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知らないと損する「医療費控除」の仕組み

プレジデントオンライン / 2019年3月13日 9時15分

控除額の計算方法(画像=『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』)

確定申告で最も対象者が多いと言われるのが医療費控除だ。従来の医療費控除に加え、平成29年分の申告からは「セルフメディケーション税制」が始まった。どんな人が対象なのか。公認会計士の渡辺義則氏が解説する――。

※本稿は、渡辺義則『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらが有利か

自分や家族の医療費を支払ったときに受けられるのが「医療費控除」です。平成29年分の申告から、セルフメディケーション税制が始まり、従来の医療費控除とセルフメディケーション税制のうち、どちらか有利なほうを選んで申告できるようになりました。

それぞれの特徴を簡単に説明すると、従来の医療費控除は病院に何度もかかった人向き、セルフメディケーション税制は、たくさん医薬品を買った人向きのものといえます。確定申告の際には、どちらの制度を使ったほうが有利かを、検討しておきましょう。

それぞれ控除額は下図のように計算します。

従来の医療費控除は、治療を目的として医療費を支払ったときに受けられる所得控除です。平成30年中に支払った医療費が10万円超、または総所得金額等の5%を超えている方が対象になります。

よく「10万円超の医療費を支払っていないから、受けられませんよね」という方がいますが、総所得金額等が200万円未満であれば、医療費が10万円超かかっていなくても、控除を受けられます。

■年金収入者は10万円未満でも控除を受けられる人が多い

※写真はイメージです(写真=iStock.com/marchmeena29)

ちなみに総所得金額等が200万円未満になるのは、給料、パート・アルバイト収入だけの方の場合、おおむね年収が311万6000円未満のときです。年金収入のみの方の場合には、65歳以上であれば、320万円未満の年金額の方が該当します。とくに年金収入者は、医療費が10万円を超えていなくても、控除を受けられる方が多いので、注意しましょう。

遠方にいるなど、同居していない家族の医療費を支払ったときも、「生計を一」(仕送りをしてその仕送りで家族が生活しているような場合)にしていれば、医療費控除の対象になります。その家族が誰の扶養になっているのかは関係ありません。たとえば兄弟で仕送りをして親の生活を支えているようなときは、双方で自分が支払った分の医療費控除を受けることができます。

控除額の計算で気を付けたいのは、医療費の補てんを受けたときです。たとえば、高額療養費、生命保険や損害保険の入院保険金、出産育児一時金などがあったときは、支払った医療費から引く必要があります。ただし、これらの補てん金は出産費用に関するものなら出産費用から引き、引き切れなかった金額があっても、ほかの医療費から引く必要はありません。ほかの医療費から引いてしまうと、控除額が低くなり、計算上不利になるので注意しましょう。

■セルフメディケーション税制対象医薬品の見分け方

一方、セルフメディケーション税制は、市販薬を1万2000円超買っている方が対象となります。ただし、どんな市販薬でもよいわけではなく、「スイッチOTC医薬品」といって、厚生労働省が、指定した薬効(スイッチ成分)が含まれている市販薬でなければなりません。

下図を見るとわかるように、従来の医療費控除は治療のための医薬品に限られますが、セルフメディケーション税制では、対象医薬品であれば、疲労回復や健康保持目的のものであっても認められます。禁煙パッチなどの禁煙補助薬、湿布、ニキビ治療薬なども、広く対象になっています。

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品(画像=『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』)

また、該当医薬品は、外箱などに「セルフメディケーション税控除対象」というマークがつけられ、薬局のレジシートには★印が表示されて、対象医薬品であることがわかるようになっています。申告の際には、この★印を見て、医療費の合計額を計算するとよいでしょう。

★印がついているのが対象のOTC医薬品(画像=『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』)

■市販薬を買っているだけでは控除は認められない

「セルフメディケーション」は、「自分自身の健康に責任をもち、軽い体の不調は自分で手当てをする」というものです。したがって、セルフメディケーション税制では、自ら健康の保持増進・疾病の予防を行いつつ、市販薬を使って自分自身で健康管理を行うことがポイントになっています。そのため、単に市販薬を買っているだけでは控除は認められず、申告する本人が、会社の定期健診を受けているなど、次のいずれかの取り組みを行っている必要があります。 

①特定健康診査(いわゆるメタボ健診)
②職場で受ける定期健診
③人間ドックやがん検診など(市区町村や会社を通して行ったもの)
④インフルエンザの予防接種または定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症など)

なお、家族分も控除の対象になりますが、家族が健康診断などを受けている必要はありません。

■申告に使った領収書は「5年間」保存する

医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。会社勤めの方や年金収入者は、「申告書A」という用紙を使って申告を行います。このほかに、医療費の内容を書き込むための専用の用紙が必要です。従来の医療費控除を申告する方は、「医療費控除の明細書」を、セルフメディケーション税制を使う方は、「セルフメディケーション税制の明細書」を手に入れましょう。これらの用紙は、税務署でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

では、どのように申告を行えばよいか、それぞれ見ていきましょう。

① 従来の医療費控除を受ける場合

従来の医療費控除を受ける場合は、医療費の通知書(お知らせ)と医療費の領収書を用意します。それらを見て、「医療費控除の明細書」に医療費の金額を書き込み、医療費控除額を計算します。

渡辺義則『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』(KADOKAWA)

医療費の通知書を使ったときは明細を書き込む必要はありませんが(明細の代わりとして通知書を使用するため)、医療費の通知書にない分については、各人別・医療機関別に、明細書に記入していくことになります。また、医療費の通知書を使わずに、すべて領収書で計算することも可能です。

領収書については、以前は明細書に添付して提出する必要がありましたが、現在では不要になっています(平成31年分までは経過措置があり、領収書を添付して提出することも可能)。ただし、医療費の通知書は例外です。医療費の通知書を使って医療費を計算した場合には、使った通知書を添付することになっています。領収書で計算した分については、自宅でその領収書を5年間保存します。

②セルフメディケーション税制の場合

セルフメディケーション税制を受ける場合は、「セルフメディケーション税制の明細書」に、申告者本人が健康の保持・増進、疾病予防に取り組んだことを証明する領収書、結果通知書、予防接種済書などを添付して提出する必要があります。明細書には、薬局ごとに購入した医薬品の名前を書き込んで合計額を計算します。買った市販薬の領収書の添付は不要ですが、自宅で5年間保存しておくようにしましょう。

医療費控除とセルフメディケーション税制の添付書類(画像=『自分ですらすらできる確定申告の書き方平成31年3月15日締切分』)

申告の際は、まず「医療費控除の明細書」や、「セルフメディケーション税制の明細書」から書き込んでいき、明細書の中で控除額を計算し、その金額を申告書に転記するという流れになります。

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渡辺 義則(わたなべ・よしのり)
公認会計士・税理士
中央大学商学部卒業。外資系監査法人、経営コンサルタント会社を経て、現在、渡辺公認会計士事務所所長。中小企業の経営・税務の指導にあたるとともに、株式公開、相続対策セミナーの講師などを担当し、幅広く対応。著書に累計75万部を突破したシリーズ『自分ですらすらできる確定申告の書き方』(KADOKAWA)がある。

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(公認会計士・税理士 渡辺 義則 構成=前窪 明子 写真=iStock.com)

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