シェア事業はインフラの地位を築けるのか
プレジデントオンライン / 2019年5月4日 11時15分
■シェアの原風景は、下町のご近所づきあい
シェアリングの概念は、2010年ごろに米国を中心に広がりました。日本で注目され始めたのは、15年後半から。当初はUberやAirbnbなど米国のプラットフォーム大手が中心でしたが、その後国内でもスタートアップ企業を中心にさまざまなサービスが展開されるようになりました。現在、シェアリングエコノミー協会には約200社が名を連ねています。
シェアの領域は「空間」「移動」「モノ」「お金」「スキル」に分類できます。内閣府では、18年「16年の市場規模が約5250億円に上った」とする試算を公表しました。国内総生産(GDP)を950億~1350億円押し上げる可能性があるとされ、今後が期待されます。特に個人間で行われるCtoCのシェアリングは、世の中のサービスのあり方をガラリと変えるかもしれません。
しかし、シェアの価値観自体は、古くから私たちの中にあったものです。たとえば、昔はお醤油を切らすとお隣さんに借りたり、お礼に多めに作った惣菜をおすそ分けしたりといった関係がありました。それは地域に根ざした信頼関係の上に成立していたシェアですが、ICTの発達によりそれが世界規模で可能になったのです。
そこでは、利用者間で評価し合うレビューやスコアが、信頼度を知る重要な尺度になってきます。相手を気遣い丁寧に振る舞うことで良い評価が得られ、利益を上げたり利用する側に回ったときのアドバンテージになる。この好循環がうまく機能しているサービスほど、浸透し根付いていくと思います。今後は複数のサービスで、そうしたレビューやスコアが共有されるようになるかもしれません。
課題もあります。たとえば、イノベーションのスピードに法整備や制度づくりが追いついていないことです。先に普及しつつあった民泊は、18年「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が施行されましたが、これにより個人が事業者等を使わずに対価を得て旅行者を宿泊させることは非常に困難になってしまいました。一方、通訳案内士法の改正では、国家資格を持たない人でも、対価を得て外国人旅行者の通訳やガイドをすることが可能になりました。
■シェアがインフラになれるかどうかの分岐点
これらの法律の制定や改正には、年単位の月日がかかっています。問題は、企業がサービスの提供者であり、個人が享受者であるという枠組みの延長線上でしか考えられていないことと、既存の法律の手直しでしか対応できていないことです。これだけ多種多様なサービスが勃興している中で、それぞれに法律をつくるのでは数十年あっても足りません。
では、どうするか?シェアを新しいサービス分野と位置付けて「シェアリング基本法」のような大枠の法律をまずつくり、そのうえで個別のルールを整備していくというアプローチが考えられます。
20年はオリンピックが開催され、多くの産業分野で需給の均衡が一時的に崩れます。こうしたタイミングは変革のチャンス。シェアリングが単なる新産業ではなく「インフラ」になれるかどうかの分かれ目だと思っています。
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![](https://president.jp/mwimgs/1/9/-/img_19a9b8d74b11cf088990e51f8014e84d77166.jpg)
シェアリングエコノミー協会事務局長
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。イノベーションの社会実装のため規制緩和や政策推進に従事。近著に『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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(シェアリングエコノミー協会事務局長 石山 アンジュ)
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