"歯磨きが昔のまま"だと歯周病は治らない
プレジデントオンライン / 2019年5月2日 11時15分
■歯周病の原因は、歯周病菌だけではない
「歯周病の治療はむし歯とは違って、歯科医が削って詰めておしまいというものではありません。歯周病に特効薬はありませんし、患者が治療に参加しようという姿勢がないと治りません」と小西歯科医院の小西昭彦さんは言う。
歯周病というと、歯周病菌が引き起こす(細菌因子)と思いがちだが、偏食、、咀嚼(そしゃく)回数、喫煙などの生活習慣、がんばりすぎや経済状況・人間関係の激変などの精神的なストレス(宿主因子)も大きく関係していることがわかってきた。
また、歯周病の直接の原因ではないが、歯ぎしりや噛みしめなど歯や歯肉に過度の負担をかける「力の因子」も歯周病を進行させる要因なのである。
「とはいえ、歯周病を予防し、治療する、最も効果的な方法は、やはりブラッシングです。デンマークの歯周病学の教授の実験では、12人の学生を10日間ほど、歯磨きさせないでいると、全員に歯肉炎の発症が確認されました。そしてブラッシングを再開したところ2~3日で、もとの健康な歯肉に戻ったのです。プラーク(歯垢)は水や薬液洗浄では除去できません。歯ブラシでしっかり磨き落とす必要があります」(小西さん、以下同)
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プラーク内に繁殖する歯周病菌は、酸素を嫌う嫌気性菌である。歯周ポケットが深くなり、プラークが除去しにくい場合でも、突っ込み震わせ磨きで、歯周ポケット内をブラシでかき回し、空気を送り込むイメージでブラシを動かすのが効果的だ、と小西さんは言う。
「ブラッシングの原則は『痛くせず』『出血させない』です。ブラッシングのタイミングや回数にはこだわらなくてもいいのですが、理想は朝と晩にフォーンズ法、突っ込み震わせ磨きをそれぞれ5分ずつです」
1回5分は長いと感じるかもしれないが、入浴時、湯船に浸かっているときなどを利用するのもいいだろう。
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「痛くせず」「出血させない」のがブラッシングの原則。毛の柔らかな歯ブラシを使う。歯磨き剤は使わなくていい。歯肉に炎症がある場合は「突っ込み震わせ磨き」が有効。この場合、2列の歯ブラシが使いやすい。
【フォーンズ法】
上と下の前歯を噛み合わせ(イーという表情になる)、歯ブラシを直角に当て、大きな円を描くように歯と歯肉を磨く。裏側も歯だけでなく、歯肉や上あごも血行をよくするマッサージをしているつもりでゴシゴシと。力強く磨くために、歯ブラシはパームグリップ(5本の指で棒をつかむ要領)でしっかり握る。
【突っ込み震わせ磨き】
歯と歯の間に歯ブラシの毛先を45度の角度で押し当て、歯ブラシを1ミリくらいの細かい幅で水平に震動させる。ブラシを当てる場所は歯と歯肉の境目。歯を磨くというよりも、歯周ポケットに毛先を突っ込み(痛くない程度に)、歯周ポケット内をかき回し空気を送り込むイメージ。歯ブラシは鉛筆を持つようにつかむ。痛い、出血する場合は、歯ブラシを寝かせて磨く。
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■歯周病の治療にも効くブラッシング
「歯肉の腫れは、歯周病菌の侵入を防ぐ白血球を遊走させるために起こります。そのときに免疫システムの誤作動が起こると歯槽骨が溶けてしまいます。腫れている場合は、柔らかい毛先のブラシで痛くないように丁寧に磨いていると、数日で腫れが引いていきます。腫れが引くと、歯の根元が現れ、歯が長くなったようになるので不安になりますが、続けてしっかり磨いていれば健康な歯肉の形態を取り戻します」
プラークが石灰化した歯石は、歯周病の原因ではないが、歯石にはプラークが付着しやすいので、定期的に歯科医で取り除いてもらおう。
歯周病が進行すると、歯がグラグラと動揺し、最後は抜けてしまう。抜けてわかる歯のないもどかしさ。取り返しのつかなくなる前に、正しいブラッシングの習慣をぜひ身に付けたい。
1 歯肉は薄いピンク色/歯槽骨は上まである
2 プラーク/赤く腫れている/歯槽骨は上まである
3 プラーク/歯周ポケット/赤く腫れている/骨が少し溶けはじめている
4 プラーク/血や膿/歯周ポケット/歯から大きくはがれる/赤や赤紫色に腫れている/歯石/骨が溶ける
5 動揺/歯石/プラーク/血や膿/歯周ポケット/赤や赤紫色に腫れている/骨が少なくなっている
6 動揺が大きくなる/プラーク/常に膿が出ている/歯周ポケットの奥まで歯石/赤や赤紫色に腫れている/骨は歯を支える力を失っている
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1952年、東京都生まれ。日本歯科大学卒業。開業医院勤務を経て、85年から新宿に小西歯科医院を開業。自然に抜け落ちてしまう歯以外は別として、歯を抜かずに歯周病治療に取り組む。著書に『歯周病は怖くない』ほか。
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(フリー編集者 遠藤 成 写真=iStock.com)
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