働く女性が、結婚を諦めるのは何歳からか
プレジデントオンライン / 2019年4月30日 6時15分
■女性の結婚満足度は、年数とともに下がる一方
【筒井】今回のアンケート結果にも出ていますが、結婚年数とともに妻側の夫に対する評価は辛口になるものです。これは万国共通。結婚満足度は昔、U字形といわれていました。満足度は結婚後に下降するけれど、約20年後から再び回復すると。しかし統計学的な分析をすると、どうやら満足度は下降する一方のようです。
アンケートの回答者は正規雇用の会社員・職員の方が多いですね。やはりワーク・ライフ・バランスのきつさはストレスの大きな要因になります。夫は普通に働き、妻は仕事をセーブして……という関係であれば、なおのこと。心の底では自分のほうが仕事ができると思っていても、その能力を発揮できないイラだちや不公平感があるからです。
この状態を少しでも改善していくには、まず家事を頑張りすぎないことです。日本人女性は家事をきちんとやりすぎる傾向がありますので、ここは欧米を見習って「できないことはやらないこと」。またワーク=仕事、ライフ=育児という考え方をやめることも大切です。これは先進国に共通して言えることなのですが、子どもがいる女性のほうが幸福度が低くなるんです。自分のための時間を犠牲にして、育児に時間を割いているという意識があるからでしょう。この意識を是正していくには、ワーク=仕事・家事・育児、ライフ=自分の自由な時間と捉えたうえで、バランスを取り直すこと。
夫婦間の会話も増やしたいですね。年数とともに会話時間が減少するという結果が出ていますが、会話もなく「別にいなくてもいい夫」と思った瞬間から、“夫がいること”自体がストレスになっていってしまいます。
■男性大黒柱幻想と3歳児神話を同時に捨てるべし!
【白河】結婚後の後悔の1位は「家事・育児の能力」、2位は「金銭感覚」という結果からもわかりますが、夫婦間でもめるのはいつも、お金と家事です。特に共働き夫婦の場合、家事は必ず問題になりますね。
今の40代は育休世代のはしり。女性が仕事も育児も両立できるよう、2008年頃から育休延長や時短勤務など、制度が急速に手厚くなりました。しかし、それにより家事や育児は長く休める女性のもの、という色合いが逆に濃くなってしまいました。両立支援制度のトラップにはまらないよう注意が必要。産後早めに夫婦の分担を決め、早く職場に復帰するのがワンオペ回避になります。
家事をしない夫には、家事代金を請求
そして夫にも家事・育児を対等に行うことを望むのであれば、自分自身も一家の大黒柱である意識を持つ必要があります。今の団塊ジュニア世代は男女共に保守的ですが、「男性大黒柱幻想」と「3歳児神話」はセットで捨てること。経済も家も2人でやっていくんだという意志を持つことです。結婚をふわっと“幸せ”という名のオブラートでくるんでいても、共働きで幸せにはなれません。「丁寧な暮らし幻想」も捨てるべきですね。梅干しをつけるとか、そこまで好きではないことはやらなくていいんですよ。
家事&育児分担比率の表を見ると、年収が夫600万円、妻400万円という家庭であれば、夫の分担比率は本来なら43%もあるのです。対等に稼ぐ夫婦の中には、妻の家事負担が大きい場合、夫がその分のお金を支払って妻の不満を解決した事例もあります。今更、夫の家事力を向上させることが無理な場合は、お金を払ってもらう交渉をするのも手ではないでしょうか。
■夢を求めていては、結婚などできない。稼ぎ手意識を持って
【筒井】アンケートの裏読みをさせていただくなら、「性格が合えば、自分より稼ぎが少なくてもよい?」という質問に対して「いいえ」と答えている女性がまだこんなに多いのか、というのが正直な感想です。結婚したいなら相手に求める条件を下げること。自分に稼ぐ力があるならなおさらです。これは妥協ではありません。もともと相手に高い水準の年収を求めすぎているので、それを適正な水準まで下げるだけのことです。
欧米社会では相手の稼ぎが多少低くても、愛の力でカバーしてしまいます。でも日本はどちらも大事、となるから結婚が難しくなるのです。
日本にももっと自分が稼ぎ手という意識を持った女性が増えていいと思いますね。
「相手が『主夫』になりたいならそれでもいいと思う?」という質問に対してYESと答えた女性は全体の4割近くですが、いざというときに本当にそう思えるかが重要なポイント。稼ぎのメインは夫という意識がどこかにあると、妻はどうしても家事を引き受けがちに。日本ではこの生計維持分担意識が、まだ圧倒的に男性に偏っています。生計維持分担意識が平等になって初めて「共働き」なのだということを忘れないでおきたいですね。
PTAなど、地域も変化が必要
ただ、夫婦の選択として夫が主夫になったとしても、小学校のPTAなど、それが受け入れられにくいコミュニティーもあります。職場ではダイバーシティを重んじた改革が進められる一方で、プライベートの場は法律の規制があるわけではないので、変化は遅れがち。異物が敬遠されるというのはどこの世界にもあることだということはあらかじめ、理解しておきましょう。
■「結婚をあきらめる年齢」が存在しなくなってきている
【白河】アンケートを見ると、婚活に積極的な人は少数派のようですね。でも40歳以上の結婚については賛成が多数派です。そして40代前半では子どもが欲しい人が37%。今や女性が結婚をあきらめる年齢というものは、存在しなくなってきているのかもしれません。
40代は「今ならまだ産めるかもしれない」という葛藤とともに結婚を考えます。これが50代になると、老後のことを考えた「老後婚」も増えてきます。親も年をとり人生後半がリアルになる年齢。そんなとき、やはり共に生きていくパートナーがいたほうがいいなと思えてくるのです。
ところが多忙のために行動を起こさない人が多いのも事実です。今の40代はちょうど30代の頃に婚活ブームの洗礼を受けています。その波に乗れなかったということは、やはり自分から行動を起こすことに抵抗があるのかもしれませんね。でも自分から積極的に行動を起こさない限り、なかなか縁というものは巡ってきません。もしも40代で真剣に結婚したいと考えるのなら、積極的に人の輪に入ること。たとえば社会人大学院のような学びの場に通ったり、同窓会に出かけてみたり。また同年代ではなく年下、あるいは10歳以上年上の男性との「猪瀬婚」もアリではないでしょうか。
40代になって結婚する可能性は何%といったデータは、気にすることはありません。団塊ジュニア世代の生涯未婚率も今後上昇していくことが予測されていますが、それはよく捉えれば、それだけ結婚相手がいっぱい残っているということです。
自分に収入があれば、その分、間口は広げられるんですよ。
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立命館大学 教授
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は家族社会学、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』など。
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相模女子大学客員教授、作家
慶應義塾大学卒。女性のキャリア、働き方改革などがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに著書『「婚活」時代』で婚活ブームを起こす。『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』など著書多数。働き方改革実現会議有識者議員。
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■▼既婚読者のホンネ、聞きました!
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(立命館大学教授 筒井 淳也、相模女子大学客員教授、作家 白河 桃子 構成=赤根千鶴子 撮影=向井 渉、干川 修 写真=iStock.com)
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