勝率9割のコンサルは「1人発表会」をする
プレジデントオンライン / 2019年3月4日 9時15分
■役員といえども、走り回る!
建設に関わるプロジェクトの提案から工事施工、運営管理まで、トータルで関与するのが我々コンストラクションマネジメント会社です。受注につなげるためのプレゼンはおよそ1時間。そのなかで私が常に意識しているのは、「クライアントにとって一番大切なことは何かを間違えないようにする」ということです。
プレゼン側の私たちはついスペックや技術論から入ってしまいがちですが、クライアントの関心はあくまでも「その建物を使って何ができるのか」ということです。そこで私は「我々はあなた方にとって大切なことが何かを理解しています」というアピールから入ります。そして「この建物でクライアントのニーズをどう実現するか」のストーリーを語り、それによって「この人に頼みたいな」と思ってもらうのです。これが勝利の方程式です。
もっとも、多岐にわたる私の仕事のなかで、プレゼン役はその一部。このところますます忙しくなってきているなかで、仕事の質も変わり、事務作業より人と会うことが増えました。半分は今やっている仕事の打ち合わせ、ほかは潜在ニーズを捉えるための営業活動です。当社は大きな会社ではないので、役員といえども走り回らなければいけません。
多忙を乗り越え、期限内に結果を出すためには「準備」と「実践」の両面で自分を鍛える必要があります。
準備とは経験値を高めることです。ある仕事に必要な準備が的確にできるのも、過去の仕事からくる経験値があってこそ。
経験と経験値は違います。経験を経験値に変えるには「過去の振り返り」が欠かせません。辛くても失敗の原因を確かめておくことがとりわけ重要です。
また人が自分で経験できることには限りがありますから、1つの経験からより多くの経験値を得るために、頭のなかで自分とは異なる立場から経験を振り返るとか、未来に起きそうな出来事についてロールプレイングしてみることも有効です。
一方、実践には「最適な道を行く」と「歩くスピードを上げる」という2つのアプローチがあり、重要なのは前者のほうです。最適の道筋が見えていなければ、いくら速く歩いても無駄になりますから。
では、どうやって最適な道を見つけるのか。
私のとっておきの鍛錬法は「1人プレス発表」です。「多くのメディアが注視しているなかで自分が新プロジェクトの発表役を務める」ことを想定し、発表の内容を文章化していくのです。建築プロジェクトであればその概要、それがクライアントや周辺地域にどのような価値をもたらすかをイメージし、「どこが記事として取り上げられるか」を考えながら書いていきます。
コツはそのプロジェクトが成功した場合を想定して、そこから逆算していくこと。建設業界以外の人にも伝わるように、余計な説明を削り、わかりやすく短い言葉で表現するよう心がけます。ひと通り文章化できたら、空いている会議室を押さえるなどして、時間を計り実際に声に出してしゃべってみます。
プロジェクトの本質的な価値を見出し、印象的な言葉が生まれてくると、文章を声にしたときに「エッジが立った」感じが出てくるものです。そう感じられるようになるまで言葉と内容に工夫を重ねます。これを繰り返すことで、確実にプレゼンの力が高まっていきます。
■TO DOリストと手帳はこう使う
歩くスピードを上げる――すなわち仕事の効率化のための方法の1つがTO DOリストをつくること。これは仕事を「見える化」するうえで効果的なメソッドですが、単に箇条書きするだけでは優先度や必要時間が不明なため、私は工夫を加えて使っています。
まず「すべき仕事」の左側に優先順位を数字で書き込み、右側にはその仕事をする時間帯も書き込むのです。こうしておくと予期しない緊急の仕事が入ってきた場合も、リストのうちどれを削り、緊急案件をどの時間帯にはめ込めばいいかが一目でわかります。
しかし、実務上の問題点は「自分1人では仕事は完結しない」ということです。コンサルタントはクライアントから依頼を受けて設計者や施工者、官庁などとの間に立ち、提案や調整を繰り返す立場ですから、個人の努力だけではどうにもならない問題が過半を占めます。そのため私は、部下など関係者に出す依頼のタイミングまで決めておき、TO DOリストのなかに取り込んでいます。
たとえば「誰からいつ資料を受け取り検討するか」「誰にいつ作業を頼むか」という時間を決め、付箋に書いて見えるところに貼っておく。それにより自分だけでなく仕事相手のスケジュールも「見える化」され、仕事の流れが格段によくなります。これを私は「段取りTO DOリスト」と呼んでいます。
スケジュール管理とメモのために愛用しているのがA6判の手帳です。紙の手帳ならPCと違って電池切れを気にしなくていいし、打ち合わせ中にメモするときもさっと取り出せて便利です。最終的には社内システムのカレンダーに予定を入力するのですが、その際は手帳に消せるボールペンで殴り書きした日程をスマートフォンで撮影して秘書に送り、入力してもらっています。
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山下PMC取締役専務執行役員
1968年、水戸市生まれ。神戸大学大学院工学研究科建築学専攻修了。山下設計、大手生保を経て、2010年、山下PMC入社。18年から現職。著書に『ムダな努力ゼロで大成長 賢い仕事術』がある。
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(山下PMC取締役専務執行役員 木下 雅幸 構成=久保田正志 撮影=遠藤素子)
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