ぶっちゃけます、ここが変だよ日本の企業
プレジデントオンライン / 2019年4月10日 9時15分
■ソニーが国際的企業でなくなった理由
日本とアメリカにおけるリーダーシップの違いは明らかです。アメリカにおけるリーダーとは、強く、格好良く、他人の意見は聞きながらも自分の責任を持って意思決定を下すことのできる人物です。一方、日本のリーダーに求められるのは、優しく、空気が読め、皆の意見をうまくまとめることのできる人物像でしょう。
日本のリーダーが海外へ行っても、アグレッシブさが足りないと認められません。反対に、海外のリーダーが日本へやってきても、強引だと反発を招いてしまうことになります。
私は、かれこれ40年にわたって日本とアメリカを行き来してきました。現在、主な業務となっているのが、外資系企業が日本に参入する際、日本のビジネスや政治の文化を教えてサポートするというものです。
外資系企業が日本に進出する際、どんな問題、摩擦が起こってしまうか。実は、問題自体は複雑ではありません。私の経験則上、18くらいの項目に分類できてしまいます。情勢、金融、人材確保、取締役会……。その中でも、どの企業も頭を悩ませることとなるのが人事です。
半世紀以上営業している日本コカ・コーラですら、「日本産」の企業になったとは言えません。意思決定を行う幹部クラスの外国人と、現場の日本人スタッフの間に、意識の乖離があるからでしょう。
すべては、日本のビジネスが独自の文化に基づいており、諸外国から隔絶していることに起因しているのではないでしょうか。
海外の企業は、こうした文化の違いのために日本への進出をためらったり、実際に進出してもうまくいかなかったりするのが現状です。
私はガラパゴス化している日本の文化や習慣をわかりやすく伝えたいと考えて、日本で働く外国人向けのYouTubeチャンネルを開設しました。日本に長く暮らす人たちからも、「知らなかったことが知れた」と好評です。
各国の企業は、日本のビジネス文化に非常に苦心させられているのです。
日本企業も、海外進出に対してかつての積極性を失っています。
1980年代には、日本の会社はどんどん外国へ進出していこうという、グローバルな感覚を持っていました。
しかし昨今、日本の企業は、海外で製品を販売することはしても、現地に会社を設立するということをほとんどしなくなってしまいました。
例えばかつてのソニーなどは、非常にグローバルな企業だったと思います。ソニーのテレビ、ウォークマンなどは世界中の注目を集める「マストハブ」なアイテムでした。
しかし、現在のソニーはかつてのブランド力を失い、グローバルな企業だとは決して言えません。
もはやソニーの製品はナンバーワンでも、特別クールなものでもありません。Appleやサムスン、LGといった企業が世界的に人気を博しています。これは、ソニーが時代の流れを掴むことに失敗したからではないでしょうか。新技術を開発しても、それをどう利用するかを決め、特許を登録して商品を製造し、販売に至るまでの間に、時間がかかりすぎてしまうのです。
結果として、イノベーションそのものが致命的に遅くなり、他社にはない優れた技術、というものが失われてしまっているのです。しかし、どうしてかつての「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代から現状に陥ったのか。
これは、単なる一企業の問題ではありません。日本のビジネス文化そのものがこうした現象を生んでいるのです。
日本の現状は、硬直状態と言ってもいいかもしれません。日本のリーダーたちは、柔軟性を失ってしまっている。日本の組織の中に長くいると、年功序列で順当にポジションが上がっていき、あえて海外へ出よう、という意欲を抱くこともなくなってしまいます。
■桜田サイバー担当相は、ザ・日本のリーダー
また、これはリーダーに限ったことではなく、日本の若者は海外へ行きたがらない、と言われています。
これまで、海外で苦労して仕事を学んだ人たちが日本へ戻ってきても、実力に見合った正当な評価をされることはほとんどありませんでした。それどころか年功序列の社会で、海外で過ごした時間が「ブランク」になってしまう。また、海外仕込みの仕事のやり方やコミュニケーション法も、日本企業では「空気が読めない」と腫れ物に触るようにされ、プラスになるどころかかえって出世の妨げとなったのです。
そうした扱いや組織内の閉塞感が若い人に伝わり、海外へ出ていこうという意欲が失われているのでしょう。
そのうえ、日本では意思決定にとにかく時間がかかります。細かなことでも、なんども稟議書を通して会議を重ねる、というある種の文化に基づいてビジネスが行われています。また、とにかくリスクを避ける傾向にあり、イエスともノーとも言わず、結論を先送りにしがちです。
日本の文化では、失敗することが許されません。失敗すれば「おまえのせいだ」「辞めろ」などと叩かれてしまう。そのため、リスクを取って新会社をつくったり、新しい技術に命運を託したり、というような「賭け」に出ることができないのです。しかし、新しいことを迅速に取り入れることができないと、時代から取り残される一方です。
組織のリーダーのあり方も、運営方法も、意思決定の手順も、すべてこの国の文化に左右されています。
国会で「パソコンを使っていない」と答弁した桜田義孝サイバーセキュリティ担当大臣には驚かされました。本人の適性とは関係なく、年功序列と派閥にしたがって、空いていたポストにリーダーとして任命されたということなのでしょう。日本ならではの人事だと感じています。
アメリカでは、その道のスペシャリストでない人がトップに立つなどということはありえません。
例えばトランプ大統領。私は米国政治の専門家ではありませんが、彼の政治家としての是非はおいておいて、彼のある意味強引なリーダーシップは海外のトップらしいところではあります。
少子高齢時代、これまでの鎖国的なやり方ではもはや通用しないということは、誰もが知っているでしょう。
かつて、日本は産業、ものづくりの国だと言われました。まだその素晴らしさは失われてはいないと考えています。組織、ひいてはこの国のビジネス文化そのものを、根本から再考しなくてはいけない時代がきているのではないでしょうか。
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ラングリー・エスクァイア社長
1953年生まれ。米ジョージア州立大学、東北大学大学院などを卒業後、村田製作所、政治家中山太郎議員(後に外相)の秘書などを経て、現在は日本にある外資系企業に勤める外国人社員およびその家族の各種アドバイザーを務めている。
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(ラングリー・エスクァイア社長 ティモシー・ラングリー 構成=梁 観児 撮影=横溝浩孝)
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