「いいね、でもね」な人間とは付き合うな

プレジデントオンライン / 2019年4月20日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/stockstudioX)

相手の意見を「それいいね」と受け入れた後、「でもね」と否定する人がいる。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「そういう人とは付き合わないほうがいい。足を引っ張られるだけだ」と指摘する。2014~15年まで米スタンフォード大学の客員研究員を務めた同氏が、ある日に受けた授業の一部を紹介しよう――。

※本稿は、竹下隆一郎『内向的な人のためのスタンフォード流 ピンポイント人脈術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■本も資料もない“言葉”で進める授業

教科書やプリントは一切ない特徴的な授業でした。まず担当の講師が60人ぐらいの生徒を10のグループに分けます。グループ内で話し合わせる時間も作らず、いきなり、あるひとつのグループを前に立たせて、「即興」の寸劇をやらせるのです。

グループの6人のうち1人が「オピニオンリーダー」役に任命されます。この人だけは発言内容にルールが課せられます。残り5人で、パーティの準備を進めるというのが内容です。みんなが見ている前で、「3パターンの劇をやるように」という指示が飛びます。

最初のパターンは、オピニオンリーダーが何を聞かれても「NO(嫌だ)」と言う、というルールが決められます。

「今度の週末に、パーティをやりましょう」と講師が呼びかけるところから劇が始まります。

いきなりのことで最初は戸惑うオピニオンリーダー以外の5人。彼らはじっと考えていたのですが、やがて恐る恐る、誰かが声をあげます。

「パーティの料理はすしにしよう!」。

■まずはひたすら否定する

ちょっと照れくさそうにその人は言いました。すかさずオピニオンリーダーは、講師の指示通り「NO(嫌だ)」と言うのですが、途端に教室は笑いに包まれました。

「わかった、だったらすしはやめにして、ピザパーティをやろう」。オピニオンリーダーの拒否反応に負けないように、5人は「すし」ではなく「ピザ」をパーティの食事として提案することで代替案を探り始めました。

「嫌だ」と再びオピニオンリーダー。またしても講師の指示通り、拒否をしてしまいます。教室に一気に落胆の声が漏れました。

「そうか、だったら、ハンバーガーはどう? うちにバーベキューセットがあるから、それを持ってきて焼こう」
「嫌だ」
「うーん、ハンバーガーも嫌いか。だったらホットドッグにしよう」
「嫌だ」

どれだけ提案しても拒否をするオピニオンリーダーの態度に対して、だんだんと5人はイラついてきました。

「タコスが良い」とか「フルーツが良い」とか、「お酒がないからオピニオンリーダーは嫌がっているのではないか。だったら僕がビールを持ってくるよ」など色んな意見が矢継ぎ早に出てくるのですが、いつまでたってもオピニオンリーダーの意見が覆ることはなかったのです。

最後はみんなの怒りもピークに達して、「だったら、食べ物はいらないから、みんなでとにかく集まってお喋りしよう!」と叫びます。

これには「NO」と言わないといけないリーダーも思わず笑ってしまいました。

■「いいね」で話の輪がどんどん広がる

休む間もなく、講師が「2つ目のパターン」の演劇に入ることを宣言しました。

今回のパターンにおいて、オピニオンリーダーは、どんな意見に対しても、「YES(いいね!)」と言わないといけないルールになりました。

これだとやりやすそう、という空気が広がります。

お決まりの「さあ、週末にすしパーティをやろう!」という言葉に対して、すかさず「いいね!」とリーダーが口を開きました。

先ほどとは打って変わった姿勢に、みんなも盛り上がり、「いいね、やろう、やろう」と大声を出し始めます。

「すしは、スーパーでも売っているけど、日本人の友達が、家では手巻きずしパーティをやるって言ってた。自分たちで作るのはどう?」
「いいね!」とリーダーが返しました。
「私の友達に日本から来たばかりの子がいて、その人の家にはすし桶があった。それで酢飯を作るんだって。その子も呼んでいい?」
「いいね!」
「あ、だったら俺は材料を買いに行くよ。魚や海苔。日本食スーパーが家の近くにある。生の魚介類が苦手な人のためにアボカドも買っておこう」
「いいね!」
「楽しくなってきた。せっかくだから、すしを食べながら自分達の研究テーマをシェアをする会合にしない? ちょっとした勉強会にもなるよね」
「いいね!」

