ジム・ロジャーズ"日本はより貧しくなる"
プレジデントオンライン / 2019年3月14日 9時15分
■借金が増え続け、少子化が止まらない日本
――日本は50年後に消滅するだろうという過激なことが、『お金の流れで読む日本と世界の未来』に書かれています。そうならないためには、今どうすればいいのでしょうか。
まず若者は日本から出ていくべきだ。国の借金が天井知らずに増え、人口が減少している。これは“ある外国人”が述べている意見ではない。簡単な算数だ。足し算と引き算ができればわかる。問題は悪化する一方だ。
50年後に誰がこの借金を払うのか。私ではない。他の誰も払わないだろう。だから若者には解決策がない。日本を出ていくしかないだろう。イギリスが深刻な衰退の状態にあっても、ビートルズは国を出ていかなかった。もしあなたがビートルズなら、出て行かずに残って歌うのがいい。しかしそうでないなら、チャンスには巡り合えないだろう。
――政府は何をすべきでしょうか。
日本政府は歳出の大幅カットをすべきだ。日本の歳出と借金は制御不能になっていて、借金をどんどん増やし、増税をしている。やるべきことと真逆のことをしているのだ。人口が減少し、借金が増えている状況で、増税をするべきではない。
■人口を10倍以上に増やしたシンガポールのやり方
――2007年に移住したシンガポールは、日本とは状況が違うようですね。
シンガポールは人々に移住を懇願することで、人口を50万人から550万人まで増やした。しかも単に増やすのではなく、移住させる人をコントロールした。教育を受けた、才能のある成功した人をシンガポールに移住させたのだ。一方、アメリカは移住してきた人には、誰にでも土地を与えた。移住する人は誰でもよかったからだ。
どちらの方法がいいか。日本人は外国人が嫌いだ。だからシンガポール・モデルに従って、コントロールしながら移住させるほうがいい。今の日本にある選択肢は、子供を増やすか、移民を増やすか、生活水準を下げるか、の3つだ。今のところ日本は生活水準が下がる選択をしようとしている。
■移民を歓迎した国は繁栄する
――移民を受け入れると社会が不安定になるという指摘もあります。アメリカは「同化政策」を取っています。
確かに同化政策のほうがいい。引き起こされる緊張がより少なくなるからだ。でも、それほど悩むことではない。アメリカで生まれた子供は自然に同化するからだ。
――アメリカにも人種問題はありますが、日本でも日本生まれの非日本人に対する差別が根強くあります。シンガポールはどうですか。
過去50年と比較すると、シンガポールは外国人に対する受容性が低くなっている。経済が失速してくると、他人のせいにするようになる。シンガポールは経済の失速を外国人のせいにし始めていて、外国人がシンガポールに移住するのがますます難しくなってきている。
首相のリー・クアンユーは二世のシンガポール人であり、シンガポール人のほとんどが二世か三世だ。みんな同化している。でも経済が失速してくると、それを新しい移民のせいにする。
――アメリカは移民の国であり、移民がいるから成功したとも言えます。
アメリカが繁栄したのは移民がいるからだ。シンガポールが成功したのも移民のおかげだ。移民を歓迎した国は成功して繁栄している。今日本にいる8歳の子供が40歳になったときに何と思うだろうか。生活水準が下がり、膨大な国の借金があることに感謝するだろうか。「借金をふくらませてくれてありがとう。生活水準を下げてくれてありがとう」と言うだろうか。はなはだ疑問である。
■消費増税を実行しても日本経済はよくならない
――昨秋、日本株をすべて売りましたね。何が引き金になったのですか。
一つのことが引き金になったのではない。世界経済について懸念を覚え始め、安倍首相は消費税増税を行おうとしている。総選挙も近づいている。安倍首相が自分のやろうとしていることをすべて実行するなら、日本経済はよくならない。株価は高かったので、売るべき時だと判断した。株価が最終的な引き金だと言ってもいい。朝起きて突然売ろうと決めたわけではない。
――昨年7月に私がインタビューしたときには、まさかあなたがその秋に日本株を売るとは思いませんでした。
私もそのときは秋に日本株を売ろうとは思っていなかった。だが、変化に対応しなければひどく損を被る。
――日本株を売った時には、かなり儲かりましたか。
かなりの利益を得た。
――利益が出ると思わなかったら、売らなかったのですか。
そんなことはない。場合によっては損をしたほうがいい場合もあるからだ。
■日本が「教育ビジネス」をやるべき理由
――日本に投資するなら「観光、農業、教育」の3つだと新刊に書かれています。日本の教育ビジネスに投資価値があると考えるのはなぜですか。
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今、日本の学校は空っぽだからだ。改正入管法が成立したため、その空っぽの学校はビジネスチャンスになる可能性がある。シンガポールには多くの教育ビジネスがあり、外国人が来るとそこで教育を受けている。
日本はインフラが整備されている。教育ビジネスはうまくいくだろう。例えば東京大学は外国人にもコースを提供し始めている。名声もあるし、施設もある。外国人を受け入れて教育をすれば日本は活性化するだろう。
空っぽの学校が余っていることはビジネスチャンスであり、誰かがそれに投資すれば大成功することができるだろう。外国人留学生も増えている。もっとたくさん受け入れて、空いている学校を使えば、大儲けができるはずだ。
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投資家
名門イエール大学とオックスフォード大学で歴史学を修めたのち、ウォール街へ。ジョージ・ソロスと共にクォンタム・ファンドを設立、10年で4200パーセントという驚異のリターンを叩き出し、伝説に。37歳で引退後はコロンビア大学で金融論の教授を一時期務め、またテレビやラジオのコメンテーターとして世界中で活躍していた。2007年、来るアジアの世紀を見越して家族でシンガポールに移住。
大野和基(おおの・かずもと)
国際ジャーナリスト
1955年、兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。1979~97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動を開始、国際情勢の裏側、医療問題から経済まで幅広い分野の取材・執筆を行なう。1997年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。アメリカの最新事情に精通している。
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(投資家 ジム・ロジャーズ、国際ジャーナリスト 大野 和基 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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