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橋下徹"僕が自民府知事候補を評価する訳"

プレジデントオンライン / 2019年3月20日 11時15分

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/kouji okafuji)

投票まで1カ月を切りいよいよ白熱する大阪ダブル・クロス選挙。大阪都構想を推進する大阪維新の会に対して、自民・公明などの対立勢力は橋下府政の立役者だった小西禎一元副知事を擁立。小西氏の行動は一部で「裏切り者」と揶揄されたが、橋下徹氏は「素晴らしい生き様」と受け止める。決戦を前に都構想の「生みの親」は何を思うか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月19日配信)から抜粋記事をお届けします――。

■考え方が違っても公務員として完璧に仕事をやり遂げてくれた

大阪ダブル選挙が盛り上がってきた。大阪維新の会は、府知事候補として前大阪市長の吉村洋文氏を、市長候補として前大阪府知事の松井一郎氏をクロス擁立。対する敵方は、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、それに組合組織の連合までががっちりとタッグを組んで、府知事候補として元大阪府副知事の小西禎一氏を、市長候補として元大阪市議会議員の柳本顕氏を擁立した。共産党までこの自民党候補を支援するらしい。

(略)

自民党から共産党までの既存の政党がタッグを組んだ敵方は、真っ先に、2015年5月17日の住民投票によって大阪都構想は否決されたので、大阪都構想の議論はもはや終了したということを強調する。インテリたちにもこの意見が多いよね。

この意見は、住民投票以後の大阪での重大な政治プロセスを完全に見落としている。

(略)

2015年5月17日の住民投票で大阪都構想は否決となった。しかしその後、都構想反対派が提唱した府と市が話し合う大阪会議を設置したが、それが全く機能しなかった。大阪会議では議題すら決めることができず、同年8月から現在に至るまで会議は開かれたことがない。つまり大阪都構想の反対派がずっと言っている「府と市が話し合えばいい」という主張がただの空論であったことが証明されたんだ。

そもそも小西さんは大阪府副知事として、大阪市副市長と話をまとめることができなかった懸案事項がたくさんある。府と市の職員の間で対立することが、僕の時代から今に至るまで山ほどある。係長レベルでまとめることができなかったものが、課長に上がり、課長でダメだったものが部局長に上がり、そこでダメだったものが副知事・副市長に上がる。それでもダメだったものが知事・市長に上がってくる。

今、府と市が一体となって万博の誘致や外国人観光客の集客、大阪の鉄道・高速道路インフラ整備や「うめきた」などの大規模開発、さらには防潮堤などの大規模な災害対策といった、様々な大きな実績を上げて大阪の経済指標が軒並み右肩上がりになっていることは周知の事実だが、これは、松井さんと吉村さんが不眠不休で副知事・副市長レベルでもまとめることができなかったものを何とかまとめているからだ。

松井さんと吉村さんと食事をするときでも、彼らはずっと府と市の懸案事項を調整している。これが今の大阪府と大阪市の実態だ。

小西さんは副知事経験者で、府と市の話し合いでまとめることができなかったものを自らたくさん経験したにもかかわらず、今大阪都構想に反対するために「府と市が話し合えばいい」と言うのはごまかしだ。

大阪都構想は100%完璧なものではない。都構想をやったからといってすぐにバラ色の大阪になるわけではない。問題点をあげればいくつも出てくるかもしれない。しかし、今の大阪府と市の体制のように知事・市長が不眠不休で府と市の間を取りまとめるというのは、今後ますます時代の流れが速くなり、状況に応じた大阪全体の意思決定をやらなければいけないときに、大阪都構想の問題点と比べて、比べ物にならないくらい大問題なんだ。

つまり大阪都構想よりも現在の大阪府・市の体制の方が問題点は山ほどあり非常にまずい制度。今は大阪都構想に焦点が当たっているので、都構想の問題点ばかりが取り上げられ、現在の府・市の体制の問題点は全く取り上げられないが、本来は都構想と現在の府・市の体制を比較して、どちらが優位か、どちらがましか、を判断すべきなんだ。

知事、市長を経験すればこれはすぐに分かる。本来副知事でも分かること。都構想のように大阪府と市が組織として一体化して、しかるべき役職で必ず見解をまとめることができる組織の方が、現在の府・市の体制よりもはるかにましである。もちろん都になり府・市が組織的に一体となっても知事のところにまで上がってくる懸案事項はあるだろう。しかしその量は、現在の府・市の体制よりもはるかに少なくなる。知事・市長の本来の仕事は、内部の調整役ではない。それは副知事・副市長以下でやることだ。

知事の仕事は大阪のリーダーたる仕事だ。府・市の調整役から解放し、大阪のリーダーたる仕事に集中させるためにも、府と市を組織的に一体化する大阪都構想が必要なんだ。

都構想反対派が唱えた大阪会議が全くダメだった。だから大阪都構想の再挑戦を訴えて2015年11月に松井さんと吉村さんがダブル選に挑み、当選した。この流れからすれば、松井さん、吉村さん、そして大阪維新の会が大阪都構想に再挑戦するのは、民主国家の政治家として「義務」である。

ちなみに京都大学の藤井聡氏は、「大阪都構想になれば大阪市民の税金が吸い上げられ、大阪市の周辺市町村に使われる」という、いかにも閉ざされた大学内で生きている学者バカの批判をしている。

