稼ぐなら"やりたくないこと"を仕事に選べ
プレジデントオンライン / 2019年3月11日 9時15分
※本稿は、江上治『一生お金に“嫌われない”生き方』(PHP研究所)を再編集したものです。
■なぜ収入の源泉を3つ持つ必要があるのか
収入の源泉は、3つ持つとよい。(1)給与所得(これまでの人生で磨いたスキル)、(2)成果報酬(印税、note、電子書籍など)、(3)不労所得(不動産、株式など)である。
この「収入の源泉を3つ持つ」という考え方は、会社員時代から実践するようにしたい。
現役時代、定期収入があるときから、少しずつ源泉を増やす道を探していく。給料のほかに2つあれば、給料がなくなっても、しばらくその2つでやり過ごすこともできる。リストラや転職で、会社からの収入が一時的に絶たれても収入を得られる道が複数あれば、リスクヘッジにもなる。
また現役時代から別の源泉を築いていれば、退職後やることがなく、家でブラブラして家族に疎まれる心配もなくなる。
会社に頼らず月にある程度余裕をもって暮らせる30万円を得るのは、人によってはハードルが高いと感じるだろう。だからこそ、収入の源泉を3つ以上持つのだ。1カ所から30万円は無理でも、1カ所から10万円ずつ、3カ所で30万円なら、さほど難しい話ではない。
会社員としての収入以外の道を探すのなら、当然副業という選択肢がある。
■副業では「うまい話には乗らない」
副業をするにあたって覚えておきたいのは、「うまい話には乗らない」ことだ。
ちまたには「これをやれば確実に儲かります」といったセミナーがたくさんあるが、すべて詐欺だと思っていい。世の中に「確実に儲かる」という話は、絶対にない。そんな言葉が出てきた時点で詐欺なのだ。
「年利10%以上の利回り」などと、高利回りをうたう投資商品も同じだ。せいぜい過去の実績で、将来を保証するものではない。「将来は保証しない」という言い訳が、よく見れば小さい字で書かれており、よく読まずに購入し、あとで「ダマされた」となるのだ。
■お金のための「時給仕事」はしない
そしてもう一つ大事なのが、「お金のための時給仕事はしない」ことだ。理想は、ブログの広告収入や本の印税のように、頑張ってスキルを上げれば上げただけ収入が増える「成果報酬型」のような仕事だ。たしかにコンビニでアルバイトをしても、1日1万円ぐらいにはなるだろう。月に4日働けば4万円になる。
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だがコンビニのような時給仕事は、いずれAI(人工知能)にとって代わられる。AIの普及で最初になくなるのは、コンビニやスーパーのレジ打ちのような時給仕事だ。目先のお金は得られるが、今後もずっとお金を稼げる手段にはならない。何より問題なのは時間単価が上がらないことだ。
外国人労働者の問題もある。政府は今後、人手不足を補うため、外国人労働者を大量に受け入れる方針だ。やはり時給仕事ほど、彼らに取って代わられやすい。
■「いい副業」と「悪い副業」がある
副業には、実は「いい副業」と「悪い副業」がある。時給仕事は「悪い副業」で、「いい副業」とは人に貢献でき、かつ自分の勉強にもなる仕事だ。うまくいけば収入も上がる。相手には感謝されるし、自分にとっても知識やスキルが身につく。お金の不安が減るので、視野が広がり、人生が楽しくなる。そんな好循環が生まれる副業だ。
たとえば私が顧問を務めるマネーキャリア協会では、会員に運営のサポートを頼むことがある。なかには非常に気が利き、コミュニケーション能力が高い女性もいる。そんな人がいると運営がスムーズに進むので、日当5000円を払って来てもらっている。運営を手伝うことで自分の勉強になるし、われわれにも感謝される。彼女の長所であるコミュニケーション能力を磨く機会にもなる。しかも日当5000円がもらえるのだ。
自分の得意なこと、つまりスキルをコンテンツ化して、お金に換えてもいい。ブログに書いてアフィリエイト収入を得たり、有料ブログを立ち上げる。自分の得意なことを開示し、必要な人に買ってもらうのだ。
■自己承認欲求を満たす仕事をする
これは自分の中にある「自己承認欲求」を満たすことにもつながる。人間の欲求の一番根源にあるのは、自己承認欲求だ。必要もないのにブランド品を買ったりするのも、人から承認されたい、認められたいという欲求があるからだ。自分をコンテンツ化して、人から承認されれば、おかしな買い物で自分を満たす必要もなくなる。出版関係者や文章が得意な人なら、こういう人たちに向けて情報発信するのも手だ。
ネット上にはブログを書いて承認欲求を満たしたい人があふれているが、正直、意味不明な内容も多い。フェイスブックやツイッターなども同様で、そういう人たちに向けて「読ませる文章の書き方」といった有料ブログをnoteなどで立ち上げる。「買って読みたい」という人もいるはずだ。
■経営者になれば定年はない
ほかに収入の源泉を増やす方法として、「会社を買う」という方法もある。これは中小企業向けの事業承継ビジネスをしている三戸政和さんが提唱しているものだ。三戸さんの『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)によると、いま日本の中小企業は後継者不足で悩んでいて、今後やってくる中小企業の大廃業時代に備えて、この本を書いたという。
私のクライアントにも中小企業の社長がいるが、いい製品をつくっているのに後継者がいない町工場は多い。従業員はいるけれど、みな職人で経営のことはわからない。子供も後を継がない。やむなく廃業せざるを得ないのだ。
