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日本で一番孤独なのは"26歳女性"だった

プレジデントオンライン / 2019年2月28日 9時15分

人は一人では生きていけない動物だけに、仲間と一緒にいるときこそ孤独を感じる(※写真はイメージです 写真=iStock.com/spfoto)。

日本でいちばん孤独を感じているのは、どの世代だろうか。三菱総合研究所の実施したアンケートによると、それはシニア世代ではなく、「26歳女性」だった。なぜ若い女性が孤独を感じるのか。そこには4つの理由があった――。

■若い女性が孤独を感じる4つの理由

三菱総合研究所では生活者情報データベース「生活者市場予測システム(mif)」(※1)を活用し、2018年に「あなたは、孤独を感じますか」というアンケート調査を行った(サンプル数は女1万5511人、男1万8062人、年齢層は20代~80代)。

その結果、日本では、若い女性が最も孤独を感じているという結果になった(図表1)。三菱総合研究所のmifのアンケートパネル、そしてMROC(※2)パネルのデータを用いて、若い女性が孤独を感じる理由を分析してみよう。

図1のデータが示している通り、若ければ若いほど、孤独を感じている。さらに、性別・年齢で細かく見ると、26歳の女性が日本で一番孤独を感じているという結果になった。その理由として、大きく4つが考えられる。

(その1)周囲の結婚

日本人女性の平均初婚年齢は約29歳なので、30代前後が結婚に焦り、孤独を感じるという仮説が成り立ちそうだ。だが、一番多く結婚する年齢(最頻初婚年齢)は26~27歳である。したがって、その時独身の女性は、周りに取り残された気分になり、孤独を感じやすくなる。

アンケートでは孤独を感じる理由として、「(孤独を感じるのは)同期や友達が、次々に結婚していたり、配偶者について話題が出たりするときです。私にはまだ決まった人どころか、付き合っている人もいないので、『いいなぁ』と思うのと同時に寂しさを感じます」(26歳女性)という答えがあった。

(その2)夫の無理解

一方、既婚者であっても、とくに出産経験のある若い女性で孤独を感じているケースが目立つ。その原因には、夫が深くかかわっていると考えられる。初婚、初産が多い年齢なので、夫婦関係・子育ても未熟である。例えば、ある20代後半の女性は、夫が単身赴任したため、一人で家に帰った瞬間、孤独に襲われたという。出産後の子育てについても、不安と不慣れなことが多いため、夫や周りの人に助けてほしいと思っている。

にもかかわらず、身内はみそ汁の冷めない距離どころか新幹線の距離にしかおらず、助けは期待できない。そのとき非常に孤独を感じるという。「夜中に泣きやまない赤ちゃんと二人だけの時に、赤ちゃんが泣く理由もわからないので対処に困った。赤ちゃんが新生児の頃は毎日がつらかった」(29歳女性)という。

自分の親からも遠く離れ、育児について気軽に相談できる人はおらず、夫の協力も得にくいとすれば、不安と孤独を感じる、という気持ちも当然と言えるだろう。

(その3)職場での居場所喪失感

家庭だけではない。若い女性が孤独を感じる理由は職場にもある。高校、短大あるいは大学を卒業して入社し、数年勤務したため、もう「新人」ではなくなった。だが、30代以上のベテランに比べてまだまだ経験が浅く、中途半端な段階であるため悩む人がいる。

アンケートでみると、若い女性は「職場でストレスを感じている」人のほうが、より孤独を感じるようだ。つまり、26歳ぐらいになると、「後輩もできて、自分がしっかりしないといけない」というストレスを抱える。誰かに相談したくても、気楽に相談できる人はおらず、それが孤独感につながってしまう。

23歳の女性は、「将来のことを考えるとき、これから先、やりたいことができるのか、それに見合うだけの実力をつけられるのか……という不安や焦りをひしひし感じながら、孤独を感じます」と回答している。

(その4)集団のなかでの孤独感

周りには人がいるのだが、そのグループとはなじめず、余計に孤独を感じるという回答も目立った。これは若者特有の現象だろう。いつもワイワイしているから、若者が孤独感を抱くことはないだろうと思ってしまうが、周囲との関係性が非常に微妙で難しく、他人と一緒にいるからこそ余計にさびしく感じる若い女性がかなりいるのだ。