劇はどんどん面白くなり、講師の人が途中で止めないといけないほどでした。

■「いいね、でもね」を繰り返してみると

「YES」の劇が終わったあとは、いよいよ最後のパターンの演劇を行うことになりました。それは「YES、BUT(いいね、でもね)」とリーダーが必ず言うパターンでした。先ほどの「いいね」の劇でテンションが上がったのか、みんなに勢いがあったことを今でも覚えています。

「さあ、週末にすしパーティをやろう!」

同じ呼びかけから劇が始まりました。

先ほどと違うのは、オピニオンリーダーが「いいね、でもね……」と言うことです。

「でも、何?」とみんなが語りかけました。

オピニオンリーダーはもじもじしながら、「いや、でもね、すしは、僕は好きなんだけど、苦手な人もいると思うんだ」とつぶやきました。

メンバーも負けてはいません。1回目の劇で「NO」と言われ続け、免疫ができていたからなのか、粘りが違うように私は感じました。

「わかった、だったら、苦手な人向けにアボカドを加えよう」
「いいね、でもね……」とリーダー。
「今度は何?」
「アボカドが嫌いな人もいると思うんだ。そういう人たちに対してはどうする?」。リーダーの態度が煮え切りません。
「あなたはすしが嫌いなの?」
「いや、『いいね』って言った通り、僕はすしは賛成なんだけど。あくまで、色んな意見を尊重したいので……」

会話は永遠と続きそうなのですが、何だかみんなどんよりし始めます。不思議と「NO」と言われ続けていたときの方が、笑いもあり、盛り上がりました。

こうやってウジウジと言われると、いったい反対をしているのか賛成をしているのか、オピニオンリーダーの本心が分からずにイライラとするのです。内面が分からないと人は不安になります。教室を嫌な空気が包んでいったのを今でも覚えています。

私にとっては、この3つのパターンのうち、やはり「YES,BUT」が最も衝撃的でした。

■「いいね、でもね」は議論を狭めてしまう

先ほど紹介したように「NO」のときは、当初の予想と違って、ホットドッグやハンバーガーなどパーティの食材のいろいろな「代案」が出てきました。演劇として観ている分には面白かったし、「YES」とはまた違う形でアイデアも出てきました。

一方の「YES,BUT」。一見、オピニオンリーダーが賛成するのですが、「後付け」でいろいろ言われるため、説得する方も意地になって、どうしても「すし」にこだわってしまいます。会話がどんどん、小さく小さく閉じ始め、話が大きく「展開」していかないのです。

■賛成した「フリ」をする人とは付き合うな

竹下 隆一郎『内向的な人のための スタンフォード流 ピンポイント人脈術』(ハフポストブックス)

私は今でもビジネスでは「YES,BUT」型の人とは付き合わないようにしています。こちらの言うことを一瞬だけ受け入れてくれるのですが、あとから「留保」をつけてくる。もちろんビジネスにおいては慎重さも必要ですし、多様性が大事な現代では、さまざまな「注意点」を頭に入れておくことが大事でしょう。

しかし、それだったらはじめから「NO」と言ってくれた方がマシです。賛成した「フリ」をされるのが一番困る。日本語だと「うん、でもね」「そうは言っても」「とはいえ」を口にする人のことでしょうか。

スタンフォードのワークショップについては、私の独自の解釈です。もちろん「YES,BUT」を言わざるを得ないときもビジネスの状況によってはありますが、新しいアイデアを話し合うときなどは言わないように気をつけている言葉のひとつです。

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竹下 隆一郎(たけした・りゅういちろう)
ハフポスト日本版編集長
1979年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。2002年朝日新聞社入社。経済部記者や新規事業開発を担う「メディアラボ」を経て、2014~2015年スタンフォード大学客員研究員。2016年5月から現職。近著は『内向的な人のためのスタンフォード流ピンポイント人脈術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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(ハフポスト日本版編集長 竹下 隆一郎 写真=iStock.com)

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