を殺すために、こんな料理を作るのか!」など、母親に対する長男の態度も徐々に悪化してきている。

母親の食事がまずかったり、父親が早く帰宅したりしたときなどには、長男が父親をたたいたり、押し倒したりすることも増えてきた。体格差で息子に太刀打ちできない父親は、母親の認知症の悪化と、長男の暴力の激化におびえる毎日を送っている。

■母は介護施設へ住み替え、父親と長男はそれぞれ別世帯に

相談者(父親)からは、数年にわたって4回ほどご相談を受けている。過去との比較において、早急な住み替え対応が必要だと感じたので、次のようなアドバイスをおこなった。

「今の状態が続けば、お父様が息子さんにけがをさせられるか、最悪の場合は殺されてしまう可能性もあります。あるいは家が火事になって、焼け出されてしまうかもしれません。どのリスクが先にくるのかはわかりませんが、そのくらいひっ迫した状況になられています」

私の言葉に、父親はかなり驚いた様子だった。周囲から見れば、かなり危ない状況だと思われても、当事者にとっては、毎日少しずつの変化であり、「家の中での暮らしを守ること」が優先されるため、危険性を認識しづらくなっているように思われた。

「お父様だけではなく、お母様もご長男も望まない選択肢になりますが、私の目には、3人の方が別々に暮らすのが、一番安全な方法にうつります」と伝えました。

■「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SmokedSalmon)

私の言葉にさらに驚いた表情をした父親でしたが、ボソッと「わが家はそこまで緊迫した状態なんですね。先生に言われるまで、そこまでひどいとは気づきませんでした。長男には毎日外出を強制され、どこで時間をつぶせばよいのかを考えるだけで、精いっぱいでした。私が家を空けているときに妻が迷子になったらどうしようかと、それも心配でしたし」と言いました。

「息子さんの暴力がひどくなっているようですし、お母様の状態が今より良くなる可能性は低いと思います。お父様が動けるうちでないと、全員の引っ越しはできなくなるので、気はすすまないとは思いますが、覚悟を決められてはいかがでしょうか。お母様の住み替え先の候補となる介護施設探しは、私のほうでもお手伝いしますから」

3人で別世帯になるためには、母親の介護施設への住み替えだけではなく、自宅の売却、父親と長男がそれぞれ住むマンションの購入が必要になる。

とはいえ、母親は現時点で介護認定を受けていないため、早急に介護認定を受ける作業が必要だ。さらには介護認定を受けたとしても、要介護3以上でないと原則として特別養護老人ホームには申し込めないことも懸念材料。介護認定で要介護1、あるいは要介護2の判定が出た場合は、介護専用型のケアハウスにいったん入所して、待機するのが現実的だと思われた。

また要介護3以上と認定されても、すぐに特別養護老人ホームに入所できるわけではない。特別養護老人ホームによっては、100人単位の待機者がいるケースもあるからだ。介護施設が決まらないと、父親の住み替え先となるマンションエリアも決められないため、介護認定を受けたうえで、いったん介護型ケアハウスに住み替えて、特別養護老人ホームの入所を目指すのが現実的なプランのように思われた。

■母親が介護施設に入所後、父親は賃貸住宅に住み替える

以下に、今回のケースにおいて、これから必要な作業を書き出してみた。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/XiXinXing)

(1)母親が介護認定を受けるための申し込みを行う。

(2)介護認定が要介護3以上であれば、特別養護老人ホームに入所を申し込む。空き状態はホームごとに異なるため、複数箇所への申し込みをおこなう。

(3)要介護1、あるいは要介護2と認定された場合、介護型ケアハウスにいったん住み替える。介護型ケアハウスに住み替えて時間がたち、介護状態が重くなったら特別養護老人ホームへのさらなる住み替えをおこなうか、そのまま介護型ケアハウスに住み続けるかは、入所後の様子を見て決める。介護型ケアハウスでは待機もできるため、急ぐ必要がないのは安心材料となる。

(4)母親が住み替える介護施設が決まったら、父親の引っ越し先を探す。長男が自発的に引っ越すことは考えにくいため、父親が先に引っ越すのが現実的である。また母親の最終的な住まい(特別養護老人ホーム)が決まるまでは、いったん賃貸暮らしを選択したほうが安全かもしれず、この辺りは介護施設と物件探しを並行しながら決定する。

