なぜ日本は女性管理職が全然増えないのか
プレジデントオンライン / 2019年3月29日 6時15分
■クオータ制が働き方を変える!?
2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されますが、現在の日本の女性の労働環境は決して望みどおりとはいかないようです。
プレジデント ウーマン誌17年5月号で、一般女性社員&現役管理職女性569人にアンケートをとったところ、6割が管理職に「なりたい」「なりたかった」と回答しています。にもかかわらず、現在、全国の企業で女性管理職の割合は平均7.2%、役員は平均9.7%、女性管理職がいない企業は48.4%にものぼっています。また「女性管理職30%以上」を達成できている企業に至っては、わずか6.8%(18年、帝国データバンク調べ)。
女性が働きやすい環境をつくるには、各部署の責任者クラスに多数の女性がいることが不可欠ですが、ここまで男まみれでは、女性の働き方改革など進むはずがありません。ただ、望みはあります。政府の後押しがある今なら、何かを見つけられるはずです。
「働く女性にとってベストな国」ランキング(17年)で、堂々世界1位のアイスランドは、その歴史を見ると「女性が声を上げること」で、世の中を変えてきています。1975年には働く女性の9割が「仕事・家事・育児のストライキ」を敢行し、男性たちに女性の役割の重要性を認識させました。また2016年には男女の賃金格差をなくすために「女性の労働時間3割減を求めるストライキ」を行っています。
こうした運動の成果として社会の人数比に合わせて、議員や管理職の一定割合を女性にする“クオータ制”を達成しました。日本の女性に意識してほしいのが、このクオータ制です。女性の管理職・役員を一気に増やす魔法のルートだからです。
ノルウェーでは、すでにクオータ制導入により、上場企業の役員は40%以上を女性とすることが、制度化されています。今や世界の先進国の集まりであるOECD(経済協力開発機構)36カ国の中で、クオータ制を採用していない国は4カ国だけ。その中に日本も含まれます。ただし、この制度、男性にはイヤな制度です。男女比が整うまでの間、一時的に男性の枠が減り、女性の枠ばかり増えますから。「ラクして管理職になりやがって不公平だ!」という声は必ず上がります。しかしクオータ制はポジティブ・アクション(積極的是正措置)の一種、つまり「過去の差別を是正するための、一時的な逆差別」ですから、どこかの世代が割を食わない限り、是正できません。諦めてもらいましょう。
また女性からも「タナボタで出世するなんてイヤ」「能力が未熟なままで管理職に上げられても自信がない」という声が出ますが、民主主義の意思決定では「数が多い」ことが重要です。女性の労働環境を本気でよくしたいなら、まず引き受け、多数決で要求を通すための頭数になることも大切なのです。
■政治参加が制度実現の近道
そして、クオータ制の法制化実現のためには、女性の政治参加が不可欠です。つまり、まず女性のための圧力団体をつくる→ゆくゆくは女性だけの政党にする→その政党の働きで、議員・管理職へのクオータ制適用を法制化する、という流れです。ただし、政策実現を真剣にめざして政治参加をするなら、過激になりすぎない、国民目線から浮かない、要求しすぎないなど、注意点はいろいろあります。
スウェーデンでは05年に世界初の女性のための政党「フェミニスト・イニシアティブ」が設立されましたが、主張・活動ともに過激になりすぎて、なかなか議席が取れず、苦戦しています。その教訓を生かすなら、働きかけは「穏やかで、共感できる、ささやかな要求」がいいでしょう。
「世の中を変える」ことは確かに大事ですが、それはあくまで「ゴール」。本気で変えたければ、小さなことから始めて、まずは社会に受け入れられましょう。心配しなくてもクオータ制の法制化は、想像以上に社会を変えてくれるはずです。
そのための第一歩は、女性が“必ず”選挙の投票に行くことです。女性有権者が全員投票に行けば、世の中は必ず変わります。行動あるのみです。
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代々木ゼミナール公民科講師
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。経済史や経済学説に関する著書はベストセラーに。
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(代々木ゼミナール公民科講師 蔭山 克秀 イラスト=おぐらきょうこ 写真=iStock.com)
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