ハーバード流「あれ?」がなくなる暗記術
プレジデントオンライン / 2019年3月7日 9時15分
※本稿は、廣津留すみれ『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超・独学術」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■日本人が必ず苦戦する「英単語の壁」
日本人がハーバード大学に合格しようとすると、最初に突き当たるのが「英単語の壁」です。
私自身も高校時代、ハーバード用の受験勉強の4分の3は英単語暗記に費やしたといっても過言ではないほど、複雑で理解の難しい単語を1万5000語も覚えるのにはかなり時間を使いました。
そもそも英語が母国語の人でも真剣に覚え直さないといけないような単語がでてくる「SAT」が、かなり高いハードルです。
このSATとは、アメリカ版の全国共通テスト、現在の日本でいうところの「センター試験」です。SATには「数学」「国語」「化学」「世界史」など多数の試験科目があり、当たり前のことですが「国語」の試験は英語で行われます。これをわかりやすいように置き換えてみると、アメリカ人が日本のセンター試験を日本語で受けるのと一緒です。
センター試験レベルの国語のテストを単語帳1~2冊暗記したぐらいの語彙力で対応することは不可能です。そして、ハーバードに合格するには、このSATで高い正解率が求められます。
SATに出てくるのは、ラテン語由来の単語、法律用語、化学元素の英語名、世界史にでてくる中国人の英語名、数学の専門用語などなど、ジャンルも幅広く覚えるのが困難なものが多いのです。
■五感を遊ばせないで最大限活用する
ハーバード受験を決めた高校2年生の終わり、当時英検1級を取得していた私でも、全く聞いたことのない単語を目の前にして気が遠くなることもありました。
そんな中、私が貫き通した単語記憶メソッドは、「五感暗記」。言葉の通り、「五感」の中でできる限り使えるものを同時に使って、効率的に覚えるという方法です。
例えば私の場合は幼い頃からバイオリンを弾いていることもあり、聴覚が発達していました。
ですので、情報は何でもまず耳から入ってきます。かつて固定電話を使っていたころには、受話器に耳を当ててプッシュホンを押すと番号によって違う音が鳴っていましたが、10桁程の電話番号ならば短いメロディになります。
それが自然に頭に入ってきて、「これはおばあちゃん家のメロディ」「これは友達の○○ちゃん家のメロディ」という風に、番号ではなく「音」で電話番号を記憶していました。
ほかの感覚よりも優れていた「聴覚」を何かに役立てられないかと考え、暗記をするときに活用しようと思ったのです。
■暗記地獄を乗り越えた「感覚記憶」
同じく英単語を覚える際にも、視覚+聴覚のコンビネーションで覚える方法をとっていました。
まず単語帳の上で「Apple リンゴ」と視覚的に認識→口で「Apple リンゴ」と唱えます。すると、視覚情報と、自分の声という聴覚情報が一致して、確実な記憶を作ります。それが完成されると、「Apple」という字面をみた瞬間に、頭の中で「リンゴ」という自分の声が再生される、というシステムが構成されます。
単語帳の場合は見開きをすべて唱え終わったら、ちゃんと記憶が身についているか英語の部分を隠してチェック、日本語を隠してチェック、そして次にいきます。見開きだけでは物足りない、という場合には単語のレベルによって50語、100語を1ラウンドとして、反復していきます。
■ルーティン化して時間を徹底的に節約
これをルーティン化してしまうことによって、毎日「さて今日はどうやって暗記しようかな」と悩む時間も必要なくなり、徹底的な時間の節約と暗記の習慣化が身に着きます。
これは私が一番おすすめする「視覚+聴覚」コンビですが、ほかにも有効な組み合わせを試している人もいます。
例えば朝のランニングの時間。足を動かすと同時に英語ポッドキャストを聴くと、走るという触覚的経験と英語音声の聴覚情報がセットになって記憶が形成されます。
「あの朝に、皇居周りを走っているときにポッドキャストで覚えた単語だ!」と記憶を引っ張り出すための引き出しになるのです。
■「書き取り暗記」はおすすめできない
さて、できるだけ五感を使えばいいと述べましたが、個人的におすすめできない組み合わせもあります。それは、「手を動かす」暗記法です。
もちろん人によって向き不向きはありますし、「この方法が私には一番効果的なんだ!」という方を止めるつもりはありませんが、どうしても無駄な時間と労力を使ってしまうんじゃないか、と毎回思ってしまうのが「書き取り」です。単語帳をノートにひたすら書経のように写しまくっている人をみると、いろいろと突っ込みたくなってしまいます。
まず、書き写すのには口で唱えるよりも時間がかかります。そして、綺麗にノートに書かなければいけない、という余計な考えが邪魔をして、本来の「暗記」という目的がずれがちになります。
さらに、「ノートに書いて、後から自分で振り返るんだ!」という人がいますが、手書きよりも活字のほうが読みやすく頭の中が整理されやすいのは当然です。全く同じ情報が載っている媒体であれば、単語帳本体を読み返したほうが効率的でしょう。書き込みがしたかったら、単語帳に直接してしまうのが手っ取り早いです。
■小さな意識改革の積み重ねが重要
私が手書きでメモを取るのは、どうしても覚えられないものだけ。1日のノルマ、例えば100単語の反復練習を終わらせたら、何度反復しても引っかかってしまった単語をメモ的に小さな紙にまとめて、いつでも見直せるようにしておきます。
夕飯前に一度、通勤中に一度、昼休憩に一度、その紙を唱えていれば、翌日の終わりにはもう定着していることでしょう。そうすればその紙の役目は終わり、ゴミ箱行きです。
この「唱える暗記法」は英単語を例に挙げて紹介しましたが、英検の読解文、TOEFLの会話文、古文漢文、数学の公式など、どこにでも応用がききます。
何を記憶するにも、キーワードは「五感」と「時間効率」。
五感は前述の通りですが、ノートに単語を写す時間ですらもったいないという感覚や、昼休憩の時間のうち5分だけ利用しようという感覚、時間効率を上げるほんの小さな意識改革の積み重ねが、着実に自分をステップアップさせてくれるのだと私は信じています。
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バイオリニスト、Smilee Entertainment社 CEO
1993年、大分市生まれ。小中高まで地元の公立に通い、2012年ハーバード大学に現役合格、2016年に首席で卒業。ジュリアード音楽院の修士課程に進学。2018年に首席(William Schuman Prize)で卒業後、ニューヨークで起業し、多方面に事業を展開中。ニューヨーク在住。
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(バイオリニスト、Smilee Entertainment社 CEO 廣津留 すみれ 写真=iStock.com)
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