「誰かと一緒に居てもなぜか寂しさを感じるとき、会話に思うように入っていけない、自分がその場にいないような感覚という疎外感、孤独感がある」(35歳女性)

「複数人で話しているときに、私にはわからない話題で他の人が盛り上がっていると、少し孤独感を感じます」「気持ちを共有できない、置いてけぼりにされている感じ……」(25歳女性)

■孤独を感じやすい東京、実家、低収入

アンケートデータから、孤独を感じている女性たちのプロファイルをさらに掘り下げてみると、26歳女性で「とても孤独を感じる」のは「シングル」が6割、「専業主婦」が4割だった。シングルは親と同居していることが多く、交際相手がいない人が多い。学歴は専門学校・専修学校卒が多い。専業主婦の場合、夫と子供1人の場合が多く、夫の年齢(中央値)は27.5歳と1.5歳年上である。本人の学歴は大卒・短大卒が多い。

居住地をみると、シングルは首都圏か大阪府が多いが、専業主婦は全国各地に分散している。シングルの収入は100~200万円、300~400万円が多い。前者はパート・アルバイト、後者は正規社員である。専業主婦の場合、夫の収入は300~600万円が多く、なかでも300~400万円の層が最も多い。

孤独を感じる20代の女性の典型像は、「東京に住み、実家暮らしで、独身で交際相手もいない。彼女らの年収は200万未満が多く、将来に対しても不安が多い」ということになる。

■「孤独死」という言葉はシニア像をミスリード

アンケート結果によれば、孤独の代表と思われているシニアは、そこまで孤独を感じていない。それはどうしてだろうか。

まず、年齢を重ねると、悩みが少なくなる。若い世代は将来の年金や健康保険などに不安を持ちやすいが、実際にシニアとなり年金生活が始まれば、思い悩むことより、何とかすることのほうが優先になる。

また、シニアは一人で生きていく、一人で解決する、一人で楽しむ能力もある程度身につけてきたので、「残されてさびしい」「相談相手が欲しい」「夫や妻にもっといろいろしてほしい」という他人との関係で生まれる「さびしさ」が減っているようだ。実際、夫と死別した70代の女性は、アンケートに対して、「一人でも運動・サークル・旅行などで忙しく、孤独なんか考える暇もない」と語っている。

若い女性が、「相談相手の不在」で孤独を感じるのに対して、シニアは「相談相手がいなくても解決できる」と達観できている人が多いようだ。

シニアに孤独というイメージがあるのは「孤独死」という言葉も一因だろう。だが孤独死は「一人で死ぬこと」を意味しているだけにすぎない。一人で生きていても、広い交友関係があれば、孤独を感じないだろう。孤独死という死の形からだけでは、判断できない。

今回のアンケート結果は、「一人暮らしの老人は孤独」「20代の女性は人生を楽しんでいる」という見方が、一面的であることを示している。当たり前のことながら「孤独」とは、社会や他者との関係の中で生じることを示していると言えるだろう。

(※1)mifは三菱総研が所有する生活者3万人、シニア1万5000人を対象とした、2000問からなる国内最大級のアンケートパネル。2011年6月からサービス開始。
(※2)MROC(Marketing Research Online Communities)は、ネット上のリサーチ専用のコミュニティに数十名から数百名の生活者を集め、掲示板、ブログなどのソーシャルメディアを活用して議論・意見交換をしていただき、マーケティングに役立つインサイトを抽出する手法。本稿の発言は、女性200名のコミュニティで「孤独」について議論から抽出したもの。

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劉瀟瀟(りゅう・しょうしょう)
三菱総合研究所 研究員
中国・北京市生まれ。外交学院(中国外務省の大学)卒業後、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)(中国)に入行。その後、東京大学大学院修士課程に留学し、三菱総合研究所入社。専門は日中の消費市場動向。講演多数、首相官邸観光戦略実行推進会議有識者等。著書に『女性市場攻略法―生活者市場予測が示す広がる消費、縮む消費―』(日本経済新聞出版社)などがある。

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(三菱総合研究所 研究員 劉 瀟瀟 写真=iStock.com)

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