デキる人が"中央の引き出し"を空ける理由
プレジデントオンライン / 2019年2月14日 9時15分
※本稿は、キングジム ファイリング研究室『“オフィスのプロ”だけが知っている キングジム 人も組織もうまくまわりだす 超整理術213』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■心理的な「壁」を探ってみる
目の前に山積みとなった書類や資料と日々格闘しながらも、「なんとかなっている」と思い込んでいる人は多いでしょう。
「これまで問題なくやってきたから片づけなくていい」
「自分仕様のやり方でミスしたことはない」
このように、人は従来のやり方を変えることに抵抗を感じるものです。
なぜ整理術が必要なのか――。まずそこから探っていきましょう。
大切な意識は「職場はひとりで回しているわけではない」ということです。回覧書類がどこかに紛れてしまえば、円滑な業務の障壁となるのは容易に想像できます。まずは自分の内側にある、楽をしたがる心理的な「壁」を明らかにして、乗り越えることが第一歩です。
■片づけられない理由は3パターン
片づけられない人、整理が苦手な人の特徴には、主に3つのパターンがあります。
「忙しい、忙しい」といつも言って、片づけをする時間などないと思い込んでいる人
(2)資料が増えてしまう人
仕事に取りかかると、余計な周辺情報まで熱心に調べ上げてしまう人。満足がいくまで資料が集まったときには、書類が山積みの状態で収拾がつかなくなっている
(3)捨てられない人
過去と未来を考えすぎて、資料を溜め込んでしまう人。すでに必要ない書類にもかかわらず「いつか使うかもしれない」「捨てるには忍びない」など、書類が“思い出の品”と化する
ほとんどの方が、このいずれかに当てはまるでしょう。つまり、これら3つの「落とし穴」を知っておけば、「片づけられない人」に陥りにくくなるということでもあります。
■「整理」と「整頓」の違いを考える
「整理整頓をする」というように、整理と整頓は同義と捉えられがちです。しかし、本質は異なります。それぞれの意味を簡単に見てみましょう。
【整理】
基準に基づいて「要るもの」と「要らないもの」に分け、「要らないもの」を捨てること。
【整頓】
ある基準に基づいて「要るもの」を誰もが使いやすいように配置・配列すること。誰でもすぐ取り出せるようにすること。言い換えると、
きれいに陳列すれば整頓したことになると誤解している人がいますが、そうではありません。前提になるのは、「定位置」「定品」「定量」です。定位置に、これと定めた品を、必要と定めた量のみ、使いやすく、かつ、戻しやすく配置・配列することなのです。
■「見極めBOX」にとりあえず捨てる
まずは試しに机周りの書類やモノを「捨てる」ことから始めましょう。
試してほしいのが、「見極めBOX」を使う方法です。これは「捨てるかどうか見極めるため」の箱で、モノをドサッと入れられる段ボール箱を用意してください。
(2)手に取った書類やモノが必要かどうか判断し、「いらない」ならゴミ袋に捨てます。
(3)判断に迷ったとき、必要かどうか「迷った」ときは、「見極めBOX」の中に入れます。
![](https://president.jp/mwimgs/4/1/-/img_41e6a15bfa9eda555dc2a31b71ce1c62228613.jpg)
見極めにかける期間は、1週間、1カ月など、自由に決めて良いです。その間、「見極めBOX」にあるモノが必要になった場合のみ、正規の置き場所を決めて収納します。つまり、期間中に一度も使わなかったものは「いらない」を意味しています。
この方法を、何度も繰り返していると、要らないものを「選別する力」が磨かれていきます。
■引き出しの「役割」を決める
机の引き出しは、何がどこにあるかひと目でわかり、すぐ手に取って使えるように配置しましょう。
そのためには、それぞれの引き出しに、「本来の役割」を設定しなければなりません。
収納するものを決め、定位置を定めることが大切です。そうすれば、使った後すぐに元の場所に戻しやすくなります。なお、会社の重要書類の保管は、鍵のかかる引き出しにしてください。
では、最下段の深い引き出しから入れていきましょう。
ここにはファイル類など大きめの資料を収納します。参照資料、カタログ、社内マニュアル、名刺ホルダーなど個人で管理する必要があり、よく使うものに限定します。
