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ネット通販で「ほとんど返品がない」理由

プレジデントオンライン / 2019年5月7日 15時15分

写真=iStock.com/Bet_Noire

■購入前に刷り込まれている

「気に入らなければ返品OK!」「無条件返品」という謳い文句を掲げるなど、ネット通販で返品可のサイトはもはや普通になりました。しかし、気軽に返品できるにもかかわらず、どうして消費者は、ほとんど返品をしないのでしょうか。

先に1つ、根本的なことを言ってしまうと、「返品の必要がないほど品質がいい」商品だというケースがあります。不満があるから返品するわけで、満足できる、または値段に見合う納得した商品ならば返品率は下がるのはあたり前のこと。

別の面から見ると、「返品OKということは、信頼できる商品のはずだ」と思わせる効果がある。現物に触れられないネットでは品質を判断するのがそもそも難しいので、「返品可」の信頼性が消費者を惹きつけるわけです。そして、その事前に刷り込まれた信頼性ゆえに、返品も少なくなるという面があります。

もう1つ、そもそもいたずらに返品をしない恥の精神が、日本人にはあります。普通の人なら、社会常識に反するようなことはしないもの。実店舗と違って人目につかないネット通販とはいえ、自制心を美徳として内面化している人はまだまだ多い。

言ってしまえば「ネットで返品可」は、ブランド戦略の一種。CMやウェブ広告で積極的に打ち出すのも当然です。もちろん、短期的に返品が増えることはマイナスですが、長期的に「返品可」がブランドイメージを高めるのであれば、そちらのプラスのほうが上回る。百貨店や一流ブランドが以前から行っていたブランド戦略と同じことですが、現物に触れられないネット通販であえて打ち出すことで、新興のサイトやブランドでも信頼感を高めることが可能というわけです。

■「どこがおかしいか説明しろ」

では、われわれ消費者が気をつけるべきことはないのでしょうか。「無条件返品」を謳いながら、実際のところはちっとも無条件ではない場合があるので要注意です。ひと昔前のパソコンメーカーでは「どこがおかしいか説明しろ」という無茶な条件があったりしたものです。

そのような条件が、ネット上ではものすごく小さな文字で表示され、気づかせないまま半ば強制的に「同意する」のボタンをクリックさせられるようなサイトもまだまだ多い。細かな契約の文章を読み込んでから「同意する」べきというのは、言うのは簡単ですが、実際にはなかなかできません。

大手メーカー・サイトなら安心できるかというと、最近では、どんな大手メーカーでも個人情報の漏洩、不正や不祥事も相次いでいます。むしろ、どんな企業も信用できないからこそ、大小かかわらず企業の信頼はフラットになったため、ネット通販への抵抗感を減らし、コストパフォーマンス重視の傾向が進んでいる面があるとも言えます。

そんななか、賢い消費者になることはとても難しい。しかし、利便性やコスパに目を眩ませられることなく、甘い話には「どこかに危険があるのでは」という自己防衛の意識を常に持っておくことは大切です。

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友野典男
明治大学情報コミュニケーション学部教授
著書に『感情と勘定の経済学』『行動経済学 経済は「感情」で動いている』など。

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(明治大学情報コミュニケーション学部教授 友野 典男 構成=伊藤達也 写真=iStock.com/Bet_Noire)

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