(5)父親の住み替え先を見つけて引っ越しが完了し、新生活にも慣れてきたら、長男のマンション探しをおこなう。ここは時間がかかりそうな作業だが、父親の年齢を考えると、3年以内には決着をつけたいところである。

■長男の引っ越し完了後、自宅の売却作業をする段取り

(6)長男の引っ越しが完了したら、自宅の売却作業をおこなう。長男が住み替えを断固拒否した場合は、自宅を保有したままの可能性も残る。

仮に長男が自宅に住み続けたとしても、父親亡き後は父親が購入したマンションを賃貸に出して、収入を得られる。長男の老後は、国民年金に賃貸収入を足せば、生活は継続できることが計算上(キャッシュフロー表による収支状況の計算)、つかめた。

また、自宅を手放さない場合、将来的に自宅の土地を担保にして、リバースモーゲージなどの利用も検討できそうである。いずれにしても、本来はじっくり検討すべき「働けない長男の生活」は、父親に危害を与えて警察沙汰などの問題を起こさない限り、成り立つと思われる。

(7)母親の入居費用は、住み替え先候補として私が名前を挙げた介護護型ケアハウスの場合、ひと月20万円くらい。この介護型ケアハウスについては、「介護認定が受けられれば、入所は可能」との返事をもらう。

ただし現在は満室なので、数カ月程度の待機期間は必要とのこと。待機者はいないそうなので、介護認定を受けるまでの時間を考えれば、待機期間はそれほど問題にならないと考えられる。懸念されるのは、介護認定を受けて、母親が申し込めるようになるまでのあいだに待機者が発生すること。確実に入所するため、仮申し込みをしてしまうかは検討中。

特別養護老人ホームに入所できるまで、自宅で待機する方法もあるが、今回のケースでは早い住み替えを優先すべきだと考える。ちなみに特別養護老人ホームに住み替えた後の費用は、母親の場合はひと月8万~11万円くらいと想定される。

(8)母親が介護型ケアハウスへ住み替え、さらに父親と長男が別々に生活すれば年間収支は赤字になるが、貯蓄が底を突くほどの心配がないことを、キャッシュフロー表で確認。特別養護老人ホームに住み替えられれば、赤字は抑えられ、キャッシュフローは改善する。

■同時期に問題発生「ひきこもりの子供の高齢化と親の要介護」

私はひきこもり家族がいるご家庭向けのセミナーでは、必ず親の介護問題について話をしている。自分の足で探せる健康状態のうちに、各家庭が持つ資金の範囲内で住み替えられそうなところを探してほしいからだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

ところが、介護の話をすると、多くの親御さんが嫌な顔をする。「自分たちの介護のことよりも、親亡き後の子どもの生活についてもっとアドバイスをしてほしい」という気持ちからだろう。

だが、今回のケースのように、資産的にも年金額でも余裕があるケースでなければ、父親か母親のどちらかに介護が必要になった時点で、資金繰りが行き詰まるケースは多くなる。介護にかかる費用をきちんと見積もっておかないと、親が亡くなった時点での資産額が見積もりとは大きく外れてしまう可能性があるからだ。

■長男が警察のお世話になることのほうが悲しいはず

相談者の中に、父親、あるいは母親に介護が必要になったケースが出てきている。実際に介護が発生すると、それ以降はじっくりと施設を見学する余裕がないこともリスクになる。そのため、私が見学したことのある施設をご紹介する機会も増えている。

「ひきこもりと介護」といってもピンとこない方がほとんどだが、「ひきこもりの高齢化と親の介護問題」という言葉に置き換えると、イメージできる人は増えるのではないだろうか。

ひきこもりのお子さんがいるご家庭では、親が介護認定を受けて、ホームヘルパーが来るようになったのに、自宅に他人があがり込むことを嫌い、追い返すケースも出てきている。介護認定は受けているのに、介護サービスは受けられず、困り果てているご家庭も知っている。ひきこもりのお子さんがいるご家庭で親が要介護状態になった場合は、介護施設へ住み替えないと、介護放置状態になってしまう可能性が高いのではないだろうか。

今回は、母親の認知症に加え、「長男の暴力から逃げて身を守る」ことを考え、住み替えの提案をした。70代後半の父親に、住み慣れた家から離れてもらう提案をするのは酷だと思うが、長男から傷つけられてしまい、長男が警察のお世話になることのほうが悲しいはずだ。時間は相当かかることを覚悟したうえで、慎重に実行支援をしていこうと考えているところである。

(ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子 写真=iStock.com)

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