眞子さまの結婚問題に誰もが口を挟むワケ
プレジデントオンライン / 2019年2月22日 9時15分
※本稿は、矢部万紀子『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■皇室ウォッチャーが勝手な妄想を話す背景
ユヅと佳子さまが、結婚するしかないと思う。
そう言ったのは、私の信頼する皇室ウォッチャーだ。豊富な皇室報道の経験を踏まえ、独自の視点で皇室をとらえる。だから彼女の指摘は、いつも示唆に富んでいる。
言うまでもなく、ユヅとは羽生結弦さんだ。ソチ、平昌と冬季オリンピック二大会連続で金メダルを獲得したフィギュアスケート選手。
そして。
佳子さまがフィギュアスケーターなことは、つとに有名だ。
水色のコスチュームで可愛らしく滑る幼い佳子さまをご記憶の方も多いと思うが、実は佳子さまは、学習院初等科2年生のときに自らの意思で始められて以来、長くフィギュアをお続けになっていた。数々の大会でも大変な成績を残している。20歳を迎えるにあたって臨まれた記者会見で、「高校の終わりまでフィギュアスケートを続けておりました」と明かされている。
だから、結婚するしかない。そう、彼女は力説する。
■佳子さまのことなら明るく楽しく考えられる
ユヅ、1994年12月7日生まれ。佳子さま、同じ年の12月29日生まれ。こんなにお誕生日が近いのも、きっと何かの運命だ、と。しかもユヅは国民栄誉賞を史上最年少で受賞したとき、記念品を辞退したのを知っているか、と。
2018年7月の表彰式では「みなさまとともに取れた賞という気持ちがあり、僕個人の気持ちを出したくないなと。そういった意味で記念品は辞退させていただいた」と説明した。仙台藩ゆかりの「仙台平」の羽織はかま姿で表彰式に臨み、受賞の挨拶では東日本大震災に触れ「被災地の方々の力になれば」と語っている。
あの日のユヅを見ていれば、「皇室」とどんなに相性のよい人かは火を見るよりも明らか。だから二人はうまくいく。そう語る彼女の気持ちは、よくわかった。ユヅと佳子さまがうまくいくかどうかより、そういう話をしていたい気持ちがよくわかった。
皇室のことを考えていると、どうも重たい気持ちになってくる。その点、佳子さまのことは明るく楽しく考えられる。だからつい、「ユヅと」などと勝手な妄想までしたくなってくる……。
■「眞子さまのご結婚延期で悩むのに疲れた」
こういう気持ち、彼女と私だけが感じているのではない。コラムニストの辛酸なめ子さんのある発言を目にし、そう確信した。
辛酸さんは1974年生まれ。自他ともに認める皇室ファンで、毎年必ず新年の一般参賀に行っている。2018年5月、「平成最後のゴールデンウィーク」ということで開かれた「私家版平成皇室10大ニュース座談会」(「文春オンライン」)に参加し、眞子さまの結婚延期についてこう語った。
〈(眞子さまが出ていくのではなく)私自身が「眞子さまのご結婚延期」や「皇室の将来」で思い悩むことに疲れてしまったので……。どこか遠い所に行きたくなっています。〉
■週刊誌報道に釘を刺した佳子さまの言葉
だが佳子さまを語るとき、辛酸さんは一転、とても明るい。
(「別冊宝島」2017年2月発行「麗しの佳子さま」)
美貌とファッションセンスを取り上げられることが多いが、佳子さまはきちんと自分の意見を口にされる方だ。成人にあたっての会見では、家族についての質問に、次のようにお答えになった。
ネガティブな方向で紀子さまを取り上げる記事が増える中、当たり障りのない回答だってできたのに、佳子さまはそのことを取り上げた。母のよさを語り、週刊誌報道に釘を刺した。紀子さまはさぞうれしかったことだろう。
学習院の中で自分がちょっと違う立場にいると自覚されたのはいつか、という質問に対しては、「小学校の低学年だと思います」とお答えになった。
幼少の頃から、立場に自覚的な佳子さま。アスリートとして競技に邁進しながら、「みなさま」を常に意識する羽生選手。こんな完璧なアイドル同士が結婚し、もしパレードをしたら、一体どれほどの人々が集まるだろうか……。
■「すばらしさ」を求める時代の終わり
自己実現とは何か。心の病とどう向き合うか。悩む我が子をどうするか。皇室の抱えている悩みは、いつ誰が抱えてもおかしくない悩みばかりだ。
皇室なのだ、特別な存在なのだ、美しくあれ。そういう論理はもう通用しないことを、目の当たりにしてきたのが平成だった。あとは理解し、さらには納得する。それが国民にできるかどうか。
これについての解は、平成を生きる人々からある程度出てきているように思う。
たとえば脳科学者の茂木健一郎さんは、「婦人公論」の「プリンセスたちに、なぜ注目が集まっているのか」(2015年11月10日号)に登場、「皇室の存続」について語っていた。
だから、美智子さまはすばらしいが、雅子さまが同じようである必要はない。眞子さまも佳子さまも愛子さまも、「自分らしく」あればそれでいい。そう結論していた。
■「合わせ鏡」としての皇室
同じような意見は、もっと若い憲法学者・木村草太さんも語っていた。
木村さんは、同世代の人々の天皇への関心が高くない中、それでも天皇が国民から敬意を得られていることに、「陛下のたゆまぬ努力」を感じているという(「文藝春秋」2017年1月号「生前退位考――昭和を知らない世代の天皇観」)。
そこで木村さんが示したのは、「すばらしい天皇像を国民は求め続けるべきではない」という認識だ。その理由は、新しい天皇が即位したときには新しい天皇のあり方を尊重すべきだから、と木村さんは言う。
茂木さんと木村さんに共通するのは、「らしさ」を認めようという思いではないだろうか。皇室はこうあるべきという「らしさ」ではなく、その人らしさを認める。そこから新しい皇室像が生まれ、存続へとつながる。そんなシンプルな道筋が見えてくる。
平成は多分、「普通に」生きようとする皇室の構成員たちが、もがき苦しむ姿を見せた時代だった。
人のありようは、時代と無関係ではない。皇室の構成員は、時代のありようを見せてくれる。見えていない後ろ姿を見せてくれる、「合わせ鏡」としての皇室。それは、時代への「問題提起」と言い換えてもいいだろう。
そういう意味で、皇室は「特別な存在」だ。
それを引き受ける。その覚悟をする。そういう時代だと思う。
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コラムニスト
1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社し、記者に。宇都宮支局、学芸部を経て、「アエラ」、経済部、「週刊朝日」に所属。「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理を経て、書籍編集部で部長を務め、2011年、朝日新聞社を退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長となる。17年に株式会社ハルメクを退社し、フリーランスで各種メディアに寄稿している。
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(コラムニスト 矢部 万紀子 写真=時事通信フォト)
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