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歯治療の恐怖心軽減する“笑気ガス”体験

プレジデントオンライン / 2019年4月26日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/RossHelen)

恐怖を弛緩させるという笑気ガスで、歯医者嫌いは克服できるのか。歯医者嫌いのライターが体当たりで体験!

■怖い、もうヤダ……早くおウチに帰りたい

いくつになっても歯医者に行くのは気が重い。世間にはそういった人が少なからずいると思う。かく言う私もそのひとりだ。

不気味なドリル音。それによってもたらされる、神経にさわるような痛み。脳を揺さぶるような震動。そんな幼少期に受けた虫歯治療の苦痛がトラウマとなり、43歳になった今でも歯医者にビビりまくっている。お恥ずかしい話だが、歯石のクリーニングさえ二の足を踏んでいる。

しかしこれ、単におじさんの情けない話というだけでは済まされない。歯医者に行く足が遠のくということは、歯周病予防の観点からも非常に不都合である。

一部の歯医者では患者の恐怖心を軽減させるため“笑気ガス”という特殊なガスを用いている、と聞いたときは光明を見た気がした。

笑気ガス。いつぞやアメリカの古いコメディ映画で、そのガスを吸った人間がケタケタと笑っているシーンを見た記憶があるが、本来は医療の世界で広く使われているクラシカルな麻酔だという。

ちなみに笑気ガスには、一種の危険ドラッグとして世界中の若者が乱用してきた一面もあり、日本では2016年に指定薬物の仲間入りを果たしている。換言すれば、それほど効果は高いと思えるが、実際のところはどうなのか。

いざ体験すべく、治療時に笑気ガスを併用しているクリニックをネットで探し、歯石のクリーニングを予約。「歯医者が怖いので、施術の際に笑気ガスを使ってほしい」と伝えたところ、リクエストは快諾された。

予約当日、やや緊張気味にクリニックへ。診察室に通され、施術台に座ると、先生がガスマスクのような吸引具を私の鼻に取り付け始めた。どうやらここから笑気ガスが放出されるらしい。それにしてもこの物々しさ。緊張がさらに高まっていく。

「では笑気ガスを流しますね。鼻から深く吸い込んで、深呼吸の要領で何度も繰り返してください」

合図と同時に吸引具から冷たい気体が鼻へ流れ込んでくるのがわかった。ニオイはない。完全なる無臭だ。スーハー、スーハー。

■とにかく何か、心地のいい感覚なのは確かだ

まもなく変化が訪れた。まず頭がぼんやりとしてきた。あるいは軽い眠気と表現してもいいかもしれない。とにかく何か、心地のいい感覚なのは確かだ。

しかし私が驚いたのはそこではない。いつも診察室へ呼ばれた瞬間から始まる胸のドキドキが、いつの間にかピタリと止まっていたのだ。先生が尖った器具でグリグリ突いてこようとも、電動器具が鋭いノイズを上げようとも、まったくのリラックス状態に。夜ご飯は何を食べようか、そんなことを考える余裕すらあった。痛みを拒絶するあまり、その痛みを集中して味わってしまう今までの自分にはありえなかったことだ。

鎮痛効果はイマイチのようで、歯石の除去にはチクチクとした痛みが伴っていた。しかし笑気ガスのおかげか、受けた痛みが恐怖を増幅させ、またいつ来るかわからない痛みにおびえる……という、いつもの負のスパイラルに陥ることはなかった。

そんなことを考えていたら、いつの間にか歯石の除去は終わっていた。時計を見ると、なんと30分が経過していた。今までの30分は2時間にも3時間にも思えたものだが、今日の30分は体感では20分か、それよりも短いような気がした。

以上が、笑気ガスの効果についての感想だ。施術中の心境を克明に描写できたことからもわかるように、ガスが効いている間、私の意識は明確そのものだった。

事実、頭はぼんやりしつつも、先生との会話にまったく支障はなく、「笑気ガスってすごいですね。こんなに安心した気分で歯医者さんにいるなんて初めてですよ」などと軽口を叩けるほどだったのだ。

笑気ガスは効果の消失も早い。吸入を止めて10分もすれば、車の運転も可能。効果バツグンで使い勝手もよし。歯医者が苦手という人には、これほど心強いものはないのでは。うれしいことに、笑気ガスはほとんどのケースで保険が適用され、40分810円ほどで利用できるという。

▼歯医者から見た「怯える患者さんの持つトラウマ」
希望患者は、年に2~3人

歯医者嫌いには一筋の光明ともいえる笑気ガスを、歯科医師はどう見ているのか。

「笑気ガスを希望する患者さんはあまり多くありません。私のところでは年に2~3人です」

そう笑いながら語るのは、東京・野方にある“あそう歯科クリニック”院長の麻生高志氏。

「こちらから笑気ガスを積極的に勧めることはありませんが、歯の治療にトラウマを抱えてそうだ、と感じた患者さんに笑気ガスを勧めることはあります」

使用時にはガスが漏れるため、機械による排気を徹底しても週におよそ8時間の使用が限界となることも、積極的に周知をしない理由だという。

「ガスを使わず患者さんを怖がらせないような努力をしています。たとえば麻酔薬を人肌に温めたり、表面麻酔を塗ってから極細の注射針を使ったり、痛みを感じない工夫をしています」

笑気ガスの安全性は相当に高いというが、使わずに済むならそれに越したことはないと語る。

「ですが歯医者が苦痛になってしまうと、虫歯や歯周病が進行してしまい、健康も損なわれます。治療に抵抗がある場合は、お気軽にご相談ください」

(富士 弥勒 撮影・協力=あそう歯科クリニック)

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