特養費5.7万安くなった世帯分離の仕組み
プレジデントオンライン / 2019年5月2日 11時15分
▼老親家計が大赤字
■小さく無理のない、起業をする人も
生活に困窮する高齢者が増えています。中でも多いのは、そもそも年金受給額が少なく生活が立ち行かないケース。国民年金だけでなく、厚生年金の人でも少なくありません。老後の危機感をあまり持っていなかった世代で、年金で悠々自適に暮らせると思っていた方が多いようです。
ところが、年金制度が時代にそぐわなくなりました。もともと平均寿命60歳台、大家族制があった時代につくられたものです。現在は平均寿命が大幅に延びて、老後が長くなったうえに年金を支える若い世代の人口が減っています。国としては支給額を減らさざるをえません。
ひと昔前までは親子同居が当たり前だったので、国民年金が5万~6万円でも丸々自分の小遣いにできました。それが今は別居が当たり前、独居の方も増えています。年金ですべて賄わなくてはならないのに、逆に年金額が減っているのです。しかも、今の70代の現役時代には「ねんきん定期便」もなかった。受給するときに初めて金額を知る方が多く、受け取る金額が思っていたより少なくて老後の計画が狂ってしまいます。
現役時代に高収入を得ていた方も注意する必要があります。大手企業にお勤めで高収入だと、割と外食が多かったり、旅行に行くことが習慣になっていてマンションの管理費も高かったり。なのに、年金額ではそれほど差がありません。むしろダウンサイジングができず貯金を食いつぶしたりする危険もあります。
支出を抑えるため、事情が許せば親子で同居することをお勧めします。そのときに世帯分離の手続きをすること。世帯分離とは、同じ住所で暮らす家族が世帯を分けて住民登録をすることを言います。
![](https://president.jp/mwimgs/6/d/-/img_6dbc98d40b366c13e02a8310039f7ccb277379.jpg)
お住まいの市区町村に届けるだけで簡単にできますが、制度自体をご存じではない方が多いようです。世帯を分けることで世帯収入が少額になり、それによって算定基準も下がります。そうすることで後期高齢者医療保険料、介護保険料、高額医療費、高額介護サービス費、入院・特養入所の食費住居費などを抑えることができます。ただし、親の収入が多い場合、あるいは特養に入るなら親の資産が1000万円以上ある場合も、算定基準が高いために世帯分離のメリットがありません。
最近では、高齢者の経験を生かそうとする動きが活発になっています。体が元気なうちは働いて、少しでも今後の生活に余裕を持たせるようにしたいですね。顧問やプロフェッショナル人材をマッチングする人材支援会社に登録して力を発揮したり、高齢者専門の起業支援会社に相談をしながら小さく無理のない起業をする人も増えています。世帯分離もそうですが、高齢者は情報不足で損をすることも少なくないので、その辺をフォローしてあげたいですね。
打つべき一手:知らないと損する制度はある。世帯分離は諸々の負担額を大きく減らせる
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フリーライター
1955年、北海道出身。青山学院大学法学部卒。弁護士秘書、編集プロダクション勤務等を経てフリーライターに。ボランティアグループ代表や人権擁護委員の経験も。著書に『ルポ 難民化する老人たち』。
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(フリーライター 林 美保子 構成=金井良寿 撮影=初沢亜利 写真=iStock.com)
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