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年100万超 大学学費はぼり過ぎなのか?

プレジデントオンライン / 2019年3月24日 11時15分

ピーター・ティール氏は、フェイスブックに初期投資をしたことでも知られる。(AFP=時事=写真)

■アメリカで議論沸騰「大学無用論」の背景

たかが大学、されど大学。時代が急変する中、大学の意味が問われている。

アメリカの投資家で、「ペイパル」の創業者であるピーター・ティールさんは大学批判の急先鋒である。

思想的には、個人の自由を重視する「リバタリアン」の立場であるティールさんの批判はすべて正しいわけではもちろんないが、ITや人工知能が急速に発展する時代における「大学」の意味を考えるきっかけになる。

ティールさんは、そもそも大学は「投資」なのか、それとも「消費」なのかと問う。大学で学ぶことで将来の仕事や人生に役立つスキルや知識を得るという「投資」なのか、それとも、4年間続く「パーティー」に参加するという「消費」なのかと。

ティールさんは、既存の大学が、そこに入る人を制限することで価値を生み出す限られた者だけの「クラブ」になっていることも批判する。特に、アイビーリーグと呼ばれる大学は、特権的なクラブになってしまっていると。

大学は、果たして「投資」なのか、「消費」なのか、それとも「クラブ」なのか。恐らく、どの側面も少しずつあるというのが正解なのだろう。

大学で学ぶ知識やスキルは確かに役立つ側面があるから、それは1つの「投資」なのだろうし、学生生活は楽しいことも多いから、「消費」ともいえるのだろう。また、同じ大学の卒業生の間では連帯感や相互扶助のようなこともあるという意味では「クラブ」でもあるといえる。

問題は、その大学がある種の「高等教育バブル」の中で自己満足していることだとティールさんは批判する。アメリカの大学の学費は上がり続けている。多額の学生ローンに苦しみ続ける人も多い。

学術論文の多くが無料で手に入るようになり、オンラインでのコースなど、学ぶ方法が多様化している現在、果たして大学にそれだけ多額の費用を投入して通う意味があるのかとティールさんは問う。

そんな思想を背景として、ティールさんが若手の起業家などに提供している「ティール・フェローシップ」は、大学に行かないか、行っていたら辞めることが条件になっている。大学などに行かずに、自分のやりたいことに専念すべきだというメッセージが込められているのだ。

大学関係者の反応も様々で、マサチューセッツ工科大学のように、ティール・フェローシップを獲得することを歓迎し、期限の終わる2年後の復学の便宜を図る事例もあれば、ハーバード大学元学長のように、ティールさんの発言、行動を烈しく非難するケースも出てきている。

大学のあり方が問われ、また、学びの環境が激変していることは事実である。一方、大学という組織の利点、培ってきた伝統の強みもあり、今すぐ大学がなくなってしまうという状況にはない。

ティールさん自身が、名門スタンフォード大学の学部とロースクールを卒業していて、その経歴をもってして大学無用論を説くのは少し矛盾しているのかもしれない。

いずれにせよ、大学を産業として見たとき、年間100万円単位の費用がかかる産業構造が今後も変わらないのかどうかには議論の余地がある。

人工知能などのイノベーションの結果、もっと安く、また広く開かれた学びのプラットフォームが出てくる可能性があり、そのとき「大学」は根本的な変革を迫られるのだろう。

(脳科学者 茂木 健一郎 撮影=横溝浩孝 写真=AFP=時事)

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