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老いて学ぶ晩学をバカにする人は大バカだ

プレジデントオンライン / 2019年5月9日 9時15分

お茶の水女子大学名誉教授 外山滋比古氏

■「人生100年」の生きがいは自分で探すしかない

95歳、お茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古さんが考える、幸福を感じられる生活のコツとは何か。

「昔の人は60(歳)くらいで死んだけど、今は80になっても90になっても死なない。みな、どうしたら幸せを感じられるかよくわからない。幸か不幸か、100歳くらいまで続くかもしれない人生の生きがいや、楽しく前向きに生きるための哲学・思想は結局のところ、各自が見つけないといけない。これは、政治家が教えてくれるわけでもないし、老いてからの楽しい生き方をガイドしてくれる参考書代わりの書籍も世の中には存在しない。それぞれが手探りでやっていくしか方法はありません。

そういうわけだから何か面白いことないかな、と言っていても始まらない。誰かから面白いことをもらおうという魂胆はよくない。何歳になっても、とにかく自分の心が動いたもの、新しいものに挑戦してみる。純な気持ち、初心でやってみる。うまくできないかもしれない。失敗するかもしれない。でも、それでいいんです。もがきながらも、先に進めば、精神的に充実し、人生に光が射してくることもある」

■「老いて学べば、即ち死して朽ちず」の精神

かつては晩学をバカにする風潮もあったが、それは間違いだと外山さんは言う。

「江戸時代の儒学者・佐藤一斎が残した『老いて学べば、即ち死して朽ちず』という言葉がありますが、まさにこれです。いい年をして、新しいことを始めるなんて、と晩学を否定したら、体は生きているのに、心と頭がお休みになってしまう。上達するかどうかは別問題。進取の精神を発揮して、新しいことを試みる。気持ちの赴くまま何にでも手を出し、努力してみる。そうした生き方が老人の心意気なのです。

ただ、私の個人的な意見を言えば、取り組むのは『世の中の人がやっている』ものはダメ。人まねは面白くない。以前、ひょんなことから皇居の周囲を早朝にひとりで散歩していました。無心で歩いていると自分の頭がキレイになっていくのがわかる。嫌な感情が消えていき、いろんなアイデアが次々と湧き上がってくる。30分も歩けば、新しい自分に生まれ変わった感覚でした。当時はまだ、皇居の周囲を散歩する人はあまりいなかったけれど、ウオーキングが流行となって歩き始めた人々は『長生きしたい、健康のため』と余計なことを考えて仲間と集団で歩いている。歩くことはもっとクリエイティブなことだと私は思っています」

■仲間との会話の中に、刺激や新発見もある

「人と一緒にやるなら、自分の仕事とは異業種の人を集めて全部で4人くらいの仲間をつくり、定期的に話すといい。同じ業種の人と集まって喋ったって、全然面白くない。異業種出身なら会話の中に刺激や新しい発見もある。そうした時間が、知的に老いるためには必要です。

定年が65歳とすれば、残りの人生は20~30年。その時間を孤独でつまらないものとするか豊かなものとするか。それは自分にかかっています」

そう語る外山さんが今なお取り組むのは執筆活動。2018年末にも新刊を出し、ますます意気軒高だ。

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外山滋比古(とやま・しげひこ)
お茶の水女子大学名誉教授
1923年、愛知県生まれ。専門の英文学をはじめ、言語学、修辞学、教育論、意味論など広範な分野を研究し、多数の評論を発表。著書に『思考の整理学』(ちくま文庫)、『知的な老い方』(だいわ文庫)、『忘れるが勝ち!』(春陽堂書店)ほか多数。

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(フリーランス編集者/ライター 大塚 常好 撮影=榊 水麗)

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