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元劇団四季俳優"面接は面接官との共演だ"

プレジデントオンライン / 2019年3月12日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/goodynewshoes)

面接で好印象を残すにはどうすればいいのか。人事コンサルタントと俳優という2つのキャリアを持ち、これまで5000人の採用面接をしてきた岩下宏一氏は「面接は面接官との"共演の場"だ。面接官の気持ちを知ることが不安や緊張を減らす方法になる」という――。

■採用面接をした人数は5000人

私は人事コンサルタントと俳優という2つのキャリアを歩んできました。人材採用で支援したのは大小50社、採用面接をした方の数はざっと5000人。俳優としては劇団四季のライオンキングをはじめとして500ステージほど経験しています。そうした経験から、この記事では「面接官の立場から教える面接のポイント3つ」をご紹介したいと思います。

■応募者から「アイスブレイク」を仕掛ける

(1)面接官も緊張している

面接官も人の子です。「今日はどんな人が来るのだろう」「この間はうまくアイスブレイクできなかったが今日は大丈夫だろうか」「的確に話を引き出すことができるだろうか」面接官が無表情なのは、緊張しているからということもあるのです。私も、相手のキャリアがすごいとか、その前の面接がうまくいかなかったという自覚がある時は、内心ドキドキしながら臨んだものです。

そこで、応募者もアイスブレイクに協力しましょう。それには3つのアプローチがあります。

1つ目は簡単な質問をすることです。「ここに座ればいいですか?」「コートはここにかけていいですか?」など、およそ想像がつくことでも、あえて尋ねてみましょう。声を出すことで、自分の気持ちが和らぎますし、取って付けたアイスブレイクよりも効果があります。

2つ目は褒めること。「駅からアクセスが近い」「建物の雰囲気や内装がきれい」「会議室に飾ってある絵がなんだかステキ」「案内してくれた方が丁寧でよい感じ」など、ポイントはいろいろあります。ビルに着いてからはいろいろなところを観察しておきましょう。

面接が始まる前に、それを口に出し、相手に伝えるのです。面接官は、自分の会社を褒められて悪い気はしません。「この応募者はリラックスしているからいろいろ話せそうだ」と、ほっとするのです。

応募者も、観察に集中することで緊張を和らげられます。「相手の良いところを見つけられた」「口にすることができた」という小さな成功は、安心にもつながります。

■自己紹介では「お礼」を言う

3つ目はお礼を言うことです。「本日はお忙しいところお時間を頂戴し、ありがとうございます」。これは本来面接官が言わねばならない言葉ですが、忘れてしまうこともあります。自己紹介の際に自分から言いましょう。面接官も思い出して「こちらこそありがとうございます」と言うでしょう。

以上はいずれも、面接に入るまでの自然な流れの中でできることです。普段通りのコミュニケーションを一度は回しておくこと、相手に対してささやかな賛辞や敬意を口にして伝えること。そうすることで、ラポール(信頼関係)を形成し、過度に不自然な「緊張面接モード」に入るのを抑えることができます。

■面接官の間で一般的な「S.T.A.R.」

(2)面接官は具体的・客観的な事実(エビデンス)を欲しがっている

面接官に必要なのは、「具体的な事実のもとに評価を行う」ということ。合格と判断した応募者については上司に申し送りをします。その際に、例えば「眼鏡の奥にキラリと光る目、あれは間違いなくできる人間っすよ」では通りません。「君は優秀だと言うが、この応募者は具体的にどんな実績をあげたんだ? どんな経験を積んでいるんだ?」という問いに対して、理路整然と説明をしなければならないのです。

面接官の間で一般的に用いられている、面接の進め方の考えで「S.T.A.R.」というものがあります。

SはSituation(状況)。TはTask(業務)。AはAction(行動)。RはResult(結果)。応募者が、どういった状況下で、何の業務を担当したのか。いかなる施策を実行し、どんな結果を出したのか。これらを順番に、つぶさにヒアリングしていき、把握できたところで初めて評価を行う、というものです。

ならば、応募者から、その情報を提供しましょう。

■「営業成績はどのくらいだったか」への回答

Resultを例に考えてみましょう。2つのパターンを用意しました。「営業成績はどのくらいだったのですか?」という質問に対しての答えです。

A「常に営業所の中では5位以内に入っていました。自分で言うのもなんですが、これはなかなか優秀な方だと思います。会社からも表彰を受けています」
B「部内には営業担当者が15人おり、営業対象となる事業所の数と規模をほぼ均等に割るかたちで、それぞれが担当エリアを持っています。昨年は15人中、通年の売上金額では4位、新規顧客の獲得数では2位でした。今の部署に配属になり3年になりますが、その間ベスト5から外れたことはありません。ちなみに、私のいる新宿営業所は全国でも有数の売り上げを誇るエリアで、新宿で5位以内にいれば、全国に2000人いる営業の中でトップ100には入ります。昨年は夏冬2回、上位5%が対象となる優秀営業賞を頂きました」

