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一流が売上5003億ドルから読み取ること

プレジデントオンライン / 2019年4月2日 9時15分

■数字の意味をざっくり掴む「データセンス」能力

「データセンス」――。聞き慣れない言葉かもしれない。しかし、8年前から社会人に数学を教えてきたなかで、それを身に付ける必要性を感じている。

意味は文字通りで、データは数字や情報、センスは感覚や感性のこと。つまり、数字に対する感覚といってもよい。飲み会の割り勘で求められる計算は、「1人2994円ね」という正確さではなく、「1人3000円ね」というざっくりとした結論だ。おおまかに数字をとらえること。これがデータセンスの第一歩だ。データセンスは日常生活やビジネスで「役立つ」ことを主眼に置いた数学の活用術である。

2018年7月21日付の日本経済新聞に、米経済誌「フォーチュン」が発表した2018年版の世界企業500社の売上高番付「フォーチュングローバル500」が掲載された。世界1位は5年連続で米小売大手のウォルマートで、売上高は5003億ドル(約56兆5340億円)。読者はこの数字から何を読み取るだろう。正直、「すごいな」という感想はあるものの、金額が大きすぎてピンとこないのではないか。

実はどんな数字でも、多くの人は「見る」ことはできても、「読む」ことはできていない。数字のなかにはさまざまな情報が入っている。それを一般常識や自分の働く業界の常識などと照らし合わせていくと、いろいろなものが見えてくる。つまり、数字を読み解くことができるのだ。

5000億ドルという数字も、新たな視点で「分解」しながら日常レベル水準までもっていくとイメージがわきやすい。私たちは普段、スーパーでいくらぐらい使っているだろうか。仮に1週間に約2000円として、月に約8000円、年間約10万円消費しているとしよう。わかりやすく1ドル=110円とすると、5000億ドル=55兆円だ。年間1人10万円使う場合、お客が何人いたら55兆円になるか。「55兆円÷10万円=5.5億人」である。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/tadamichi)

ここまでくると、「米国の人口は約3億人だから、全人口の2倍近い人がウォルマートで買い物をしているのだな」とか、「日本の人口は約1億2000万人だから、その4倍くらいの人が利用している計算になるのか」などと考えることができる。そして、5000億ドルという数字が身近に感じられるようになってくる。

つまり、数があまりに大きいと圧倒されてしまいがちだが、それを身近な数字で「分解」しながら解釈し直し、そして新たなストーリーに「統合」しながら理解することが重要なのだ。

ビジネスシーンで、営業先の企業の年間売上高が3億円だと知ったとする。「こんな小さな会社なのに3億円も売り上げているのか、すごいな」で終わってしまってはいけない。月商にすると2500万円だから、その会社が1つ数万円の商品を扱っているとして平均価格を3万円と仮定したとき、月間の販売個数は「2500万÷3万=約800個」だと推測できる。ビジネスパーソンにとってこうしたデータセンスは大切なスキルだと私は考えている。

データセンスを身に付けるには、目の前に数字の持つ意味を常に考えることが大切だ。漠然と数字を見るのではなく、一歩とどまって先の分解と統合を行う。そういう訓練の積み重ねで、数字に対する感性は磨かれていくのだ。

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堀口智之
和から代表取締役
山形大学理学部物理学科卒業。2010年。大人のための数学教室「和(なごみ)」を創業。月間600人を超える社会人が学ぶ。著書に『「データセンス」の磨き方』がある。

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(和から代表取締役 堀口 智之 構成=田之上 信 写真=iStock.com)

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