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金曜の夕方に来た"仕事依頼"は断っていい

プレジデントオンライン / 2019年4月5日 9時15分

サイボウズ代表取締役社長 青野慶久氏

残業時間を減らし、生産性を上げようと各社が取り組む「働き方改革」。改革で本当に働き方は変わったのか。今回は現場で働く管理職&若手社員の実態を調査した。彼らの抱える悩みに働き方改革の先達が回答する。

■若手の肩代わりをする管理職の皆さんへ

いま多くの企業が残業時間を削減する方向で動いています。すると残業規制のかかっている若手の仕事を管理職が肩代わりしなければならなくなり、大変だという声も聞こえてきます。これは仕事の量ややり方を変えずに、働く時間だけ減らしたことで起きている現象です。そもそもの働く時間が減っているのですから、仕事の量も減らすべきなんです。

仕事が減ると売り上げが減って困ると言うかもしれません。それなら仕事のやり方を変えればいい。ITをフル活用したり、無駄な業務をやめたりすればいいのです。

これまでサイボウズでは新しい取り組みを導入・検証してきました。その1つに、お客さんとの仕事のやり取りのルールを変えるというものがあります。

たとえば金曜日の夕方にお客さんから「今日中に見積もりを出してほしい」と連絡が来たとします。そこでやりますと言ってしまうと間違いなく残業になる。そこで、夕方遅い時間に来た依頼は断っていいよというルールにしたのです。もちろんお客さんにも「前の日までに依頼してくれれば、翌日、見積もりを出します」と伝えています。するとお客さんも「次は見積もりを早めに依頼します」と仕事のやり方を変えてくれるのです。とはいえ、それでも夕方になって見積もりを要求してくるお客さんがいます。それは断ってかまいません。もし断ってお客さんが離れてしまってもそのお客さんがライバル会社に流れてくれれば、ライバル会社が困るだけですから(笑)。

サイボウズでは帰社時間も若手、管理職関係なく、帰りたい人は帰ります。あえて「帰れ」とも言いません。残って仕事をするのも帰るのも自己判断。遅くまで仕事を続けるのは命じられたからではなく、自分がやりたいから。自分が好きで仕事を続けているうちは、それほど問題ないと思っています。いけないのは精神的にも肉体的にも追い込まれた状態で仕事を続けること。そのために本人が元気かどうかはチェックしています。

働き方改革のポイントは誰かが歯を食いしばって頑張る「我慢の文化」をやめること。特に、中間管理職である課長が頑張ってしまうので経営者が甘えるんです。若手を早く帰して自分に負担がくるようであれば課長も若手と一緒に帰ってしまえばいい。それで会社が回らないのは、何かがおかしいのですから。

■育休は推進。でも人員補充はなし

【悩み】化学・部長●河島さん(入社20年目)
最近チームメンバーが1人育児休暇に入ったのですが、会社から人員の補充がありませんでした。それでもチームの数値目標は変わらず、残ったメンバーの負担が増えてしまい大変そうです。
【回答】

育児休暇中の社員の仕事をチーム内だけで分担しようとするのが無理なんです。そんなときは社内全体に対して助けを求めてみたらどうでしょうか。「この仕事、誰も担当してくれる人がいません。誰か助けてください」と社内に呼びかけるのです。社員にはいろんなタイプがいて、穴埋めを求められたり、緊急の仕事を頼まれるのが好きな人がいます。求められると、それがモチベーションになり、いつも以上に頑張ってくれるタイプです。

もし、社内に誰も手を挙げてくれる人がいなければ社外へのアウトソースを検討してみる。いまは多種多様な仕事に対応してくれるアウトソーシングの会社やフリーランスで仕事を請けてくれる人たちがいます。新しいシステムやAI・ロボットに任せられないか検討するのもいいでしょう。

もしチーム内の仕事に生産性の低い仕事があればいっそやめてしまう選択もあります。仕事を減らせば売り上げが減ってしまうと心配するかもしれません。しかしグローバルで企業が競争している時代に、生産性の悪い仕事を続けていては勝ち残ることはできません。人員が減ったときこそ、生産性の低い仕事を切って、生産性の高い仕事にシフトするチャンスだとも言えます。

■早く帰っても、やることがありません

【悩み】流通・若手●川合さん(入社3年目)
会社全体でノー残業デーが設定されました。早く帰れるのはいいのですが、帰ってもアマゾンプライムで映画やドラマを見て時間が過ぎてしまいます。ほんとうはもう少し働いて残業代を稼ぎたいのですが。
【回答】

