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出身大学でわかるいい歯医者ヤバい歯医者

プレジデントオンライン / 2019年5月24日 9時15分

時事通信フォト=写真

歯科医師といっても、実はもらっている給料はピンキリ。また出身大学の偏差値も60超から30台までピンキリ……。いつも診てもらっているあの先生は果たして大丈夫だろうか。歯科医師10万4533人の現実を明らかにする。

■合格者は、優秀な人材ばかりか

あるベテラン歯科医師は、次のように語る。

「1969年、国は人口10万人に対し50人を目標に歯科医師を増やす方針を掲げていました。生活が豊かになるとともに増えた国民の虫歯に対処するには、それだけの“数”が必要と考えられていたわけです。その後、順調に歯科医師を確保できたところまではよかった。ところが、虫歯の予防が広く行き渡ったため歯科医師の診療を受ける子供は減っているのに、歯科医師の数は増え続けた。82年にはすでに過剰となることが懸念され、歯科医師の削減目標が閣議決定されるに至ったのです」

2016年時点で歯科医師の総数は10万人を超えている。国民10万人に対し歯科医師数は約80人となる。巷では「コンビニより多い歯科医院」などと表現されるようになった。それゆえ、かつて目標として掲げられていた「10万人に対し50人」が適正かどうかは議論の余地もありそうだが、ともかく歯科医師を削減するうえで、それが1つの指標とされることがままあるという。

このような“削減圧力”を反映してか、歯科医師国家試験の合格率は芳しくない。18年2月に行われた歯科医師国家試験の結果によると、受験者数は3159人、合格者数は2039人、合格率は64.5%だった。新卒と既卒を合わせて合格率90%を超えているのは国公立では東京医科歯科大、私立では東京歯科大のみ。半数以上が不合格という大学が3校もある。当然ながら“浪人生”も多いわけで、受験者数全体に占める新卒と既卒の割合は、およそ6:4だ。

“狭き門”となっている歯科医師国家試験。そこをくぐり抜けた合格者なら、さぞかし優秀な人材ばかりだろうと思いたい。ところが、必ずしもそうとは言い切れないとの見方もある。そもそも歯学部は大学入試の難易度がかなり低下しているからだ。

大手予備校の1つ、河合塾の難易度ランキングで見ても、偏差値50台がズラリと並ぶどころか、40台、30台などというのももはや珍しくない。もし、自分が患者として歯科医師にかかるなら、どの大学の出身者かが気になるほど、大学間で格差があるわけだ。

■「金持ち」と「貧困」の分かれ目とは

歯学部に優秀な学生が集まらなければ、将来的に歯科医師の低下が懸念される。気になる受験生から見た歯科医師の魅力だが、現状はどうか。まず、歯科医は比較的開業しやすいと言われてきた。たとえ小さなクリニックでも、一国一城の主となれる点は見逃せない。実際、6割近くは診療所を開設したり医院を経営したりしている。

ただし、東京商工リサーチが18年5月に発表した「2017年度『歯科医院』倒産状況」によると、23年ぶりに20件台になった。そして「歯科医院の倒産は小規模医院を中心に増加をたどる可能性が高い」とされているのだ。

では、もう1つの大きな魅力であったはずの収入面はどうか。フルタイム勤務の場合、医師の平均年収が1233万円であるのに対し、歯科医師はそれより500万円近くも低い757万円である。しかも、これはあくまで平均。実際には2000万円以上の開業医が存在する一方、300万円台などといった歯科医師の例も珍しくないだけに、「貧困歯科医」と揶揄されるのもやむなしか。

だが一方で、年収1000万円を超える歯科医師も多い。自営業者や経営者として診療所などを開業しているケースでは、自分の収入以外に「設備投資に備えて」などの名目で内部留保を蓄えている点も忘れてはならない。かつてのように「年収2000万円や3000万円は当たり前」とはいかないが、依然として高収入を“狙える”職業の1つであることは揺るぎないようだ。

■「投資を回収できるか、競争を生き残れるか」

また開業している場合、経営難に陥らなければ定年を考えずに働き続けられる点も大きなメリット。65~69歳の平均年収が1190万円もあることがわかる。

はたして、歯科医師の人生における収支はどうとらえたらいいものか。大学を選ばなければ歯学部に進学すること自体はさほど難しくない。ただし、私立なら6年間の学費として、2000万円プラスアルファ、あるいは3000万円プラスアルファがかかると言われている。それにもかかわらず、歯科医師国家試験に合格できなければ、さらにお金がかかるか、それまでかけてきた多額のお金が水の泡となる。首尾よく歯科医師になれたとして、開業するとしたらさらに数千万円の投資が必要だ。

ある若手の勤務歯科医は「親などから診療所を受け継げるならまだしも、自力で開業した場合、その後何年で投資を回収できるものか。そもそも過当競争と言われる中で生き残れるのか」と悩みを打ち明ける。

歯科医師が絶対に必要な存在であることは疑う余地がないだろう。国民のわがままな願いとしては、数の問題はともかくとして、質は落としてほしくない。いや、むしろ上げてほしいところ。ただ、そのためには歯科医師がもっと魅力的な職業であると世間に認められるようになる必要がありそうだ。

■▼格差広がる歯学部の偏差値、上は60超から下は30台まで

■▼歯科医師が多い東京・徳島、比較的少ない滋賀・青森……

■▼同じ医療職でも医師とは大きな差がつく

(小澤 啓司 写真=時事通信フォト)

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