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"令和元年"での解散を狙う安倍首相の執念

プレジデントオンライン / 2019年4月1日 12時45分

新元号「令和」を発表する菅義偉官房長官=2019年4月1日午前、首相官邸

5月からの新しい元号は「令和」と決まった。そんな中、安倍晋三首相の周辺から新しい政治カレンダーが聞こえてきた。今夏の参院選後、秋までに衆院を解散するという内容だ。今月には統一地方選もある。主要3選挙を「令和元年」に集中させる狙いとは――。

■衆参同日選は「99%ないとはいえる」

政界では昨年末ごろから、今年7月の参院選にあわせて衆院を解散して衆参同日選が行われるという観測があった。当時は、安倍氏とプーチン・ロシア大統領による北方領土交渉が進展する期待が高まっていた。その成果を前面に掲げて同日選に持ち込めば両院で圧勝し、悲願である憲法改正につなげることができるという読みが安倍氏周辺にあったのだ。

しかし、その機運は少ししぼんだようだ。菅義偉官房長官は3月31日に放送されたラジオ日本の番組で同日選の可能性に触れ「それはない。解散権は首相の専権事項なので100%とはいえないが99%ないとはいえるかもしれない」と語っている。

「解散のタイミングと公定歩合についてはウソをついてもいい」という政治の世界。仮に「100%ない」と言っても鵜呑みにするわけにはいかないが、安倍氏は同日選を選択肢から外そうとし始めているのは事実のようだ。実際、菅氏はラジオ番組で司会者から2017年の衆院解散前の政治情勢との違いを聞かれ「当時と今は違うような気がする」と語っている。

同日選が遠のいている理由は3つある。1つは日ロ間の領土交渉が当初の思惑通り進まず、行き詰まっていること。2つ目は、連立のパートナーである公明党が同日選に強い拒否反応を示していること。

そして3つ目が1番大きな理由なのだが、これは少し後に紹介したい。

■同日選で勝っても「無駄な勝利」になるワケ

今年に入ってから安倍氏の4選論が出ている。この経緯については3月14日にアップした「『80歳の古だぬき』二階氏が権力もつ理由」、3月22日の「安倍首相が『2024年まで続投』を拒むワケ」でも詳報しているのでそちらを参照いただきたい。

要点だけ紹介すると、①安倍氏は4選に意欲を持っている、②しかし二階俊博自民党幹事長がぶち上げた4選論に対し、国民は強い違和感を持った、③このため安倍氏はいったん4選論を封印し、沈静化してから可能性を探ることにした――ということになる。

つまり冷却期間を置いたうえで4選シナリオを再構築するということになる。同日選の見送りは、この4選をにらんだ戦術転換と密接に関係がある。

政権の安定的な運営や、憲法改正に向けて改憲勢力の3分の2確保ということを考えると同日選の方が有効だ。そして当初のもくろみでは歴史的大勝に導けば4選論の台頭も期待できるとみられていた。しかし、戦術転換によって7月はまだ「冷却期間」に。勝っても4選論は封印しなければならない。言い換えれば、同日選で勝っても4選につながらない「無駄な勝利」になる。これが同日選を行わない3番目の理由だ。

従って、参院選で勝利を収めてから「冷却期間」を置き、その後の衆院選で勝利してから4選への道を再び歩み始めるということになる。

■秋の衆院選で「連勝」して、安倍4選待望論を待つ

それでは「冷却期間」はどれぐらい考えればいいのだろうか。

今の自民党の党則では総裁は連続3期9年までしか認められていない。4選を目指すには党則を変えなければならない。党則の変更は毎年初頭に行われる党大会で行うのが通例だ。

今回の場合、2021年の9月に行われる総裁選のルールを変えるのだから同年の党大会では遅すぎる。前年の20年の党大会で変える必要があるだろう。そのためには、さらに前年の19年、つまり今年の秋から暮れごろには党内の議論が始まらなければ手遅れになる。

このスケジュールを念頭に置けば、ことし7月に参院選、秋に衆院選を行い「連勝」することで、安倍4選待望論を待つというシナリオが浮かび上がってくるのだ。自民党幹部は、こう打ち明ける。

「秋から暮れにかけての衆院選なら、参院選から3カ月以上あくので公明党も容認だ。10月に消費税が10%に上がるが、それを差し引いて余りある対策をとってあるのでダメージは少ないだろう」

■首相周辺は「安倍1強」が続くことに疑いがない

もし7月の衆院選に続き、秋から暮れにかけて衆院選が行われるとなると令和元年は選挙イヤーとなる。平成の終わりに行われる統一地方選もあわせると今年は主要3選挙すべてが行われることになる。そうなれば中曽根内閣の時の1983年以来、36年ぶりのことだ。

ここまで読んで気づいた人も多いと思うが、安倍氏や自民党幹部たちは、一連の政治日程で「負ける」ということは全く想定していないことが分かる。参院選、衆院選のどちらかで大敗することになれば、安倍氏は4選どころか、3期目の任期満了を待たずに退陣を求められることもある。

平成がおわり令和になっても「安倍1強」が続くことに疑いがないのだろう。確かに結集が進まない野党の現状をみていると、その自信も分からないではない。

■安倍政権にとって不都合な「改元ジンクス」

安倍政権にとっては縁起の悪い過去のデータを最後に紹介しておきたい。元号が変わると、短期間で首相が交代するというジンクスがあるのだ。

1989年、元号は昭和から平成になったが、この年に竹下登首相は退陣。その後を襲った宇野宗佑内閣も超短命になって海部俊樹内閣が誕生したことは記憶に新しい。

大正から昭和になったのは1926年暮れ。それから4カ月たらずの27年4月に当時の若槻礼次郎首相が退陣している。そして明治から大正になった12年には西園寺公望首相が辞任している。全く偶然ではあろうが、元号が変わると国民の意識が変わる。政治の空気も変わる可能性があることは心しておくべきだろう。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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