ネット上の"悪評"を削除するための条件

プレジデントオンライン / 2019年5月17日 9時15分

■「ブラック企業だ」は、削除が難しい

転職活動のとき、口コミサイトやSNSで会社の評判を確かめる人は多いだろう。転職希望者にとっては貴重な情報源だが、企業側は神経質にならざるをえない。「ここはブラック企業です」などと書かれれば、採用に支障が出るおそれもある。ネット上に悪評を書かれたら、書き込みを削除することはできるだろうか。

まずサイト運営者への削除依頼をすることになるが、インターネットトラブルを多く手がける刈谷龍太弁護士は「サイトによって対応に温度差がある」と明かす。

「私の経験でいうと、上場企業が運営するサイトほど消すのは難しい。簡単に削除すると、逆に書き込んだ本人から『表現の自由を侵害された』と損害賠償を請求されるリスクがあるので、慎重姿勢なのです」

サイト運営者が削除に応じなければ、裁判所に削除の仮処分を申し立てる。裁判所は、書き込みによって何らかの権利侵害が起きていれば仮処分の決定を下す。具体的には、名誉毀損に当たるかどうか。法人にも名誉権があり、書き込みによって社会的評価が傷つけば名誉毀損になりうる。

ただし、会社の評判を貶める書き込みなら何でも名誉毀損になるわけではない。重要なのは、「事実の摘示」(客観的な事実を示すこと)があるかどうかだ。

「『あの会社はブラック企業』は単なる評価であり、表現の自由として認められやすい。『毎日夜11時まで残業させられる』というように、具体的な事実を示してはじめて名誉毀損が成立します」

■削除の仮処分まで、約1カ月かかる

名誉毀損にならないケースはほかにもある。たとえ書き込みで社会的評価が低下しても、示された事実に公共性があり、公益目的で書き込まれ、真実性の証明ができれば、名誉毀損にならない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/MicroStockHub)

労働環境に関する情報は公共性があり、それを書き込むのも公益目的といえる。企業側が争うとしたら、残る1つの真実性。デマかどうかが、仮処分の鍵になる。

じつは、この点は企業側に有利だ。

「争う相手はサイト運営者ですが、書き込んだ本人ではないため、そもそも内容が真実かどうかわからず、効果的な反論が難しい。企業側がタイムカード記録などの証拠を示せば、仮処分が認められるケースが多いです」

仮処分というお墨付きがあれば、慎重姿勢だったサイト運営者も削除に応じる。

「最初に削除依頼をしてから仮処分まで、1カ月前後は見ておいたほうがいいでしょう。その間、不当な書き込みが放置されるのは困るという会社があるかもしれません。その場合は、サイト運営者への削除依頼と、裁判所への仮処分申し立てを同時進行でやる方法もあります」

ネット上の情報は拡散が早い。広がって削除依頼が追いつかなくなる前に、素早く対処したいところだ。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 刈谷龍太 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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