家族で同じ歯磨き粉の使用がNGなワケ
プレジデントオンライン / 2019年4月21日 11時15分
■家族で歯磨き粉の使い回しはNG
オーラルケアとは、歯ブラシなどの道具を使って、歯や口の中を清潔に保つよう手入れをすること。その一番の目的は、歯周病やむし歯の原因になる歯垢の除去だ。歯垢はプラークとも呼ばれ、食べかすの中で細菌が繁殖したネバネバの物質。歯ブラシなどで物理的に除去するしかない。歯科衛生士の内田佳代さんは「上手に歯磨きをすることが第一ですが、グッズの活用で補ってほしい。それでも取れないところは必ず残るので、3カ月に1回程度は歯科医院でクリーニングを」と話す。
その内田さんが「クリーニングをしてもらった後の状態を長持ちさせる」と勧める歯磨き粉がサンギの「アパガードリナメル」だ。歯の表面のツルツル感を保ち、着色もしにくくなるのでホワイトニングの効果もある。
「天然由来の成分のため、飲み込んでも問題なく、水が使えない災害時にも使える」のは、オーラルピースの「クリーン&モイスチュア」だ。口の中が潤うので、唾液の分泌が減って口の中が乾くドライマウスの人にもよい。
むし歯になりやすい人や子どもには、フッ素の含有量が多い歯磨き粉を選びたい。以前は、歯磨き粉に含まれるフッ素の濃度は1000ppmまでとされていたが、2017年にこの上限が1500ppmに変更された。ライオン歯科材「チェックアップスタンダード 1450F」は、フッ素の含有量が1450ppmと、一般的な歯磨き粉よりも多い。
冷たい飲食物などで歯がしみる知覚過敏の人には、ライオン歯科材「DENT.Systema センシティブ SoftPaste」のように、研磨剤が少なく、刺激を抑える硝酸カリウムなどの成分が入っているものがお勧めだ。即効性はないが、使い続けると効果がある。
歯磨き粉選びで気を付けてほしいのは「目的に応じて、人により使い分けること」。「たとえば子どもと大人では歯磨きの目的が違う。大人は歯周病予防、子どもはむし歯予防を考え、目的に合ったものを選んで」と内田さんは話す。
歯周病やむし歯は、菌が原因で起こる感染症。特に小さい子どもがいる家庭の場合は、「親の口内に強力な菌がいれば、子どもにもその菌がうつる。口移しで食べさせたりしなくても、キスなどのスキンシップなどでも感染する。子どもの歯のことを考えるなら、まずは両親が口の中をきれいにしてほしい」と語る。
■歯間掃除は必須、理想は1日1回
歯ブラシについては、一概に「これがいい」と言うのは難しい。選ぶ基準は、「その人の歯磨き技術による」からだ。磨き残しが多い人は、大きめのヘッドのもの、口が小さい人は、小回りの利く小さいヘッドのものが向く。
クラプロックスの「5460ウルトラソフト歯ブラシ」は、一般的な歯ブラシの毛が1000本程度なのに対して、5460本もあり密集している。また、歯ブラシは、歯や歯ぐきに45度の角度で当てるのが一番効率よく歯垢が取れ、歯周病予防によいとされているが、クラプロックスは柄が八角形になっていて、持つと自然に45度の傾きになる。通常、歯ブラシは1カ月程度で交換が必要になるのに対し、3カ月程度と長持ちする点もポイントだ。
歯磨きが苦手で、きれいに磨けない人は、電動歯ブラシを使うのもよい。なかでも「音波式ブラシがお勧め」と内田さん。「磨いた後の歯のツルツル感が全然違い、短時間で効率よくきれいになる」と話す。電動歯ブラシを使う場合は、歯磨き粉は研磨剤が入っていない、液体やジェル状のものを選ぼう。
しかし電動歯ブラシは、力を入れて磨く人にはあまりお勧めできない。「磨きすぎて歯の表面が削れ、しみてしまう人もいます」(内田さん)。そうなると、むし歯と同じで、埋めたり詰めたりして治療するしかない。
