最強のリーダーが必ず使う「2つの言葉」
プレジデントオンライン / 2019年3月8日 15時15分
※本稿は、髙橋恭介『4倍速で成果を出すチームリーダーの仕事術』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■全部自分で決めてはいけない
チームリーダーが決めたことを、「そのままやれ」と命令していれば目標を達成できた時代はすでに終わりました。現代のマネジメントにおいて大事なのは、メンバーのやる気や「やりたい」という気持ちを引き出すことです。
そのためにチームリーダーは、メンバー一人ひとりの目標にしても、仕事のやり方にしても、すべてを自分が決めるのではなく、メンバーにできるだけ決めさせるようにします。
自分なりの仮説や答えをもっていても、それをすぐには言わず、メンバー自身の口からそれに近いものが出てくるように、粘り強く質問し、対話をしていくのです。
「答えを全部言ってしまう」チームリーダーは、それが正しい答えだったとしても、チームとして目標を達成することはできないでしょう。その真逆に、「答えをまったく持っていない」チームリーダーもまた目標を達成することはできません。
■優秀なリーダーの落とし穴
プレイヤーとして優秀だったチームリーダーがやりがちなのが、前者の「答えを全部言ってしまう」完全指示型のマネジメントです。
「今から3分話しますので、メモをとってください。①はこう、②はこう、③はこうやってください。ここまで説明しておけばできますよね。では、明日からお願いします」
これでは、メンバーに自己決定感がまったくないので、なぜそのやり方でやるのか、それが本当に正しいやり方なのかなど、メンバーは何一つ腹落ちしていません。
チームリーダーから指示されたことなので、メンバーはその通りにやりますが、心の中には何か納得できない気持ちが残っています。
メンバーには、やらされ感しかないため、目標を達成したいという意欲がわかず、結果、目標を達成できないメンバーが続出することになります。
チームリーダーは、目標までの道筋が見え、答えがわかっていたとしても、指示や命令として、それを全部言ってしまったのでは目標を達成することはできません。メンバー自身に考えさせ、メンバー自身に目標までの道筋を気づかせることが重要になります。
■目標達成への道筋が見えているか
一方で、こちらのほうが多いかもしれませんが、目標を達成できないチームリーダーの中には、自分でも答えがわかっていない、目標までのプロセスが見えていない人がいます。
メンバーに対して、「どうすればいいと思う?」などと聞き、メンバーの考えや回答に対して、それでうまくいくかどうかわからないにもかかわらず、「よし、それでやってみて」とチームリーダーが安易に肯定してしまうのです。
メンバーに自己決定感があるのはいいのですが、答えが間違っていたら、メンバーがどれだけ一生懸命がんばっても目標を達成することはできないでしょう。
メンバーの答えが正しいのか、間違っているのか、チームリーダーは見分ける必要があり、もし間違っているのなら、アドバイスを与え、方向を修正して、正しい答えに誘導していく必要があります。
そのためには、チームリーダーは明確ではなくても、おぼろげにでも目標達成の道筋が見えている、答えがある程度わかっている必要があるのです。目標達成への道筋をチームリーダーがどうやって見つければいいのかについては、すでに詳しく述べた通りです。
言い訳をするチームリーダーは、こう言うかもしれません。
「そんなことしなくても、できるやつはできるんだ」
その通りです。しかし、メンバーに目標達成のすべてを任せてしまうのは、運任せにしてしまうのと同じではないでしょうか。
セルフモチベーターで、自ら勝手に成長できるメンバーが多いときは目標を達成できるけれども、そうでないときは達成できないということになります。これでは、チームリーダーの存在意義はありません。
チームリーダーであるならば、運任せなどにはせず、メンバーに寄り添って伴走し、適宜、的確なアドバイスを与えて、メンバーが成果を出せるように、目標を達成できるように導くことが求められます。
■目標を具体化する質問
チームとして目標を達成するためには、チームリーダーだけではなく、メンバーも自分で目標を立て、仕事のやり方を自ら考えることが大切になります。
なぜなら、人から与えられた目標や仕事のやり方よりも、自分で決めた目標や仕事のやり方のほうが、自己決定感があり、目標の達成率が格段に上がるからです。
![](https://president.jp/mwimgs/9/1/-/img_91924311a53729e4a38a4583cd41ea32122055.jpg)
しかし、メンバー各自に目標を立ててもらうと、抽象度が高い目標を立ててしまう人がいます。「○○を徹底する」「△△を心がけます」「できる限り□□します」といった目標では、実行後にそれらの目標を達成したのかどうか、誰にもわかりません。
こうしたメンバーに、より具体的な目標を立ててもらうために役立つのが、「たとえば」というシンプルな言葉です。
抽象的な目標に対して、チームリーダーが「たとえば?」と聞けば、「たとえば、○○です」とメンバーは具体的なものを考えて答えます。
それでも抽象度が高いと思えば、さらに「たとえば?」と聞きます。「たとえば」は、繰り返し聞くことで、どんどん思考が具体化される魔法の言葉なのです。
■成果目標をプロセス目標に転換
また、目標を具体化する上でもう一つ有効なのが「そのために」という言葉です。
「新規顧客を5件獲得する」という行動目標を立ててきたメンバーがいたとしましょう。
そしてそのメンバーは、その前の期も「5件獲得」という目標を立てていましたが、実際には2件しか獲得できていなかったとします。そうした場合には、メンバー「目標は新規顧客を5件獲得することです」
リーダー「なるほど。前期は2件だったから、とても意欲的な目標だね。ただ同じやり方だと、同じ結果(2件)になってしまうかもしれないよね。前期よりプラス3件獲得する、そのために何をすればいいと思う?」
メンバー「そのために(しばらく考えて)○○してみます」
「そのために」という言葉を使うと、結果を出すために何をすればいいのか、結果を出すためのプロセスについて具体的に考えることを促すことができます。言い換えれば、成果目標をプロセス目標に転換することができるのです。
![](https://president.jp/mwimgs/f/2/-/img_f2dd9d888eeb87a0cdadade96789bd28205492.jpg)
「たとえば」も、「そのために」も、より具体的な行動をメンバー本人に考えさせる言葉なので、次のアクションにつながりやすくなります。そして、自分で自分の行動を決めることになりますので、自己決定感が高まり、目標の達成確率も上がるのです。
この二つの言葉は、チームリーダーにとって非常に有効な武器になります。また、成果目標をプロセス目標に転換することは、メンバーの目標達成にとって極めて重要なことなのです。
(株式会社あしたのチーム代表取締役会長/一般社団法人スマートワーク推進機構 代表理事 髙橋 恭介 写真=iStock.com)
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