AとB、面接官はどちらの回答を望むでしょうか。答えはBです。面接官は一言で「5位」と言われても、それがどういう価値を持つのか全くわかりません。営業所内ではどうなのか、全国ではどうなのか、それが会社にとってどういう価値を持つのか。数字などで示しながら丁寧に伝えましょう。

また、ここで大切なのは、「私は優秀だ」と主張するのではなく、評価するための事実を十分に提供するという意識です。主観評価は交えずに話しましょう。判断に足る材料がしっかり集まれば、面接官は正しい判断をしてくれます。「それをあなたはどう評価しますか」と聞かれたら、そこで存分に優秀さをアピールしましょう。

■下腹を引き締め、胸を張って姿勢を整える

(3)面接官は「ハロー効果」に惑わされることもある

「ハロー効果」とは、応募者のわかりやすい特徴や印象に引っ張られて、評価そのものがぶれてしまう、というものです。「ラグビー部だから、どんなことにもへこたれないだろう」「姿勢が悪いから、普段の勤務態度も元気がないのだろう」など。良い方にも悪い方にも起こりえます。面接官はプロですから、その影響を受けないように意識していますが、なかなか難しいことでもあります。良い印象をもってもらえる分には構わないのですが、悪い方向に評価が傾くのはもったいないことです。

ならば、応募者自ら、ハロー効果で損しないようにふるまいましょう。

話す際の悩みとしてあげる方が多く、印象にも大きく影響するのが、「姿勢」とはっきりと話す「滑舌」です。最後はこの2つについてのアドバイスを紹介します。

まずは姿勢。劇団四季の俳優はクラシックバレエのレッスンを毎日受けているので姿勢がとても良いです。クラシックバレエにおける姿勢のポイントは2点、下腹を引き締め、胸を張ること。おへその下、指4本分のところにある丹田というところをきゅっと引き締める。これで体幹がまっすぐになります。そのうえで、肩が凝った時にやる運動の要領で、肩を後ろ方向(前→上→後ろ→下)にぐるぐる回し、最後はぎりぎり下に落ちきる前に止めます。

これで、肩に力が入らず、なおかつ胸が張った良い姿勢になります。姿勢が気になる方は、面接前のトイレで鏡を見ながらやっておきましょう。

■「はっきり話せない」人は口を開けていない

最後は滑舌についてです。俳優やアナウンサーは、滑舌をよくするために、とにかく母音(あいうえお)を重視してトレーニングします。私がプレゼンテーション指導をしている限りでは、滑舌に悩む方の9割以上は、口の開きが小さいことが原因です。

「あ」「い」「う」「え」「お」を、一音ずつ、いままでにこんなに口を大きく開いたことはないという限界まで開いてみましょう。その感覚を口に覚えさせ、話す時にもなるべく大きく口を開けるようにすること。それだけではっきり変わります。

良いコミュニケーションは、相手の立場に立って行われる時に生まれます。面接は、面接官との「共演の場」です。面接官の立場や役割を知ることで、応募者もまた、良い面接の場を作ることができます。不安や緊張もぐっと、少なくなるでしょう。リラックスしていきましょう!

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岩下宏一(いわした・こういち)
ビーユアセルフ代表
1970年鹿児島県に生まれ。1993年京都大学法学部卒業後、NTTに入社し、本社人事部配属となる。その後NTTコミュニケーションズ設立時の人事部立ち上げに参画。仕事のかたわらミュージカル専門学校に通い、劇団四季オーディションに合格。安定した生活から一転、エンターテインメントの世界に飛び込む。実力不足に日々悩みながらも稽古に励み、ライオンキング他3作品500ステージに出演する。退団後は人材採用支援最大手のレジェンダ・コーポレーション株式会社に入社。大小50社へのコンサルティング業務を経て、同社人事部長となる。その後、2014年7月にビーユアセルフ設立。現在は官公庁から上場・ベンチャー企業まで、プレゼンテーション・コミュニケーション研修やプロジェクトファシリテーション、人材採用コンサルティングを展開中。

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(ビーユアセルフ代表 岩下 宏一 写真=iStock.com)

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