野菜を切ることさえ億劫なワーママの主張
プレジデントオンライン / 2019年3月21日 11時15分
■自分はスナック菓子や菓子パンでおなかを満たす母親
近年、幼い子供のための食事には気を配る一方、自分自身は必要なエネルギーや栄養素を十分摂取できていない母親は少なくありません。仕事や育児に忙しく料理に十分な時間をさけないだけでなく、食事を作るために必要な知識や技術を持っていないというケースもあります。
本稿では、日本総合研究所「妊産婦等の食育推進に関する調査」(2017年、以下「妊産婦の調査」※)の一環で制作した「妊娠中・産後のママのための食事BOOK」と、筆者が収集した女性たちからのコメントから、特に子育て女性(妊婦・産婦)の食生活の課題について述べます。
※厚生労働省の2017年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業による調査
1:子育てママの食生活はおろそかな傾向に
「妊産婦の調査」によると、妊婦と産婦(出産後1年以内の女性)では、食生活に違いがあります。「理想的な食生活」の実践度を尋ねたところ、「実践できている」「どちらかというと実践できている」と回答した妊婦は54.4%で、産婦は49.2%でした。
なぜ妊産婦は「理想的な食生活」を実践できないのでしょうか。その理由について、妊婦では、「体調がすぐれないから(つわり、産後の回復が悪いなど)」(26.8%)、「面倒だから」(19.8%)、「時間の余裕がないから」(15.4%)が上位でした。
一方、産婦では、「時間の余裕がないから」(40.0%)、「面倒だから」(19.4%)、「調理技術が不足しているから」(11.3%)が上位に挙げられています。産婦は出産後の子供の世話で忙しく、妊婦に比べても自身の食生活に十分配慮する余裕がない状況がうかがえます。
■「睡眠不足の日が多く(自分の)食事を作る気力が出ません」
さらに産婦と妊婦を比べると置かれている状況が異なることがわかります。
「食事に手間や時間はかけたくない」(妊婦:67.2%、産婦:75.3%)
「食費はおさえてほかの事にお金を使いたい」(妊婦:55.2%、産婦:60.6%)
「食事はお腹が満たされればよい」(妊婦:37.3%、産婦:43.7%)
いずれも産婦のほうが結果的に食生活を軽視する傾向が高いようです。また、筆者が主に乳幼児を持つ30代から40代の母親にヒアリングしたところ、下記のような声が聞かれました。
「親(自分)のための料理の一部を取り分けて子供用の離乳食を作ることも可能ですが、実際は、子供専用の食事を優先的に作り、食べさせ、自分は適当な残りものを食べて終了。仕事があり日々忙しいので、それがわが家の食生活の実情です」
「子供の食事はきちんと作っていますが、自分の分はマンションの下のコンビニ弁当を買う、あるいはスナック菓子や菓子パンでおなかを満たしてしまうことも多い。コンビニが私の『冷蔵庫』です」
「特に出産後は、睡眠不足の日が多く、食事を作る気力が出ませんでした。また、育休から復職してからは、料理の最中に子供に声をかけられたり、抱っこをせがまれたりすると、日中かまってやれない罪悪感もあり、子供との触れ合いの時間を優先してしまう」
■有料レシピサイトは使わず、カット野菜を買いたい
2:子育てママが月3000円以上のお金をかけても使いたいもの
「妊産婦の調査」によると、食生活を整えることが面倒であると感じる妊婦・産婦は少なくありません。
面倒であると感じる理由としては、妊婦・産婦ともに、「献立を考えること」(妊婦:30.8%、産婦:39.5%)、「材料の下ごしらえをすること(洗う、カットする、皮むきする、など)」(妊婦:15.0%、産婦:13.5%)が上位に挙げられています。
同調査では「今後最も利用したい商品・サービス」を尋ねています。その結果は、妊婦・産婦とも「レシピサイト」(妊婦:27.3%、産婦:29.9%)が最も多く、「カット野菜」(妊婦:12.3%、産婦:13.2%)が続いています。
「今後最も利用したい商品・サービス」のトップである「レシピサイト」への月額支払い意向は、「月0円(お金は支払いたくない)」(妊婦:73.8%、産婦:72.1%)が最も多く、支払い意向がある場合でも「月1円~1000円」(妊婦:24.9%、産婦:26.8%)となっており、お金を使ってまで利用したいと考える妊産婦は少ないことが分かります。
