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アパ社長が"勉強するな"と息子を叱るワケ

プレジデントオンライン / 2019年3月19日 9時15分

アパホテル 社長 元谷芙美子氏

国内外で492ホテル(設計・建築中等含む)を展開、2017年11月期連結決算では、ホテル事業は売上高が1050億円(前年比16.9%増)で、初めて1000億円を突破。無双状態のアパホテルをけん引する“天才女社長”元谷芙美子氏に、きつく言えない現場への話題の振り方を聞いた――。

■私が入室したら、全員が立ち上がる

私は現場で即断即答。逃げずに、愛情を持って単刀直入に言います。現場でないと臨場感もないし、注意された側もなぜ叱られたのかわかりません。その場そのときで言うだけで、後から言うことはありません。前のことを蒸し返して何度も言う人がいますが、私は自分の性格上しません。

緊張感・尊敬の念が足りないという理由で、エリート社員たちを叱ったことがあります。本社には、子会社社長など、経営企画の中枢が集まるセクションがあり、私は滅多に顔を出しませんが、たまたま出向いたときがありました。しかし、彼らは私にまったく気付かず、挨拶もない。私のほうから挨拶しましたが、「それではいけない」とビシッと叱りました。

「君たちは勘違いしている。自分でエリートだと思っているでしょうが、とんでもない。現場に出て、汗水垂らして頑張ってくれている人こそがエリート。私が入ってきたときに、全員が立ち上がって『お疲れさまです』と言えないようじゃ、うちの会社も終わり。一流じゃないよ」と。あまりたくさん言ってはいけないので、1分以内にまとめて。現場の雰囲気も引き締まりました。

「人気のある素敵な社長になりたい」と思ってはいけません。言いにくいことでも、ここで言わなきゃ会社が駄目になるというときは、トップとして引いてはいけない。きちんと教育すること。嫌われることを恐れず、愛情を持ってしっかりと伝える。強い連帯感があれば、「社長は、親以上に僕のことを思ってくれるんや」と受け止めてくれると私は信じています。

■息子2人には「勉強なんかするな」

部下は恋人以上に愛して、息子以上に慈しんであげること。「自分の分身」だと思えば、どんなことを言っても通じます。部下たちは、お里のご両親と離れて暮らし、悲しいかな、年に数回しか会って孝行できない。一方で、私とは毎日のように会える。だからこそちゃんと育てて、褒めて、伸ばしてあげないと。厳しい言葉でも勇気を持ってしっかり言う。息子以上に大事やと思っているから言えるんですよ。後でちゃんとフォローして、「将来期待しているよ」と言えばわかってくれます。

実務上、部下は上司より優秀であって当たり前。優秀な部下に慕われて、いい仕事ができればいいじゃないですか。今の私の秘書とは、3~4年目になりますけれど、毎日噴き出すほど笑い合っています。いい関係です。

社員教育では、部下には細かいことは一切言わずに、自分の背中を見せるのみ。商談では、私がお客さまを最前線で待ち、まっ先にご挨拶します。不動産契約などの大きな仕事は、最初の出会いがすべて。挨拶は「居合抜き」みたいなものです。「おはようございます」「お待ちしておりました」「いらっしゃいませ」。相手さまの心と心臓を一瞬にしてつかみ取らなければ、言葉にする意味もありません。私より先に挨拶できる社員や、お客さま、今までそんなに会ったことがないですね。

「勉強なんかするな」と言って2人の息子を育てました。勉強はできて当然、習ったことができないなんておかしい。勉強はただ記憶力の強い子をつくるだけです。今はインターネットで調べればすべて解決するじゃないですか。そんなことで周りとしのぎを削って、偏差値の高い大学に行きたいなんて。そういう心がけじゃ大成しません。

先見力、洞察力、決断力――いろんなものが備わらないと「帝王学」は成り立たない。私は息子たちを、1度も子ども扱いしたことはありません。小さな頃から大人の論理で、人間としての生き方を教えてきました。私たちが夜の12時まで仕事があれば、それまで起こしておいて「お帰りなさい」と言わせる。幼稚園の頃から「ここにマンションやホテルを建てたりするんだよ」と言って土地を見せてきました。

■90歳までは、ミニスカートはきたい

親の務めとして、どれだけ忙しくても、授業参観などの行事を休んだことは1度もありません。先生との三者面談、PTA活動もパーフェクトにやりました。きっちりやり切らないと精神的に気持ちが悪い。息子たちも、よかったと思ってくれているはずです。

お金に関しても厳しく教育してきました。1円たりとも無駄遣いや贅沢をさせたことはありません。学生時代の仕送りはぎりぎりの生活費で5万円くらい。たくさんアルバイトして大変だったと思います。19円の“鼓笛隊ラーメン”を安売りのときに買ってそれで我慢したとか。

長男が学生時代に買った車は、15万円のボロボロのカリーナ。埼玉の山奥の解体業者みたいなところから買って、乗って帰るときに首都高で止まっちゃって、直しながらなんとか帰ってきたとか。そういうアドベンチャーライフがためになっているはずです。今になって、息子たちはグループ社長や専務になっています。帝王学の1つとして、トップとしてふさわしい人物でありなさいと話していますが、お金や生き方について決して甘やかしてきたことはありません。

創業者とは違いますので、二代目らしく、謙虚な気持ちでやってくれれば安泰。「親を超えよう」というのは二代目として間違いです。資産を守っていくだけでも大変なこと。跡取りとしてトップの器量を身に付け、会社を守ってほしいですね。

女性だからといってビジネスで損することはありません。女性の社長や管理職に対して社会は優しい。むしろ守られ、得しています。男の人は素晴らしいです。「そんなこと言うなんて古い」と言う方がいらしたら、そう思うほうが偏見だと思います。

アパのみんなが頑張ってくれてこその私の地位です。謙虚に、感謝しながら務めています。一歩下がって、かわいい社長じゃないとおかしいじゃない? 志は高く、腰は低く。花ごころあふれる優しい気持ちで、感謝の気持ちを伝える。お客さまにも華やかな自分であることを見せ続けないと駄目。

そして健康であらねばならない。簡単なことなんだけど、基本的なことがやっぱり大事。心身ともに健康でなければ、迫力のある言葉は出せない。社長のインパクト、オーラ、一生懸命さ、いろんな愛情もにじみ出てきません。DNA上、私は126歳までは生きられると聞いています。まだ10年、20年現役! 90歳までは、ミニスカートで頑張っていたいですね。

全員に嫌われない人になりたいと思っては駄目

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元谷芙美子
アパホテル 社長
1947年、福井市生まれ。県立藤島高校を卒業後、福井信用金庫に入社。22歳で結婚し、翌71年、夫が設立した信金開発(現アパグループ)に入社、取締役に就任。94年から現職。2011年早稲田大学大学院博士課程修了。日本舞踊、ヨガ、習字など趣味も多彩。

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(アパホテル社長 元谷 芙美子 撮影=原 貴彦)

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