“正しい事”を語る女性が愛されない理由
プレジデントオンライン / 2019年2月18日 11時15分
はっきり意見したら、煙たがられてしまいました
私は性格的に裏表のあることが嫌いで、何かおかしい、不公平だと思うと上司であってもはっきり指摘せずにはいられないタイプなのですが、直属の男性上司にとても煙たがられているようです。
もともと男性が多い部署だったのですが、上司は私が異動してきたときに「気づいたことがあれば何でも話してくれ」と言ってくれました。しかし、その通りに職場の問題点と思われる部分を指摘したところ、ものすごく嫌な顔をされました。
実際、職場には不公平がはびこっており、上司は私より仕事ができないのに自分を立ててくれる男性部下の味方をしています。
異動して1年、上司が主催する飲み会に呼んでもらえなくなり、社内の情報も最低限しか入ってこなくなりました。ストレスで眠れなくなり、転職も考えています。こういった上司がいる会社は退職すべきでしょうか。(40代・メーカー総合職)
■「何でも話してくれ」は社交辞令のひっかけ問題かも
異動になり、あらためて不平等な現実に直面されたのだろうと思います。でも、そもそも世の中は不平等なもの。私は男女雇用機会均等法以前に就職したので、同じ成果を出す男性と女性がいたら会社は当然男性を選ぶだろう、いいか悪いかはともかくそれが現実だと思っていました。当時ほどではありませんが、今でも不平等は残っています。「世界は不平等である」ということを前提にしたうえで、相談者さんはどうすればよかったのか、これからどうすればいいのかを考えていきましょう。
まず、上司の「何でも話してくれ」は社交辞令だったかもしれません。相談者さんはそれを言葉通りに受け取って問題点を指摘したわけですが、もし自分が指摘された側だったら? と想像してみてください。自分の部署に新しい人が異動してきたので「何でも言ってね」と声をかけたら、いきなり悪い部分を指摘された──。
ちょっとカチンとくるのではないでしょうか。部署に長くいる人ほど、新しく入ってきた人からは問題点より先にほめ言葉を聞きたいはず。「活気がありますね」でも、「和やかな雰囲気ですね」でもいいんです。「何でも言ってね」の「何でも」には、問題点だけでなくいい点の指摘も含まれているのだと知っておくことが大事ですね。
■上司も同じ人間なのだと心得て
信頼関係を築いた後なら、裏表なく本音を言ってもいいかもしれません。でも、お互いをよく知らない段階で悪い点を指摘するのは、キャッチボールで言えばいきなり剛速球を投げるようなものです。最初は、相手が簡単に受け取れるボールを投げること。先にいい点を言っておいて、その後に「あえて言えば、こういうところは少しもったいない気がしました」と柔らかく伝えれば、上司もそれほど気を悪くしなかったのではと思います。
上司も人間ですから、結局は人と人とのコミュニケーションの問題。相手の人柄や気持ちを考え、それに合った伝え方をするのもマナーの一つです。そもそも、何を言っても受け止めてくれるような素敵な上司なら、職場に不公平ははびこっていないはず。結果として相談者さんは煙たがられてしまいましたが、その失敗の原因はコミュニケーションのスタイルにあるかもしれません。例えば、言いにくいことを指摘するにしても、上司が“何でも言って大丈夫な人なのか”を周囲に確認してからにするでしょうし、その後のフォローもぬかりなくするというスタイルが良かったかもしれません。上司の「何でも話してくれ」への対応は、その人のコミュニケーション力を計るバロメーターと言えるかもしれません。ある意味、ひっかけ問題ですね。
私は、自分のメンバーには「苦手な上司と話すときは相手をお客様だと思うといいよ」と言っています。皆、お客様になら相手のことを考えた対応ができるのに、上司に対しては配慮を忘れがち。身内だからという甘えもあるのかもしれません。そこに気づけば、職場での人間関係がぐっとスムーズになって、結局は自分も働きやすくなるはずです。
■転職しても、同じ状況に陥る可能性大
では今後、相談者さんはどうしたらよいのでしょうか。まず心配なのは、眠れなくなっているという点。早めに産業医に相談して、適切なメンタルケアを受けてください。同時に、人事部にも相談してみることをおすすめします。企業にもよりますが、産業医の紹介や上司との仲裁、他部署への異動など、何らかのサポートを受けられる場合があります。
次に、転職は慎重に検討してください。私からのアドバイスは「転職するなら、二度と同じ結果を招かないよう自分を振り返ってから」です。どこへ行ってもこういう人はいるもの。彼らへの対応を身につけないまま転職しても、あるいは異動しても、また同じ状況に陥る可能性があります。当社が運営する「ミドルの転職」のサイト上で実施したアンケートでも、「上司と合わない」「職場の人間関係が合わない」という理由で転職すると、転職後の満足度が低くなるという結果が出ています。
加えて、40代の転職者には、採用側も「人間関係を築く力」を求めます。厳しいようですが、もし今回の転職理由を裏表なく伝えるなら、再就職のハードルはかなり高いでしょう。
私は、転職を希望する方には「新たな職場に行ったら、いきなり腕前を見せようとせず『How to live(職場に適応する)』を最優先に」と伝えています。このケースのように異動の場合も同じです。転職・異動したばかりの人は、意欲が高いこともあって「How to work(仕事で成果を出す)」や「How to influence(組織や他者に影響を与える)」を優先しがち。でも、こうした行動は煙たがられる結果になりかねません。
■自分を振り返り、この失敗を成長につなげて
相談者さんもこの点を心に留めて、二度と同じ体験をせずに済むよう、適応力やコミュニケーション力を磨いてみてはどうでしょうか。自分の何が今の状況を招いたのか、しっかり内省して改善していけば、この先上司との関係を修復できる可能性もあります。
そういう私も、コミュニケーションが苦手。今、知らない人ともそれなりに話せるのは「仕事」だからで、裏ではかなり頑張ってきました。以前は、コミュニケーションが上手だなと思う人を観察して、真似できそうなところから取り入れていました。事務職から営業に転職したときも、お客様に何をどう話したらいいのかさっぱりわからなくて、カーネギーの著作『人を動かす』を読んで研究してみたりしました。
失敗も経験のうち。この経験を活かせるかどうかは相談者さん次第ですが「機会」と捉えて、自分を変えるきっかけにできれば、視野も広がり、きっと仕事上の成長にもつながっていくと思います。がんばってくださいね!
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エン・ジャパン取締役 ブランド企画室室長
1963年、愛知県出身。84年に短大を卒業後、教育業界に就職。90年日本ブレーンセンターへ転職。人材派遣事業を立ち上げ、2000年にエン・ジャパンに移籍。05年より取締役。
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(エン・ジャパン取締役 ブランド企画室室長 河合 恩 構成=辻村洋子 写真=iStock.com 撮影=貝塚純一)
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