橋下徹「沖縄県知事次の一手はこれだ」
プレジデントオンライン / 2019年2月27日 11時15分
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■相手を動かすための武器としての「論理」
2月24日、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐって、同県名護市辺野古沿岸部の埋め立ての是非を問う県民投票が行われた。
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辺野古移設については色々な意見がある。僕は賛成の立場だけど、今回はその賛否について論じない。自分の結論を導くための論理(ロジック)について、論じたい。
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この相手を動かすための「論理」で一番やってはいけないことは、先ほども言った「ご都合主義の」論理。すなわち、「あんた今はそう言っているけど、あのときはこう言っていたじゃないか!」と簡単に突っ込まれてしまう論理だ。
相手を批判するときには、○○という論理を使っていたのに、自分を正当化するときには○○とは真逆の論理を使う。また自分の利益を導くために○○という論理を使っていたのに、相手に利益が出そうになると○○という論理を使わない。こんなことじゃ、相手は動いてくれない。
まず一本筋の通った論理を構築する。そして「この論理に当てはめると、たとえ自分が不利な結果になってもそれは当然受け止める。だからこの論理に当てはめて、あなたが不利になる結果になったとしてもそれを受け止めてもらいたい」。
このように、この論理を使えば「自分が不利な結果になっても受け止める」という覚悟が相手に伝わって、はじめて相手はその論理を受け容れてくれる。「自分の利益になろうと不利益になろうと、この論理を使うんだ」という「フェア」の態度こそが、相手を動かすために必要不可欠かつ重要なポイントとなる。
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では、今回の沖縄県民投票について、特に朝日新聞、毎日新聞の「民意を振りかざす論理・ロジック」はフェアで、世の中を動かし、事態を動かすものか?
特に、朝日新聞、毎日新聞は自分たちの持論を正当化するときに民意を振りかざし、自分たちの持論とは反対の結論には「民意が全てではない!」と言ってその結論を否定する傾向が強い。ゆえに、彼ら彼女らのこの民意を振りかざす論理はまさにご都合主義の論理そのもので、今や朝日新聞、毎日新聞が民意を持ち出しても、世の中が動かなくなった。
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また僕が大阪市長時代に、大阪都構想をめぐって議会と対立し、2014年3月に出直し市長選挙をしかけたときは、対立する自民党・公明党・民主党・共産党などは候補者を立てなかった。彼らは選挙を無視し、投票率が上がらないように画策し、僕が再選されても「それは民意に支えられていない」と主張する作戦に出た。
その結果、211万4978人の有権者のうち23.59%が投票。投票数のうち87.51%の37万7472票を獲得して僕は大阪市長に再選された。
翌日の朝刊一面は、朝日や毎日に限らず、全紙、「過去最低の投票率!」を大見出しで打ち、橋下は市民から信任を得ていないと言わんばかりの報道だった。
確かに僕の出直し市長選挙の投票率は過去最低だった。しかし、そこを批判するなら、今回の沖縄県民投票の投票率も52%ほどで約半数の県民が投票していない。そうなると僕の出直し市長選挙の投票率も、今回の沖縄県民投票の投票率も目くそ鼻くそレベルで、僕の出直し市長選挙は棄権した人が多いので民意が反映されていないというのであれば、沖縄県民投票でも同じように民意が反映されていないと批判しなければならないはずだ。
それに僕も、出直し市長選挙で37万7472票の票を得た。歴代大阪市長が獲得した票に遜色のない票数だ。他方、今回の沖縄県民投票での反対票は43万4273票だ。なぜ大阪市民の37万7472票は軽視され、沖縄県民の43万4273票はそれだけ尊重されるのか。僕の出直し市長選挙での再選は市民に支持されていないというなら、沖縄県民投票でも同じように言わなければならないし、県民投票の民意を重視するなら、出直し市長選挙で僕が再選された民意も重視すべきだ。
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さらに、この沖縄県民投票の民意を聞け! と強く主張する者に限って、憲法改正の国民投票においては、直接国民が投票して決定する直接民主制の危険性をことさら指摘する。「国民は、そのときどきの風に流されやすい。だから国民投票で決めるのは危険だ」と。特に憲法改正に反対の朝日新聞的、毎日新聞的インテリたちはそのように言っている。
その論理でいくなら沖縄県民投票も危険になるはずだ。しかし、朝日新聞的、毎日新聞的インテリたちは沖縄県民投票の危険性は指摘しない。
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■これで安保問題を決めていい? 沖縄で見聞きした「直接民主制」
この県民投票期間中、僕は沖縄に行ってきた。
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たった1時間かそこらの取材で全てが分かったなんて、そんな大手メディアの記者のように偉そうなことを言うつもりはない。それくらいの取材では、全体のうちのほんのほんの少ししか理解できていないことは重々承知している。
それでも僕は、あの辺野古の現場で行われている民主主義によって、日本の安全保障の行く末が決まるということには違和感を通り越して、危険性すら感じた。
僕が行ったときには、辺野古移設反対の大手メディアがいつも映し出す騒然とした様子とは異なり、閑散とした雰囲気だった。もちろんこの現場に多くの人が溢れかえることもあるのだろう。僕もそういう場面を、大手メディアの映像を通じて見ることはよくあった。
しかし、閑散としているときもあるというのも事実だ。つまり、いつもいつも人で溢れかえっているわけではない、ということだ。
そして僕が目にした現場では、「熟議」が行われているという雰囲気ではなかった。何人かの人が「辺野古移設だけは絶対に認められない」ということをマイクを持って数人の仲間に向けてスピーチしていた。あと歌を歌う人もいた。
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このような住民の活動自体は、政治活動の自由として尊重されなければならない。またこのような住民の意思というものも汲んで政治をやるべきことは民主国家の政治として当然である。しかし、じゃあこの住民たちの活動によって、日本の安全保障が決定されていってもいいのか。
このようなことの危険性をいつも指摘しているのが、まさに朝日新聞的、毎日新聞的インテリたちではないか。
「熟議が必要だ」「感情による言動は控えるべきだ」「住民による直接投票(直接民主制)ではなく、見識のある者による熟議(間接民主制・代表民主制)で決めていくべきだ」とね。その論理でいくなら、この辺野古の現場での住民の活動こそ、真っ先に批判されなければならない。
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(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約1万1700字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.141(2月26日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【メディアが報じない沖縄県民投票(1)】現地報告! なぜ今回の投票結果だけでは普天間移設問題は解決しないか》特集です。
(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)
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