大手企業のサラリーマンなら、マネジメントが得意な人は多い。会社で40~50人の部下を束ねてきた人なら、同程度の中小企業のマネジメントもできるはずだ。銀行との交渉、社員教育が得意、というのでもいい。サラリーマン時代に300万円貯めて、後継者のいない中小企業を買う。
前経営者や番頭クラスの協力を得るなど、工夫しだいでサラリーマンとの兼業も可能だろう。経営者になれば定年はないから、サラリーマンが定年になっても、自分の特技を生かして一生働くことだって可能になる。興味があれば『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』で紹介されていた「SMART」(「ストライク」が運営)や「TRANBI」などのサイトをチェックして、どんな会社が売りに出ているのか、見てみるといいだろう。
■「自分という株価」の値を上げる方法
ある意味、自分を「株価」と思う。そして「いまの自分の価値はいくらか」「周囲の人と比べたらどうか」「もっと高めるにはどうすればいいか」などと考えていく。
価値を高めるうえで最も効果的なのは「武器」を持つことだ。その武器でお金を稼ぐ。
武器は、自分が得意なものから選ぶことが大切だ。私のクライアントの年収1億円超の人たちも、みな「得意なこと以外はやらない」と言っている。儲かりそうだからと、苦手なこと、向いていない仕事に手を出しても、失敗するのがオチだ。いい例が現在、私の後を継いでFP事務所の社長を務めている笠井裕予氏だ。
彼女は学校卒業後、OLとして働いていたが、やがて怪しいネットワークビジネスの仕事に携わるようになった。根が素直な彼女は、ネットワークビジネスの人たちには格好のカモで、せっせと仕事に励んだ挙げ句、最終的に5000万円の借金を背負うことになった。
■開運グッズを売りまくる女性が「得意なこと」
一方で彼女には特技もあった。彼女はネットワークビジネス以外に、「ビリケン」という開運グッズの販売もしていた。とがった頭とつり上がった目が特徴の人形で、通天閣の展望台にもビリケンの像があるので、ご存じの方も多いだろう。この人形の足の裏をなでると幸福になるというもので、1体1万円もするこの人形を、彼女は1000体も売っていた。
彼女が私の会社に入ってきたのは、借金5000万円を抱えていた頃で、これらの話を聞いた私は、彼女は女性が心を許せるキャラクターの持ち主だと考えた。そして女性中心に生命保険の販売をさせたところ、ある生命保険会社の売り上げで5万人中4位の成績を上げるまでになった。セミナー講師としても実績を出している。
■「やりたいこと」でなく「やりたくないこと」で稼げ
苦手なことで5000万円の借金を背負った彼女だが、得意なことを見つけることで、その何倍も稼ぐ人間になったのだ。ただここで気をつけてほしいのは、「得意なこと」と「好きなこと」「やりたいこと」を混同しないことだ。
好きなことが、収入につながるケースは少ない。総じて自分が好きなこと、やりたいと思っていることは、ほかの人も好きだったり、やりたいと思っていたりすることが多い。それだけ競争が激しく、成功する確率が低い。たとえばカフェが好きな女性が、自分が思うようなカフェを開いたところ、お客がさっぱり入らず閉店するといった具合だ。
逆に自分でやりたいと思わなかったことが、世の中でニーズがあったり、お金を稼ぐだけの価値があったりすることは少なくない。
■自分の「できる」を限定しない
笠井氏もそうだ。彼女に5000万円の借金があると知ったとき、私はふつうに働いたのではとても返せないと考えた。そこで個人相手のファイナンシャルプランナーではなく、「1対100」ぐらいの規模でお客様の相手ができる、セミナーの講師を目指すように言ったのだが、彼女は「人前で話すなんて嫌です」と断った。
だが私には彼女には「向いている」という確信があり、強く勧めた結果、大勢の女性客を集める人気講師になった。彼女もしだいにやりがいを感じ、いまではテレビやラジオ雑誌などの仕事もこなすようになっている。
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「やりたいこと」と「稼ぐこと」の関係は、上の図のように表すことができる。もちろん「やりたい」ことで「できる」ことを仕事にできればいいが、お金を稼ぐには、まず「できる」、つまり「他人に評価される」かどうかを基準に考えることが大事だ。
できることの見つけ方として、まずは自分の「できる」を限定しない。そして、やりたくないことでも「できる」かもしれないと検討してみる。最初は「やりたくない」仕事でも、やっているうちに手応えを感じ、「やりたい」になることだってあるのだ。
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ファイナンシャル・プランナー
オフィシャルインテグレート代表取締役。ライフシフト代表取締役。1億円倶楽部主幹。
1967年、熊本県天草市生まれ。有名スポーツ選手から経営者まで、年収1億円を超えるクライアントを多数抱える富裕層専門のファイナンシャル・プランナー。
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(オフィシャルインテグレート 代表取締役 江上 治 写真=iStock.com)
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