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すぐに医師が辞める病院の"不都合な真実"

プレジデントオンライン / 2019年3月28日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/imacoconut)

年齢を重ねると増えてくる体の変調。突然のそのとき、どこの病院に行き、どんな医師を訪ねるべきなのか。9つのポイントで検証した。第7回は「求人を出さないvs人材募集中」――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです

■院長のセクハラや、パワハラで辞めるケースも

今どき常に求人募集している企業は、成長の途上というより「ブラック企業」を連想させる。これを病院に置き換えた場合はどうだろう。医師・看護師や他の医療従事者、事務職員が頻繁に入れ替わる病院とそうでない病院とでは、患者へのサービス内容に差があるのだろうか。

まず、病院はどんなタイミングで求人を出すのだろうか。医師専任キャリアコンサルタントの中村正志氏が言う。

「大きな病院は、創立30年ぐらいで大幅なリニューアルをすることが多いんです。特に17年、16年は多かった気がします。ちょうど建て替えの時期に、経営陣を一掃したり、公立から民間に移管したりして体制が変わる。そういうときの募集は成長の証しでもあり、悪い印象はありません」

一方、日本の医療を研究する会代表理事で、自らもクリニックを運営する川田諭氏は、クリニックの場合、開業して1年ぐらいで、看護師や医療事務スタッフが一挙に辞めてしまうケースがあると言う。

「クリニックを開業する医師は、勤めていた大学病院や総合病院から独立するケースが多い。企業に置き換えると大企業の社員が、いきなり中小企業の社長になるわけです」

それまで周りのスタッフがやってくれていたことを、院長はすべて自分でやらなければならない。不慣れな仕事で、ストレスがかなり溜まる。

「スタッフが我慢を重ねたすえに、1年経って『もうダメだ』と辞めていくケースは多い。大きな病院にいたときに思い描いていた理想と現実のギャップも大きい」(川田氏)

これは、大病院の現場で勤務医として精力的に働いていた医師に、特に多く見られる傾向だという。最初の1年は、医師も経験や勘に頼って頑張れるのだが、それまで周囲のサポートでやってきた医師が、たった1年で厳しい“経営者”に変わってしまうのだ。オープニングから頑張ってきたスタッフが、そこですれ違いを感じる。転職先には困らない資格を持つ人ばかりだから、すんなり辞めてしまう。

「多くの医師は経営について学んだことがありません。医師のマネジメント力の低さが原因です」(中村氏)

スタッフが辞めていく理由には、患者側に問題があるケースもあるようだ。例えば、透析を行うクリニック。その多くを占めるのは糖尿病患者だが、節制ができず、わがままで他人に気を使えない人がいて、スタッフの気持ちが荒んでしまうという。

さらに、特定の職種だけ入れ替わりが激しい病院もある。

「一例を挙げると、医師も看護師もすごく働きやすそうでいい病院に見えた。ところがリハビリテーション科のスタッフだけがよく辞める。リハビリだけ教育体制に問題があったり、給与が上がらなかったりなど、不満が溜まっていた」(中村氏)

看護師の職場はピラミッド型のヒエラルキーができやすく、看護部長、副看護部長、看護師長のマネジメントの巧拙が看護師の定着率、離職率に大きく影響する。面倒な“お局”管理職がいると、離職率が高くなるという。

「大きな病院ではコンプライアンスが利いているので耳にしませんが、クリニックだと院長のセクハラやパワハラでスタッフが辞めるケースもあります」(川田氏)

■20年間変わらぬ医師とスタッフが阿吽の呼吸で動く

では、ほかならぬ医師も頻繁に入れ替わるのだろうか。

「民間の病院だと個々の医師に裁量権があるし、医師不足で院長が気を使うので、人間関係で辞めることは少ないが、大学の医局だと、ボスの教授から嫌がらせにあって辞めることもある」(中村氏)

ワンマン理事長が自分の好き嫌いで医師を辞めさせるケースも、実際にあるという。

同じ医師の辞任でも、こんな悪例も。

「医師には年収2000万~2500万円の求人がありますが、決まれば紹介会社がその20~30%を取る。その医師が6カ月勤めて辞め、また次に行けば、紹介会社にまたお金が入り、医師はそのバックをもらう。昔はそんな医師もいたときいています」(川田氏)

やはり、求人を出さない病院というのはいい病院なのか。

「田舎に多いのですが、開業して20年経っても、スタッフが同じクリニックがある。求人も見たことがないし、医師もスタッフも阿吽の呼吸で動いています。そういう病院だと患者さんも家族のように診てもらえるし、安心だと思います」と川田氏は言う。中村氏も、そこは同じ意見だ。

「いい病院の可能性は高い。結局、患者さんは口コミで集まってきますから。例えば変にプライドの高い医師には患者さんもかかりたくないでしょう。人間的にバランスの取れた医師がいれば、院内の雰囲気もよくなり、看護師も病院事務のスタッフも辞めない。患者さんの受けもいいので開業してもうまくいくんです」

ただし、あまりにも人がよすぎる医師だと、かえってクリニック経営に向いていないので、そのあたりの医師のバランス感覚はとても重要だ。

常に求人を出す病院がすべてダメとは言い切れないが、やはり職員・スタッフが安定している病院のほうが、信用&安心できるという結論に落ち着きそうだ。

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川田 諭
一般社団法人日本の医療を研究する会代表理事
1977年、神奈川県生まれ。立命館大学法学部卒業。武田薬品工業等を経て現職。
 

中村正志
医師専任キャリアコンサルタント
1971年生まれ。関西学院大学卒業。医師の転職・キャリア支援に従事。現在、ブレインファーム所属。
 

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(篠原 克周 撮影=石橋素幸、浮田輝雄)

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