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「緑のたぬき」小池都知事は再選できるか

プレジデントオンライン / 2019年3月12日 9時15分

自民党の二階俊博幹事長との面談後、記者団の取材に応じる東京都の小池百合子知事=3月4日、東京・永田町の同党本部(写真=時事通信フォト)

自民党の二階俊博幹事長が小池百合子東京都知事に送ったラブコールで自民党内が大揺れに揺れている。都知事選は1年以上先だというのに、小池氏を「全面協力」すると発言した。小池氏と敵対する自民党東京都連はもちろん、自民党本部も仰天する発言だ。“寝業師”とも言われる二階氏の真意は何だったのか。そして、小池氏は勝てるのか――。

■突然のラブコールに「もう、幹事長ったら」

その発言が飛び出したのは3月4日だった。小池氏が自民党本部を訪れて二階氏を表敬。そもそもの目的は、東日本大震災の被災地の木を東京五輪、パラリンピックの関連施設に植樹できないか、という話。二階氏が小池氏に持ち掛けてきた。

小池氏は前向きに考える回答を伝えるとともに、中国と太いパイプを持つ二階氏に、上野動物園のパンダ・シャンシャンの貸与期間を延長できないか陳情。二階氏も協力を約束した。

そんな、実務的かつ平穏な会談を打ち破ったのが二階氏。来年の都知事選の話題を切り出して「出馬されるのならば全面的に協力する」と伝えた。

同席者によると、小池氏も突然のラブコールに驚いていたようで、しばし沈黙した後、「もう、幹事長ったら……」と苦笑したのだという。

二階氏は会談の後の記者会見でも「全面協力」発言を繰り返した。

■ともに小沢一郎氏を「親」にもつ小池氏と二階氏

小池氏は日本新党、新進党、自由党、保守党などを経て自民党に入り、党役員や閣僚を歴任した。二階氏も新進党以降はほぼ同じ道をたどった。

党の広告塔のような存在だった小池氏と、裏での根回しを得意とする二階氏の接点は多いとは言えなかったが、2人が保守党にいるころから関係が深くなっていった。保守党は、自由党党首だった小沢一郎氏が自民党との連立解消に踏み切った時、小沢氏と決別し、連立にとどまると決断した議員がつくった政党だ。

小沢氏という「親」から離れ、2人が政治家として1本立ちした時期だ。表の顔・小池氏と裏の顔・二階氏。互いに違う資質を持った者同士、リスペクトしあうようになったのだろう。

■無敵の安倍自民党が小池氏に2敗している

二階氏が小池氏にラブコールを送ったことが大きなインパクトを与えたのはなぜか。自民党にとって小池氏は「最大の敵」の1人なのだ。

2016年の都知事選に出馬した小池氏は、自民党などが推した候補に大差をつけて圧勝。翌年の都議選でも自身が率いる「都民ファーストの会」を圧勝に導き、自民党の古手都議たちを次々に落選の憂き目に遭わせた。

安倍晋三首相は12年暮れに政権に復帰してから6年以上の間、安定的に政権を維持し、2度ずつ行われた衆院選、参院選でも勝った。しかし16年、17年の首都決戦での敗北は政権にとって痛撃だった。さらに17年秋、衆院解散を前に小池氏が希望の党を立ち上げた時、安倍氏ら自民党幹部たちは負けを覚悟して青ざめたという逸話も残る。連戦連勝の安倍自民党は、小池氏を敵に回すと分が悪い。苦手なのだ。

もちろん小池氏を自分たちの方に取り込むことによって来年の知事選で「負けない」ようにするという高等戦術も選択肢にはあるだろう。しかし、小池氏と感情的なしこりの残る党都連は絶対に反対だ。都連側への根回しもないまま、知事選の1年以上も前に「全面協力」を約束するのは、あまりにも拙速だ。