利用頻度の高いものから順に手前から奥へと並ぶようにすると使いやすくなります。
中段には、頻繁に使うものを入れます。CD‐ROMやDVDのほか、スマートフォンなどの充電器など、日常的に使用するものだけを入れてください。その奥に頻繁に見る参考書籍などを収めてもいいでしょう。仕切り板などを使って収納スペースを細分化すると、効率よく収納できます。
最上段の引き出しは、細かい文房具類や日付印などのスタンプ類のスペース。ハサミやペン、クリップ、付箋、USBメモリ、電卓、名刺ケースなどを入れます。中で動いて散乱状態にならないよう、トレイを使い、定位置を決めてすっきり収納するのがコツです。
■センターの引き出しは「何も入れない」
センター引き出しは、基本的に何も入れないことが理想です。これが机の上をいつもすっきりとさせておく秘訣となります。
![](https://president.jp/mwimgs/0/1/-/img_018205046d4c99ddc4d97a2b188fe1a0332566.jpg)
机の上に書類を広げているときに、上司から突然呼ばれたり、来客があったりする状況はよくあります。その際、一時的に書類をセンター引き出しに入れてから席を離れるのです。つまり、離席する際の書類の一時的な退避スペースだと捉えてください。カラにしておけば、大切な書類も、順番を乱さず、収めることができます。
離席するときはすぐ戻るつもりでも、予想以上に時間がかかるかもしれません。ほかの人に呼ばれたり、別の部屋に移動したりすることもあるでしょう。そして、ようやく戻ったら、誰かが置いていった別の書類と紛れている……ということも多いでしょう。
そうしたリスクを避けるために、センター引き出しは空にしておくことをお勧めします。
■“事件”は机の上で起きている
“情報”という観点で、机周りの環境について考えてみましょう。
机の上は、絶えず情報のやり取りを行い、新たな商品や価値を生み出すための「生産工場」といえます。それが最終的にお客様のもとに届き、対価が支払われるのです。
![](https://president.jp/mwimgs/b/2/-/img_b2f94698f6b97897f86d45b56e9fee6c54232.jpg)
したがって、机は「信頼のおける工場」でなければなりません。お客様は当然、それを期待しています。お客様の立場に立ち、工場長の目線で自分の机をチェックしてみてください。
・ミスが起きそうな環境ではありませんか?
・書類探しに時間をとられて生産性が低下し、コスト高の環境になっていませんか?
個人情報を預けたり、機密を共有したりするのに、信頼できない環境で管理しているとすれば大問題です。
情報漏洩事件の多くは、書類を紛失したり、置き忘れたり、間違えて捨てるといった管理ミスが原因となって起きています。情報を閲覧、加工、発信、廃棄するのは、すべて机の上。「事件は机の上で起きている」のです。
■「しっている」と「している」の大きな違い
ここまでで、キングジム ファイリング研究室が培ってきたメソッドやコツをいくつかご紹介しました。
何か特別な秘訣、秘密でもあるのかと読んでみて、「なんだ、そんな当たり前のことか」と思う人もいるかもしれません。実際のところ、整理術に関する説明に対しては、「しっている」「わかっている」といった反応は起こりがちです。
しかし、ただ「しっている」だけでは、身の周りの環境は何も変わりません。つまり実践する人のみが、快適な職場環境を手に入れることができるのです。
知識だけ「しっている人」と、実際に「している人」との間には、大きな差があります。「時間がとれない」とあきらめず、「これも大切な仕事のひとつ」と捉えて取り組んでみましょう。
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業務の“見える化”、オフィス環境の改善、情報セキュリティ対策や内部統制対策の一環としての取り組みなど、業務効率向上に役立つファイリングシステム構築を支援するコンサルティングを行なっている。導入実績は、自治体、製造業、金融機関、通信事業など多岐にわたる。
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(キングジム ファイリング研究室 写真=iStock.com)
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