電動に限らず、手動でも磨きすぎの人はみられるという。「正しい磨き方なら、磨く回数が多くても問題ない。問題は回数よりも、磨く力。強く磨くと、歯がすり減ってしまうので注意が必要」と内田さん。磨く力が強い人には、歯ブラシを鉛筆の持ち方で、できるだけヘッドから遠いところを軽く持つよう指導するという。
歯ブラシによる歯磨きだけだと、6割程度の汚れしか取れない。「必ずやってほしい」と内田さんが強調するのが、歯の間の掃除だ。「フロスか歯間ブラシ、どちらでもいい。理想は1日1回だが、最低3日に1度は使ってほしい」と言う。歯垢は、ついてから3、4日後から毒素を出し始める。また、粘着性が出てきてどんどん取りにくくなるため、毎日のケアが欠かせない。
フロスは、持ち手のない糸状のものが一番コストパフォーマンスがよい。しかし、上手に使うにはコツがいる。初めて使う人は、ライオン歯科材「DENT.EXウルトラフロス」のようなY字型のものや、ユニークなヌンチャク型の、「ガムチャックス」などがよいだろう。
歯間ブラシの初心者で、歯と歯の狭いすき間にブラシを入れるのが難しいという人は、テぺの「イージーピック」のようなシリコンでコーティングされた柔らかいものから慣れていくとよい。歯間ブラシにはさまざまなサイズがあるが、大きすぎると歯や歯ぐきを傷めてしまう。歯と歯の間に無理なく入る小さめのものを選ぼう。歯科衛生士に見てもらい、自分に適したサイズを選ぶのがベストだ。
■最大の敵は、間違えたセルフケア
歯ぐきが炎症を起こし、ひどくなると歯を支える土台の骨が溶けて歯が抜けてしまうのが歯周病だ。思春期ごろから感染が始まり、30代の80%が罹患しているといわれている。歯周病予防にお勧めのうがい薬がウエルテックの「コンクールF」。海外製品にはよく使われている、歯周病予防に効果のあるクロルヘキシジンという成分が入っている。「日本で売られている製品では、この成分が入ったものは少ない」(内田さん)。一方サンスターの「バトラーF洗口液0.1%」は、むし歯予防効果のあるフッ素が配合されているので、子どもにもお勧めだ。
口の中が乾くと細菌が増えやすくなる。「歯周病菌やむし歯菌の増殖を抑制する効果もある唾液を出すためには、よく噛んだり、歌ったりしゃべったりして、口もと(もしくは、口まわりの筋肉)をよく動かすことが重要」(内田さん)。
舌の体操をしたり、ガムを噛んだりするのも効果的だ。キシリトール入りのガムなら、むし歯予防にもなる。店頭で売られているものの中には、キシリトール以外の甘味料が入っているものもある。オーラルケアの「歯科専用キシリトールガム」のように、キシリトール100%のものがお勧めだ。
さまざまなオーラルケア用品が売られているが、歯科医院で歯科衛生士が使うようなとがった器具を使って自分で歯石を取ろうとしたり、メラミンスポンジなどで歯の着色汚れを落としたりするのは、「絶対にやめて」と内田さんは強調する。「歯の表面のエナメル質は硬いけれど傷はつく。削れた歯をもとに戻すことはできません」
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歯科衛生士
ETERNALSMILE取締役。東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒。全国の歯科衛生士の教育に携わる。表情筋トレーナーとしても活動。
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■▼歯磨き粉 家族で共用はNG、目的に合わせてマイベストを選べ!
※実勢価格は編集部調べ。一部、歯科医院専売品あり。
(ライター 大井 明子 構成=大井明子 写真=岡村隆広、向井 渉、iStock.com)
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