脳科学で証明"2分で男の色気を出す"方法
プレジデントオンライン / 2019年2月26日 15時15分
※本稿は、菅原道仁氏の著書『「モテ」と「非モテ」の脳科学』(ワニブックス)の内容を再編集したものです。
■中年でもカッコいい人は何がちがうか
「男の色気」という言葉があります。
「色気」とは何でしょうか。セクシー、妖艶、色っぽい……。どちらかといえば「男目線」で女性を形容するときに使うことのほうが多い言葉です。
では「男の色気」の正体とはどんなものなのでしょうか。年若い女性の知り合いに「色気のある男ってどういう人のことだと思う?」と聞いてみると次々と答えが返ってきます。
「やっぱりシブい感じの人」「雰囲気がセクシーな人」「中年になってもカッコいい人」「レディーファーストがわかってる人」「ガツガツしてない人」「オシャレな人」「加齢臭がただよってない人」「高級な店でさらっとおごってくれる人」──最後のは「単なる希望でしょ!」と思う一方で、「シブい」とか「セクシー」は「色気」のキーワードのようです。
私が色気のある男性と聞いて思い浮かべるのは、小説・映画『007』シリーズ主人公のジェームズ・ボンドです。映画では6人の俳優たちがジェームズ・ボンドを演じています。初代のショーン・コネリーから順に、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、そして現在のダニエル・クレイグです。
「どの俳優のボンドが一番好きか」は意見が分かれるでしょうが、いずれの俳優もそれぞれに魅力的で「男の色気」を感じさせてくれます。「男の色気」を魅力的と感じるのは、女性だけではなく男性も同様です。
■男の色気は自信がないと生まれない
ジェームズ・ボンドを「男の色気」のお手本、代表選手として考えてみましょう。ボンドはなぜこんなにも魅力にあふれているのでしょうか。
最初の要素としては、ボンドが常に、どんなシチュエーションにおいても「自信」にあふれているからでしょう。スパイという危険極まりない仕事を日々こなし、ありとあらゆるピンチに見舞われながらも、それを乗り越えられる実力に裏打ちされた「自信」が、見る人たちを魅了します。
1962年に公開された映画『007』シリーズ第1作の「007ドクター・ノオ」で、ボンドは米ソ冷戦下ジャマイカに飛びます。ホテルのスイートに泊まるボンドに、ルームサービスで飲み物が届けられるシーンがあります。
そこでホテルマンはこう言います。
「ウオッカマティーニです。ご注文通りステアではなくシェイクで」
イアン・フレミングの原作に書かれている通り、ボンドはドライマティーニをジンではなくウオッカで、しかも通常のステア(マドラーで混ぜて作ること)ではなく、シェイカーで振って作ってほしいとオーダーするのです。
■「マティーニをたのむ。ステアではなくシェイクで」
別のシーンでは、注文を取りに来た美しいウェイトレスに、ボンド自身がこう言います(第7作「007ゴールドフィンガー」)。
「Just drink. Martinis, shaken and not stirred」
(酒だけでいいよ。マティーニをたのむ。ステアではなくシェイクで)
これを「男の色気」といわずして何を色気といえばよいのでしょうか!
こうしたバーでの振る舞い、さらにはレディーファーストを決して忘れないエスコート、ウィットに富みユーモアのある会話、そして口説き文句のすべてが魅力的に見えるのは、それらが彼の仕事や生き方に対する「自信」に裏打ちされたものだからです。
自分の生き方に自信を持てないまま、ボンドのセリフだけをまねしてみても、そこに男の色気は醸成されてこない、ということでもあります。
■ボディランゲージと自信の相関関係
でも、ジェームズ・ボンドのような自信を持てといわれたところで、誰もが今の仕事にすぐさま自信と誇りを持てるわけではないでしょう。忙しさに追われ、惰性で過ぎていく日々、私も含めて自信に裏打ちされた男の余裕なんて持てないという人がほとんどだと思います。では「ふつーのおじさん」が「男の色気」を身にまとうことは不可能なのでしょうか。
私は決してそうは思っていません。
最新の研究によると「自信」というのは、誰でもある方法によって、即効的に身にまとうことができることがわかっています。
ボディランゲージと言動との関係について研究しているハーバード大学の社会心理学者、エイミー・カディ教授の研究(※)によると、人間は力を誇示する場面では両手を上げてガッツポーズをとったり、腰に手を当てて胸を張るポーズをとったりして、体を大きく見せようとします。けれど逆に自信が持てない場合には、体を縮ませて猫背になり、自分の体を小さく見せようとします。自分の行動を思い返してみても、また他人の様子を見ていても「確かに」と納得できるはずです。