二階氏の発言があった4日夜、安倍氏は首相公邸に与野党の国対幹部らを招いて宴席を持った。二階氏の発言について、安倍氏はひと言「いくらなんでも早いなあ」とつぶやいた。まさに党幹部たちの本音である。

■「小池再選」と「安倍4選」を描く80歳の二階氏

ここで二階氏の本音を探っておきたい。80歳になった二階氏。交代説がささやかれるようになった。その空気に抗するために政治の動きをリードしたい。

小池氏再選の流れをつくることも、その1つだ。自身が描いたシナリオ通り、再選の流れができれば二階氏の続投の目も出てくる。二階氏は「小池再選」の先に、さらににらんでいるものがある。「安倍4選」だ。二階氏は既に非公式な席で、自民党則を変えて安倍氏が4選できるようにすべきだという動きを始めている。

20年の都知事選、21年の総裁選の功労者となれば、権力を維持することは可能だ。そういう野心が透けてみえるだけに、今回の「全面協力」発言は党内でも評判が悪いのだ。

■都連幹事長が「叱咤激励」に感謝するという流れに

この二階氏の発言は「なかなか候補者が定まらない都連を叱咤激励するものだった」ということで沈静化が図られようとしている。

7日、二階氏ら執行部は都連幹事長の高島直樹氏と面会。二階氏の懐刀である林幹雄幹事長代理が「ご迷惑おかけした」と頭を下げると、高島氏は「叱咤激励していただきありがとうございました」と矛を収める考えを見せた。

ただし都連側は小池氏を「全面協力」する考えは全くなく、候補者擁立作業を加速することになる。

■都連幹部が熱望するのは、元テニス選手の松岡修造氏

都連側も、すでに水面下では活発に動いている。名が上がっているのは鈴木大地スポーツ庁長官、橋本聖子参院議員、丸川珠代元五輪相ら。キーワードは「東京五輪の時の知事らしい人物」。鈴木、橋本両氏は元オリンピアン、丸川氏は五輪相経験者だ。中でも最有力とされるのが丸川氏。元アナウンサーで知名度があり、何よりも「小池氏よりも若い女性」が強みだという。

都連のある幹部は、元テニス選手でスポーツキャスターの松岡修造氏を熱望していた。確かに口説き落とせれば最も知名度が高い候補になるだろうが、残念ながら松岡氏は、東京五輪に向けてテレビ出演の契約などがびっしり詰まっていて、今からひっくり返す状況ではないのだという。要するに「東京五輪の顔」にふさわしい人物ほど、既に日程が埋まっていて身動きが取れないというジレンマに陥っている。

谷垣禎一前党総裁を推す声もある。自転車運転中のけがで政界は引退したが、ことし2月自民党大会では、車いすに乗って元気な姿を見せた。党側が「パラリンピックに力を入れるところを強調して、従来にない支持層を確保したい」という思惑もあるのだが、谷垣氏が出馬を決断するとは思えない。

■都連を「悪役」にして孤立させるシナリオが進行中

一方、小池氏はどうか。一時は80%近い都民の支持を得ていたが今は求心力も衰え、支持は全盛期の半分程度になってしまっていると言われる。先ほど紹介したような、知名度のある候補者を自民党が擁立すれば、小池氏も苦戦するかもしれない。

しかし、小池氏は、そんな時の戦い方を知っている。「悪役を作り上げ、それに対抗する正義の味方として立ち振る舞う」というのが小池流だ。まさに16、17年の知事選、都議選がそうだ。自民党都連や都議会を「悪の象徴」のように位置づけ、自身をフレームアップしていった。

その戦術を取ろうとした場合、二階氏の「暴走」は、ある意味ではありがたい。自民党都連が「反小池」で凝り固まり、都政でも抵抗勢力のようになっていけば、逆に小池氏には追い風が吹く。さらに二階氏が党本部をコントロールしてくれれば自民党都連を孤立させることができる。

小池氏はかつて、「緑のたぬき」と言われた。来年は久しぶりに「たぬき」の本領を発揮することになるのだろうか。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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