弱点を叩く上司とどう折り合いをつけるか
プレジデントオンライン / 2019年4月15日 11時15分
上司の厳しい指摘でモチベーションが下がっています
昨年夏に転職して約半年が経過しました。勤務先は外資系コンサルティング企業で、上司と私を含む3名でアシスタントをしています。上司は月に1~2回しか会う機会がなく、基本的にメールや電話の指示のみです。
私の担当は、経費精算、スケジュール管理、接待・航空券の手配予約などのアシスタント業務に加え、採用、マーケティングなども含むマルチタスク業務です。私には、コミュニケーション力と自発的に柔軟に動けるという強みがありますが、大雑把でツメが甘いという弱みもあります。
当初、期待値がかなり高かったのはありがたかったのですが、上司がとても細かくしっかりした人のため、ミスが続いた際に私のメールや電話でのコミュニケーションがわかりづらいという指摘が出始め、何をするにもたびたび確認が入る状態が続いています。私の弱みが悪目立ちしてしまい、信用を失いつつある気がします。
弱みをカバーしようとすると、業務をこなすのに時間がかかり、行動力や柔軟性が極度に落ちてしまいます。たびたびの指摘で自信を失いつつあり、強みを発揮する機会すら見つけづらく、モチベーションが保てなくなっています。意欲を維持するには、どんな行動や考え方が必要なのでしょうか。(43歳・コンサルティングアシスタント)
■働く女性にとって大切なのは「回復力」
上司の厳しい指摘に、心が折れそうになっているのだろうと思います。仕事を長く続けていれば、当然モチベーションが下がる時期もあり、私も相談者さんと同じように思ったことが何度もありました。それでもなんとか乗り越えてこられたのは、楽観的な性格のおかげかもしれません。
ただ、悩んでいる最中に楽観的になれと言われても、なかなかそうはいかないもの。私は、周りに自信を失くしかけている部下がいたら、「折れない心」という考え方があることを伝えています。折れないというのは、タフになれということではありません。つらいことがあっても回復できる、柔らかくしなやかな心のことです。
「柳に雪折れなし」という言葉があるように、柔らかくしなやかなものは、堅いものよりかえってよく持ちこたえることができます。私は、仕事を続けていく上ではこうした回復力が一番大事だと思っています。つらいことや嫌なことはどうしても起こります。でも、そこで折れてしまったら終わり。一度頭を空にして、「まだまだ行ける」と思える楽観性を取り戻すことを目指してみてはどうでしょうか。
私は、回復が必要なときは人と話すようにしています。1人で考え込んでいてもマイナス思考になりがちで、回復の糸口もなかなか見えてきません。人に話すことで頭が整理できて、自然と答えが見えてくることが多いですね。
■人に相談することで解決の糸口が見えてくることも
では、相談者さんの場合は誰と話せばいいのでしょうか。私がまずおすすめしたいのは、「2人以上の尊敬している先輩」です。勤務歴が3年から5年先輩の人と、10年ほど上の人の2人にメンターとして話を聞いてもらうのです。半年に一度など定期的に機会を持つことで、一緒に伴走してもらうような信頼関係もできるとより良いと思います。
まずは、誰にどう相談するか考えてみてください。「誰に」を考えれば自分の目指す理想像が見えてきますし、「どう話すか」を考えれば、聞いてもらう為に自分の中である程度、論点が整理され、半分くらいは自分で答えが見えてきます。その上で、先行く先輩のアドバイスが心に響くとモチベーションが高まると思います。
私もよく相談を受けますが、みんな自分の頭の中に何かしら答えがある場合が多いように感じます。でもその答えに自信が持てなかったり、頭が整理できていないだけ、ということもあるのではないでしょうか。相談しているうちに頭が整理され、ご自身の中に引っかかっていたことが見えてくれば、解決はもう目の前です。悩んでいる時は、この一連の動きを実行することが大切です。
■当事者である上司にも思い切って相談を
次におすすめしたいのは「当事者である上司」です。上司の厳しい指摘やたびたびの確認で自信を失いつつあるそうですから、本人と話すのは勇気がいるかもしれません。でも、上司は自分の言葉で相談者さんが悩んでいることに気づいていないのかも。普段ほとんど会う機会がないのなら、表情や雰囲気から感じとることも難しいでしょう。
愚痴や不満の形ではなく、「最近ミスが多くて、○○さんにもご迷惑をおかけすることが増えているので改善したいんです」とアドバイスを求めれば、一緒に解決策を探っていける可能性は高いと思います。細かい事に気が付く上司は考えようによっては有難いので、懐に飛び込んでみる事もいいと思います。
ただし、こうした話はメールでは伝わりにくいので、電話か、できれば直接会って相談を。メールは決定事項を知らせるのには便利ですが、気持ちを伝えるのには不向きです。電話や対面での相談は、相談者さんの強みのひとつ、コミュニケーション力を発揮するチャンスにもなるのではないでしょうか。
■自分を否定せずに強みを伸ばして
相談者さんがモチベーションを失いつつあるのは、自分の強みだと思っていた部分が評価されず、弱みだと思う部分ばかり指摘されているからでしょう。現状は、強みを生かすことよりも、弱みをカバーすることに精一杯のようです。
でも、当初は上司からの期待値も高かったわけですから、決して能力は低くないはず。きちんとこなせている業務もたくさんありますね。そこを思い出して、自分を否定しないようにしてください。どんな社員にも苦手な分野があり、それと同時に存在意義も必ずあります。私は常々、部下には弱みを隠すことよりも、強みを伸ばすことに力を注いでほしいと思っています。
相談者さんは、ご自身の強みや弱みをきちんと把握されていて素晴らしいと思いますが、そこもメンターである先輩に客観的に見てもらっても良いかもしれませんね。人に相談することのメリットは、違う視点が得られることにあります。自分では気づかなかった強みや弱みが見えたり、業務を一段高い視野から見られるようになったりすることも少なくありません。それは成長の糧になり、自信にもつながっていきます。
最近は、回復力や復元力、弾力性などを意味する「レジリエンス」という言葉が注目されています。この考え方は、相談者さんが自信を取り戻す上でも非常に役立つと思います。書籍もたくさん出ていますから、ぜひ手にとってみてください。繰り返しになりますが、モチベーションの低下は誰もが経験すること。大切なのはそこからの回復力であり、自分なりの回復法を持っておくことだと知っていただけたらうれしいですね。
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ロート製薬 取締役 プロダクトマーケティング部部長
大阪大学薬学部卒業。1981年ロート製薬入社。目薬、妊娠・排卵日予測検査薬、スキンケアシリーズなどの開発・発売に携わる。研究開発部、製品情報部、マーケティング本部、研究開発本部を経て2018年より現職。
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(ロート製薬 取締役 プロダクトマーケティング部部長 力石 正子 文=辻村洋子 写真=ヒダキトモコ 写真=iStock.com)
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