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中目黒の高級スタバは"まるでディズニー"

プレジデントオンライン / 2019年4月5日 9時15分

写真提供=スターバックス

2月28日、東京・中目黒に日本初の特別なスターバックスがオープンした。飲み物は他店にない限定商品が多く、1杯1000円超も珍しくない。店舗を訪れたコラムニストの辛酸なめ子さんは「意識高い系の人が多いと予想しましたが、実際はふだんディズニーランドに行き慣れている人向きだとわかりました」という――。

■中目黒の高級スタバの客をウオッチング

東京・中目黒はただでさえ3店舗もスタバがあるおしゃれタウンですが、2月28日、目黒川沿いに焙煎工場を併設した高級な新店舗「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」がオープンしました。まだ世界に5店舗しかなく、日本ではここが初めてだそうです。

さぞ、意識が高い人々が集まるのだろうと思い、意識のヴァイブスに身を投じるべく、アップル製品の仕事道具を持って中目黒に向かいました。

お店の情報を調べたらかなり混んでいるようなので、朝9時すぎに現地に到着。中目黒駅から徒歩で10分強です。取材時の3月下旬は、川沿いに桜が咲き始めていて(取材時)、楽しく歩けました。しばらくすると、ホテルかと思うほどの巨大な建物が目の前に現れます。

新国立競技場の設計をしたことも出知られる建築家・隈研吾氏による、木とガラスが絶妙に融合した4階建て。外側から大きな焙煎マシンも見えます。生豆からコーヒー豆ができるという流れをライブ感覚で眺めつつ、その豆を使ったオリジナルドリンクが味わえる、ふつうのスタバとは全然違う体験型のスタバです。最近、ハンドトリップが売りのサードウェーブコーヒーに押され気味だったスタバのプライドをかけた逆襲でしょうか。

■「ここで仕事をしようという意気込みは場違い」

この特別なスタバに入るためには、まずは整理券をもらう必要があります。

なんと隣に建つ別会社の1階に、整理券交付マシン用のスペースを借りていて、そこで発券します。整理券にはQRコードが書かれていて、スマホで読み込むと入場予定時間がわかる仕組みです。万全な管理体制にスタバの財力を実感します。

朝早めに着いたので、入場までの待ち時間は数十分。「意外と楽勝だった、あとは中でゆっくり仕事できるかも……」と余裕の足取りで店内へ。

しかし、一歩足を踏み入れて、それはまったくの誤算であったと知りました。また、ここで仕事しよう、という意気込みも場違いであったかもしれません。

■1階から4階まで、どのフロアも長蛇の列

席を取ろうとしてもだいたい埋まっているのです。1階から4階までくまなく探して3階にやっと空席を発見。ドリンクやフードを買いに行こうと下に降りたら、それぞれのカウンターが長蛇の列であることに気付きました。

1階には、コーヒーやスイーツなどが買える「メイン・バー」と、多数のパンを取りそろえるベーカリー「プリンチ」があります。時折聞こえる「ザーッ」という豆の音が、金貨の音に聞こえてくる、景気の良い空間です。

写真提供=スターバックス

ほかにも、4階の吹き抜けまでそびえ立つ焙煎設備「カッパーキャスク」や、世界各地からの豆が集まるスペース「グリーンゴーンローディングステーション」、時々豆が運ばれていく天井のパイプなど、コーヒー好きにとって見どころはたくさんありますが、悠長に眺めている暇はなく、とりあえず並んで飲食物をGetしなければなりません。

店内ではドリンクの列に並ぶのをあきらめたらしい外国人ファミリーが、店内で買ったサンドウィッチと禁断の持ち込みペッドボトル飲料を摂取していました……。

■1000円超メニューにひるみ、気づいたら2時間経過

私はまずは「メイン・バー」に並んでドリンクを注文。どれも1000円くらいするのに一瞬ひるみましたが、ここまで来たので頼まないわけにはいきません。この新店舗「ロースタリー」のオリジナルのラインナップには、レモン果汁をコールドブリューコーヒーに絞った「カスカラ レモンサワー」や、コーヒーとビーフジャーキーをマリアージュさせた「ペッパーナイトロ with ジャーキーツイスト」など冒険的なメニューがあっておもしろいです。

シナモンが香るフォームを乗せたエスプレッソ「アイス マキアート コン クレマ」をオーダー。通常のスタバ以上に注文が難しいですが、店員さんは「グアテマラ ラ エスメラルダファーム(コーヒー豆が生産された農園)ですね」と完璧によどみなく暗記していてさすがでした。

ドリンクを購入したあと、2階にも「ティバーナバー&ティーアクセサリー」というティーベースの魅力的なドリンクコーナーがあることを知りましたが、そこも結構並んでいるので、1階のパンが売られているカウンターへ。

並んでいる間、さきほど買ったドリンクは3階の自分がキープした席に置きっぱなしですが……安全な日本なので性善説を信じたいです。パンのサラダ的な1000円弱のフードなど購入し、気付いたら入場から2時間弱たっていました。

■上へ下へとかけずり回り体力消耗「ここはテーマパーク」

上へ下へとかけずり回り、長時間並んで、頼んだものができたら呼び出され、体力を消耗。「ここはテーマパークだから」と並んでいる女性の声が聞こえて納得(スターバックスコーヒージャパンのCEOもここを「コーヒーのワンダーランドにしていきたい」と話しているそうです)。というわけで、テーマパークでは仕事している場合ではないことを思い知りました。

この「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」で効率よく動ける人は、意識高い系の人ではなく、ふだんディズニーランドとかに行き慣れている人だと思われます。攻略テクは、体調がよく体力気力が充実している時に行くこと。そして複数人で行って、ドリンクに並ぶ人とフードに並ぶ人の二手にわかれるのがいいと思います。

ところで結局のところ、店内に意識高い系の客はいるのでしょうか。

整理券をもらって中で並ぶという関門を経て、それでも4階のテーブル席でマックを広げて仕事している猛者を見かけましたが、どこかアウェイ感が漂います。3階の席に戻ったら、隣の席で果敢にも打ち合わせしているスーツ姿の男性2人がいました。やっと席に座れてコーヒーを堪能しようと思ったら仕事トークが耳に入ってきて落ち着けませんでした。

イラスト=辛酸なめ子

しかし、テーマパークで疲れた体にコーヒーの味がしみて、通常のスタバの何十倍もおいしく感じられました。

(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子 イラスト=辛酸なめ子 写真提供=スターバックス)

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