大阪府職員として約40年間勤め上げ、副知事にもなったスーパー公務員の小西さんがはっきりと言っている。「大阪都構想は大阪市内に行政のエネルギーが集中してしまう」と。そうなんだ、大阪都構想は大阪の都心部をさらに強力に発展させ、それを大阪全体に広げていく構想なんだ。

藤井も税金使って自由時間を与えられてるんだから、もう少し現実の政治行政をしっかり勉強しろよな。

(略)

小西さんのこの仕事ぶりを評価して、僕は小西さんを府庁最高幹部である総務部長に抜擢した。幹部内の人事会議では時期尚早という声が多かったが、しっかり仕事をやってくれたので僕は決定した。

こんな小西さんであるが、小西さんは基本的に僕の考え方には反対のところが多かったと思う。ここまで書いたものは、スムーズに事が運んだものの一部であって、府の仕事はこの何百倍、何千倍とある。

だから、小西さんとはぶつかった仕事もたくさんある。最も激しくぶつかったのは、職員基本条例を制定するときだ。この条例は職員の人事評価を厳格化することが柱だが、小西さんはこれに納得がいかなかったようだ。僕の案は、相対評価の導入といって5段階評価のうち、一定の割合で無理やり下位評価を付けるもの。小西さんはきちんと仕事をやっている職員に無理矢理下位評価を付けるのはおかしいという主張だった。僕は小西さんが反撃する機会を与え、この職員基本条例についての批判を許した。小西さんは総務部の総力をあげて職員基本条例潰しにかかった。メディアも職員基本条例を批判した。僕は、このような対立状況を作りながら、大阪市長に転じる選挙(松井さんが最初に大阪府知事に立候補した選挙)において、この職員基本条例を選挙にさらし、そして選挙で勝利したことをもって条例制定を断行した。小西さんも、選挙結果が出た以上従った。

小西さんは公務員に誇りを持っている。公のために、一生懸命まじめに仕事をやっているじゃないか、と。だから公務員を徹底批判する僕に我慢がならない部分が相当あっただろう。

僕と小西さんの考え方の明確な対立軸は、「公務員の責任」についてだ。僕は大阪府政の失敗には政治家のみならず公務員組織も一定の結果責任を負ってもらわなければ困るという考えで、大阪府政の財政状況の厳しさから職員給与や退職金の削減を断行した。他方、小西さんは、公務員組織は政治家や知事の決定に忠実に従っただけであり、財政状況の厳しさについては公務員組織が給与削減などで責任をとるいわれはないという考えだったと思う。

財政再建改革のときには、小西さんも僕の指示に基づき職員給与カットなどを実行してくれたが、腹の奥では、公務員を厳しくバッシングする僕に不満を持っていただろう。それに加えて、小西さん率いる総務部について財務部と人事部に分ける案や、総務部市町村課の市町村交付金を廃止する案などを僕が打ち出した時には怒り狂っただろう。

そして最後は、大阪都構想だ。これはこれまでの大阪府と大阪市の役割分担を大きく変えるものだ。府庁職員・公務員としての仕事に人生を捧げた小西さんには、府庁と市役所の役割分担の大きな変更には納得いかないことが多々あったであろう。特に、大阪都構想を進めるにあたって、大阪府職員や大阪市職員が膨大なエネルギーを費やし、議会から厳しく追及される姿を見て、彼ら彼女らをそこから早く解放してあげたいと思っただろう。

このように小西さんは、僕や大阪維新の会の考え方には、反対のところが多々あり、不満を抱いていたと思う。しかし僕に意見をすることがあっても、最後決まったことは実行してくれた。ある意味スーパー公務員だ。

ところが、小西さんも64歳。このままでは死ねないと思ったのであろう。あの橋下に、大阪維新の会に勝負を挑んで、維新政治に、都構想議論に終止符を打ちたいと思ったのであろう。公務員のときは公務員として一生懸命働き、そしてどうしても我慢できないところは政治的に決戦を挑む。素晴らしい生き様じゃないか。

(略)

■愚痴ばかりで挑戦しない面々よ、一度は本気で勝負してみろ!

それにしても、あれだけ「維新政治を終わらせる!」「維新からの選挙戦を受けて立つ!」と息巻いていた、花谷充愉自民党大阪府議会議員をはじめとする府議会議員も大阪市議会議員も、結局誰も立候補しない。議員として生き残ることがすべてなんだよね。大阪の国会議員も口だけで、誰も政治生命を賭けて勝負を挑まない。僕や大阪維新の会を、人生賭けて罵ってきた、京大の藤井聡やその他の学者、そして大谷昭宏などのコメンテーターたちも誰も立候補しない。

(略)

古賀茂明も、前川喜平も、公務員を終えたあとは政治に対する愚痴ばかり。それだけ愚痴を言うなら一度は政治家になって、自分がいつも言っていることを一度やってみろっていうんだよ。

こんな腑抜けな連中よりも、この大阪ダブル・クロス選挙に挑んできた小西さんには、その考え方には賛成できないけど、心から敬服する。悔いのないように戦ってもらいたい。

(ここまでリード文を除き約4000字、メールマガジン全文は約1万2700字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.144(3月19配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【大阪ダブル選挙(2)】反対派の構想「大阪会議」は機能したか? 大阪都構想「再挑戦」に大義あり!》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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