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人間は本質的に"マルチタスク"はできない

プレジデントオンライン / 2019年5月9日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ridofranz)

■ごく短い期間の集中力は上がるが、脳にダメージ

一点集中とマルチタスク、どちらのほうが仕事の効率は上がるのか。脳神経科学者として、迷わず「一点集中」と答えます。

脳はマルチタスクが苦手で、「人間は本質的にマルチタスクはできない」といったほうがいいくらいなのです。例えばA・B・Cという3つの活動を、脳は厳密な意味で同時に進めることはできません。このようなマルチタスクをすると、いや正確にはマルチタスクをしていると思いこんだ行動をしていると、脳内でストレスホルモンのコルチゾールが増えていきます。

ごく短い期間の集中力は上がるのですが、この状態が続くと脳へダメージを与え、機能が落ちてきたり、脳細胞が死滅したりしてしまいます。これは、うつ病のリスクを増大させたり、新しい記憶がつくられにくくなったりと、認知症のような症状に繋がることが知られているものです。

■「歩きスマホはNG」のもう1つの理由

マルチタスクは一見効率がよく思えますし、ビジネスの現場でもデキる人に見えそうです。しかし、いくつかの仕事を同時並行でこなさなければいけないときには、1つの仕事に集中して、ほぼ終わらせてから次の仕事に移るというように、「一点集中」を何回か繋げていくほうが効率がいいことが明らかになっています。

わかりやすい例が、歩きスマホです。道を歩くという行為は、それだけで、動く、人や障害物を見る、避ける、という高度な情報処理を要します。さらにメールを打つ、SNSでやりとりするといったスマホを使う行為を同時に行うと、どちらも効率が著しく低下してしまうのです。

■「A・B・C同時」よりも、「一点集中×3」が重要

忙しいときは歩きながらメールチェックをしたくなるものですが、結論をいえば、打ち終わってから歩いたほうが早く駅につく。転倒や事故のリスクも考えると、なおさら歩きスマホは効率がいいとはいえません。

マルチタスクがストレスになりやすいのはデジタル機器を駆使しているとき。家事などでも複数のことを同時並行で進めますが、脳への影響を考えると、スマホなどのデジタル機器を使って進めるマルチタスクのほうが、受けるストレスは格段に大きくなっていきます。さらに、このようなマルチタスクは常態化しやすいことも特徴です。

マルチタスクでは、AからBへ、BからCへと行ったりきたりすることも、効率が悪い。まずAという活動を止めるのにエネルギーが必要ですし、AからBへと切り替える時間、アイドリングのタイムロスも生まれます。BからCに行くか、Aに戻るかという判断にも脳はリソースを割かないとなりません。そして、切り替えが頻繁になるほど、ストレスホルモンの分泌は増えていきます。

一方で、複雑な社会活動は脳を鍛える効果もあることから、必要なのは、いわば戦略的なマルチタスク。つまりA・B・Cを同時に進めるのではなく、いかに「一点集中×3」で終わらせるかが重要なのです。いかに一点集中で1つずつ仕事を片付けていくかの計画をたて、労力を割り当てる。プロジェクトの段取りをつけることなどは、より戦略的なマルチタスクといえるでしょう。

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枝川義邦
脳神経科学者
早稲田大学研究戦略センター教授。東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。早稲田大学ビジネススクールでMBA取得。

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(脳神経科学者 枝川 義邦 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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