公明党が"創価学会員"から批判される理由
プレジデントオンライン / 2019年4月15日 15時15分
■1970年代には公明党の理念が消滅していた
公明党が揺れている。
今春の統一地方選最大の目玉となった大阪府知事・市長選挙は、これまで大阪維新の会と協調関係にあった大阪公明党が、維新の悲願「大阪都構想」に関し難色を見せ始め、松井一郎前府知事(維新代表)らと決裂した結果引き起こされたもの。東京都政でも公明党はこれまで小池百合子都知事率いる「都民ファーストの会」と協力関係にあったが、最近は小池都政に対し「是々非々」を標榜。マスコミに「距離ができ始めている」などとも書かれる。
身内からの反発も目立ってきた。2018年9月の沖縄県知事選で、公明党は自民党が擁立した佐喜眞淳候補を全面支援したが、対立候補の玉城デニー氏に惨敗。関係者に衝撃を与えたのは、公明党支持者の3割近くが玉城氏に投票していたという、マスコミ各社の出口調査結果であった。
実際に選挙中、玉城陣営には公明党の母体である宗教団体・創価学会のシンボル「三色旗」がひるがえり、それを持ち込んだ創価学会員たちはマスコミの取材に「現在の公明党の姿勢は創価学会の平和思想に反する」「創価学会が自公の集票マシンに使われている」などと、公明党中央の方針に対する不満をぶちまけた。
また現在全国各地で行われている「反安倍政権デモ」などの現場にも、そのような主張を叫ぶ創価学会員たちが少なからず加わっている事実があり、それらは広く報道もされている。
一連の流れから感じられるのは、公明党のかつてないブレである。そもそも公明党は1999年以来、国政の場で自民党と連立。閣僚まで輩出しているわけだから、自民党への対抗勢力として誕生した大阪維新の会や都民ファーストの会と協力するのは本来おかしい。
また公明党は長年、中道左派的なポジションで歩んできた政党。創価学会のカリスマ、池田大作名誉会長も護憲や反核兵器など、リベラル寄りの発言を行い続けてきた人物だ。それを素朴に信じている創価学会員、つまり公明党支持者も数多い。なのに現在の公明党は、自民党・安倍晋三政権の改憲や原発再稼働といった政策を容認している流れがあり、一部の創価学会員らが公明党不信に陥るのも道理だろう。
「公明党は活動理念を見失っている」
少なからぬ創価学会員たちの間から、率直に漏れてくる党批判だ。公明党の結党は64年のことだが、当時関係者が盛んに口にしていたのが「王仏冥合」「国立戒壇の建立」といったフレーズだった。つまり当時の創価学会が上部団体と仰いでいた日蓮正宗(91年に破門・決別)の教義を国教にし、国にその宗教施設を造らせるという構想で、初期の公明党とはそのような徹底した宗教政党だった。
ただそのような姿勢は「政教分離違反」といった批判を多方面から浴び、公明党は70年にそれまでの方針を撤回。言ってみればこのとき、公明党の思想集団としての「理念」は消失してしまっているのだ。
以後、公明党は「福祉の党」を標榜しながら創価学会員のために行政からの生活支援などを引き出すことに力を注ぎ、また選挙を事実上の宗教行事に位置付けて創価学会員の引き締め、盛り上げに利用するなど、あけすけな利権追求集団に変貌していく。93年の細川非自民連立政権以来、彼らが「勝ち馬」に乗らなかったのは原則として2009~12年の民主党政権期だけで、そのときでさえ常に自公協調の解消はささやかれていた。実際、政界関係者の中に公明党を「コウモリ集団」と唾棄する向きは少なくない。
ただ、善し悪しはともかく現在の日本政治をかき回しているのは、安倍晋三首相や小池百合子都知事、また橋下徹氏など、イデオロギー先行型の政治家たちだ。そこにマキャベリズムだけで絡もうとする公明党の空回りが、最近の彼らのブレの原因であるようにも見える。
また創価学会員の主要層はすでに2~3世信者となっており、彼らは自身で信仰をつかんだ1世より公明党にも冷淡。創価学会・公明党本部は現在、いつ自分たちの「底が抜ける」のか戦々恐々だという。宗教政党でありながらイデオロギーを捨てたコウモリに、天の裁きが下る日は近いのか。
(雑誌「宗教問題」編集長 小川 寛大 写真提供=小川寛大)
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