この悩みはかなり危険です。自由な時間が生まれたときやりたいことがないのは、人から指示されないと何に対しても興味が湧かないということだからです。この際、仕事や人生に真剣に向き合ってみてはどうでしょうか。自分がこの先どう生きていきたいのか、本当はどんな仕事をしたいのかを見つめ直してほしいと思います。たとえば、いま所属している会社の人事のスペシャリストになりたいと思えば、それに関する本を読んだり、講演会を聞きに行ったりと、時間ができたときにやりたいことがどんどん湧いてきます。

当社のように副業を解禁している会社であれば、できたばかりのベンチャーの人事業務を手伝うことだってできます。多くのベンチャーの立ち上げ期は管理部門が不足しているので大歓迎されるはずです。

そう簡単にやりたいことが見つからないという人もいるでしょう。そのときは自分とは仕事や業界の違う人の話を聞いてみる。学生時代の同級生に会うだけでも刺激になります。社会人3年目と言えば、一通り仕事がこなせるようになった時期でしょう。自分よりも仕事や人生にずっと真摯に向き合っている友人から何か気づきが得られるかもしれません。

■週報がなくなり部下が何しているのかわかりません

【悩み】化粧品・課長●森本さん(入社16年目)
仕事量を減らそうと、これまで提出必須だった週報がなくなりました。在宅勤務などで自由な働き方ができるのはいいのですが、部下が何をしているのか把握できず少し不安に感じます。
【回答】

会社の理念が部下ときちんと共有できていますか? なぜ会社に集うのか、それが組織の存在目的です。サイボウズの場合、「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念があります。そのためには多様な働き方をしたほうが効果的だと思っているのです。会社には企業理念に共感した人が集まっているから、上司の目がなくても理念の実現のために働きます。しかし企業理念に共感できない社員だと在宅勤務の制度を使って仕事をさぼるかもしれません。「給料がいい」「安定している」ことが入社理由だと、在宅勤務などの制度がうまく機能しないかもしれません。

多様な働き方を許容するうえで大切なのはウソをつかない風土をつくること。在宅勤務などでお互い顔が見えない状態で仕事をするわけですから、隠しごとをされると不信感を抱いてしまう。サイボウズはアホはいいけど、ウソはだめだという「公明正大」を大切にしています。勤務時間中であっても「いまから1時間副業をします」と宣言すればOK。始業時間に遅れて「二日酔いして寝坊しました」というのはアホだけど許されます。でもその理由を隠したら安心して一緒に働くことはできません。

■社員が働かなくなって、会社の将来が心配です

【悩み】保険・若手●長山さん(入社7年目)
出退勤の管理が厳しくなって休日の出勤ができなくなりました。仕事量は減ったのですが、自分の成長速度が遅くなったと感じています。会社としても厳しい局面が来たときに対応できるか心配です。
【回答】

会社にいないと成長できないというのはあまりに狭すぎる考え方です。会社から出てこそ貴重な経験ができ、それが仕事の糧になっていきます。私の場合もそうでした。子どもが生まれるまでは会社のなかが仕事の唯一のフィールドで、ソフトウエア事業のことしか知りませんでした。

子どもが生まれるといままで接したことのない世界にいやおうなく放り込まれます。子どもが熱を出せば病院に行くことになります。ときには看護師が泣きわめく子どもをうまくあやすのを見て、コミュニケーションの勉強になったりもします。私は子どもが生まれて妻と家事・育児を分担するようになってから子どもを取り巻く医療や教育、行政の事情に詳しくなり、問題や課題について人一倍語れるようになりました。そして、そういう問題や課題をビジネスの力で解決できないかとも考えるようになり、仕事に対する考えの幅がぐっと広がったのです。

会社にいなければ成長できないというのは幻想です。朝から晩までオフィスにいる人から面白いアイデアが出るはずがありません。イノベーションを問われる時代、会社の外に活動の場を広げたほうが新しい発想が生まれるはずです。

※相談者の名前は仮名です。

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青野慶久(あおの・よしひさ)
サイボウズ代表取締役社長
1971年、愛媛県生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年サイボウズを設立。2005年より現職。総務省、厚生労働省、経済産業省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを務める。

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(サイボウズ代表取締役社長 青野 慶久 構成=Top Communication 撮影=大槻純一)

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