一方で、「カット野菜」への月額支払いの意向は、「月1円~1000円」(妊婦:50.0%、産婦:57.6%)が最も多く、レシピサイトに1円も払いたくないという結果とは対照的でした。しかも、「月3001円~」(妊婦:13.0%、産婦:6.6%)と回答した妊産婦もいます。つまり、材料の下ごしらえを楽にするための支出については寛容なのです。
■外食や総菜、冷凍食品は罪悪感あり、カット野菜は罪悪感なし
今回の妊婦及び乳幼児を持つ母親へのインタビューでは下記のような声もありました。
「できるなら食材から手作りしたいですが、時間的に厳しいので、カット野菜を使っています。食事を作らない(外食や総菜、冷凍食品など)と罪悪感が強いけれど、カット野菜ならそれも軽くなります」
「出産後は、野菜多めにヘルシーメニューにしなければならなかったので、カット野菜とソース(ドレッシングなど)がついているキットを利用しました。安くはないコストがかかりますが、それでメニュー1つができて野菜もきちんと摂れるので、大変役に立ちました」
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カット野菜は、時間に追われ野菜を摂りたいと思っている子育て女性のニーズを満たしている商品といえます。
一方、「出産前に、(自治体などから)無料のレシピ冊子をたくさんいただいたのですが、計量が必要とされることが多く、自宅にはかりがないので、かえって料理を作る気がうせてしまいました」といった意見もありました。
子育てを行う女性の食生活を改善するためには、便利で負担のないツールやサービスを活用し、配偶者などの支援を得ながら、献立や調理の手間を減らすことが重要といえます。
■焼き鳥とカット野菜をご飯にのせれば立派な食事
3:明日からできる子育てママのための工夫
「妊産婦の調査」の一環で作成した「妊娠中・産後のママのための食事BOOK」(※)では、妊婦・産婦の女性、あるいは配偶者などの家族向けに、簡単、便利、手間の要らない食事を紹介しています。「ママのための食事BOOK」はネット上で誰でも無料で見ることができます。今回は、ポイントを抜粋してご紹介します。
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ポイント1:食事づくりは家族と協力
例えば、一品だけ総菜(例:焼き鳥)とカット野菜を買ってきてご飯にのせるだけでも立派な食事になります。配偶者(夫)に、まずは、総菜や調理肉などを買ってきてもらい、それがすぐメニューの一品になる、という認識を持ってもらうこともできます。料理が上手な配偶者(夫)は少数派ですが、子育て期の早いうちから食事の準備に参加してもらうきっかけづくりをすることは、将来の家事・育児の参画にもつながるはずです。
ポイント2:調理野菜の活用
最近では、冷凍野菜、カット野菜のほか、乾燥野菜も販売されていますので、うまく使って栄養価をアップすることができます。
また、少し手間がかかりますが、小松菜やブロッコリー、キャベツ、いんげんなどをさっと茹でて保存容器に入れておけば、いつでも使えて便利です。一般的には、冷蔵庫で2~3日、冷凍庫なら約2週間もちます。電子レンジで温めるだけで、温野菜サラダやスープに使えますので、下ごしらえの時間を削って野菜を摂ることができます。
ポイント3:食欲がないときのうどんメニュー
うどんは、しっかりエネルギーを摂りたいけれど、食欲がないときに気軽に食べられます。野菜をたくさん入れれば、栄養素も摂れます。季節や体調に合わせて、のどごしのよい冷たいうどんや、やわらかい煮込みうどんなどのアレンジも簡単です。賞味期限が長い乾麺などを常備しておくと、急な体調変化で買い物にいけないときでも食べることができます。
今回、コメントをもらった複数の妊産婦からは、「有料でもいいから食事を作ってもらえるサービスを使いたい」という意見がありました。余裕のないときは外部のサービスを活用し、食生活に関わる負担が減れば、自身の健康面での改善を図れる上、子供と食卓を囲む時間も増えます。
共働きが増え時間に追われる妊産婦が増えるなか、食生活に着目した支援やサービスが増えていくことが期待されます。
(日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島 明子、日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 リサーチアナリスト 青山 温子 写真=iStock.com)
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