※出典:Amy Cuddy『Presence Bringing Your Boldest Self to Your Biggest Challenges』
カディ教授によれば、これを利用すれば「自信がない場合も体を大きく見せようとするだけで、自信を持っている雰囲気を身にまとえる」といいます。
要するに「ガッツポーズ」「胸を張る」という姿勢をとっただけでも、本当に自信がわいてくるのです。
■「テストステロン」の力
その秘密は、体内にあるホルモン、テストステロンとコルチゾールの働きにあります。
テストステロンは男性ホルモンのひとつで、胎児の頃に男性内生殖器を発達させ、思春期には声変わりのほかいわゆる「第二次性徴」を発現させます。さらに、成長ホルモンとともに筋肉量の増加を促し、その強度を保ち、骨格を大きくします。
そしてもうひとつここで注目してほしいのが、テストステロンの脳や精神状態に対する作用です。大脳に働きかけ「決断力」や「怒り」、さらには「攻撃的な気持ち」つまり「やる気」にも作用するのです。ネガティブな意味では「荒っぽくて無神経」という形で表に出ることもある一方、「前向きでワイルドでセクシー」とポジティブな意味に受け取られることもあります。つまりテストストロンは人生を前向きにし、バイタリティを高めるホルモンであり、「自信のホルモン」ということです。
一方、コルチゾールはステロイドホルモンのひとつで、ストレスにさらされたときに分泌され、体を守る作用があります。しかし過度な分泌が続くと記憶の中枢である「海馬」の神経細胞がダメージを受けることでも知られています。
■心に自信と余裕を生み出す即効テクニック
カディ教授の実験によると、「体を大きく見せるポーズ」をとった人はテストステロンの分泌が増え、コルチゾールの分泌が減少したという結果が得られました。つまり、実際には自信がない状態でも「体を大きく見えるポーズ」をとっただけで、心に「自信」が生まれ、それが周囲にも伝わるということです。ここでのポイントは「形」だけ虚勢を張れば自信があるように見える、ということではなく、「形」によって心に変化が起きるということなのです。
たとえば絶対に失敗できないプレゼンのとき、ここ一番のデートの前、絶対に勝ちたい勝負の前。鏡の前で2分ほど「ガッツポーズをとる」「腰に手を当ててしっかりと胸を張る」ことが、心に自信と余裕を生み出してくれるのです。外出先のトイレでもかまいませんから、自信がない、不安がある、というときにはぜひ試してみてください。
■鏡の中の自分に話しかけ「メタ認知能力」を高める
また、不安が大きいときには「あえて自分に問いかける」方法も有効です。つまり「今、僕はけっこう緊張しているよな」「でも頑張れば必ずうまくいくはずだよ」「まだちょっと不安はあるけれど、すごく頑張ろうとしてるよな、俺」と、「もうひとりの自分」が「現実の不安な自分」を見るようにするのです。これは「メタ認知」と言われるもので、要は自分を客観視することです。それによって不安が抑えられ、自信が少しずつわいてきます。
前述したように鏡の前で、体を大きく見せるポーズをとりながら、自分に話しかけてみてください。「きっとだいじょうぶだと思うよ!」「もっと自信を持てよ、この前もできたじゃないか」「まだ不安そうな顔をしてるぞ?」「だいじょうぶだよ!」と問いかければ、効果は必ず出るはずです。
■一流アスリートも行う「ルーティン」を取り入れる
さらに「自信を持つためのルーティン」を自分で作るのもいいと思います。テニスのサービスの前、ラグビーのフリーキックの前、ボクシングの試合直前、フィギュアスケーターがリンクに降りる前など、一流のアスリートほど自分なりのルーティンを持っているのはご存じでしょう。
一般の人であっても、これを応用することをおすすめします。「朝は必ずスマホの待受画面(お子さんでも恋人でも)を見てからドアを出る」とか「鏡の前で必ず笑ってから外に出る」など、どんなことでもいいのです。「それをすれば必ずすべてうまく行く」という自己暗示をかけることが、実際、日常的な自信につながるのです。
自分の仕事や生き方に自信を持ち、余裕が生まれたときから、あなたは「男の色気」をその身にまとうことができるのです。
明日からジェームズ・ボンドになるのはちょっと無理かもしれませんが、小さな効果はすぐに現れます。小さな効果が出たらそれをうんと喜び、「成功体験」として積み上げていくことが、「男の色気」作戦の第一歩ということです。
(脳神経外科医 菅原 道仁 写真=dpa/時事通信フォト)
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