海外駐在で苦労するTOEIC高得点の特徴

プレジデントオンライン / 2019年6月18日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/franckreporter)

選ばれたエリートが海外駐在へ。しかし、現地では英語に苦労するもようだ。一体、どの学習法が効果的で、どの準備が役立たないのか? 海外赴任経験者にアンケートを行い、英語力を上げるテクニックを検証した。

■赴任までの準備期間はごくわずか!

辞令は突然下される。それは海外駐在も例外ではない。「海外希望をアピールしていた社員には声がかからず、何も想定していなかった社員に辞令が下りるというのはよくある話です」と指摘するのは、グローバルビジネスコンサルタントの白藤香氏だ。

「人事の視点からすると、英語ができる社員をすぐに海外駐在員として選ぶわけではありません。適応力や積極性がなければ海外ではうまくいかないので、『好奇心が強い』『チャレンジ精神がある』などの伸びる要素を見ている場合が多いんです」

英語が不得手な社員に白羽の矢が立ったとき、準備に時間を割けないのも特徴だ。書籍『海外赴任ガイド』を発行する、JCM流通事業部海外事業推進室長・中村達也氏によれば、内示から赴任までの期間は1~3カ月が一般的だという。

「『英語はできて当たり前』ととらえ、赴任する社員には語学よりも異文化理解の研修に力を入れる企業が増えています。アッパーマネジメントでは国際的にほぼ英語が用いられますが、現場のオペレーションでは赴任地の言語が必要。赴任の可能性があれば、英語はある程度習得しておいて、駐在が決まったら現地の外国語を学ぶ、というのが理想的かもしれません」

企業に勤めていれば、決して無関係ではない海外赴任。そこでプレジデント編集部は、25名の駐在経験者にアンケートを実施。反省や効果的な学習法など、生の声を集めた。

まず赴任先の苦労で目立ったのは、電話である。「会話が通じずに、ため息をつかれたことが何度もある」「話せない自分に、毎日自己嫌悪に陥った」は、ともに赴任地がアメリカだった30代の意見。相対すれば問題ないコミュニケーションも、音声だけになると一気に難しくなるようだ。

また、「同じオフィスでもスタッフの国籍がさまざまで、試験のテストや英会話スクールで学ぶような、きれいな英語がほとんど話されない」(30代・シンガポール)、「アメリカ東海岸は話すスピードが速く、あくせくしている人が多くて困った」(30代・アメリカ)など、赴任地特有の困難もあった。

白藤氏は、グローバルビジネスの英語レベルは、アジア、ヨーロッパ、北米の3段階のグレードに分かれると分析する。

「ある程度の英語力があれば通用するアジアに対して、一番ハードルが高いのが北米です。常にビジネス思考や運用スタイルが最先端であるため、収益を上げるノウハウを備えているうえで、英語が喋れないと、『ビジネスの対象外』と認識されてしまいます」

結果、「TOEICで高スコアを獲得して赴任したが、現地に行ってみたら思うように話せず、歯が立たなかった」という相談が多数寄せられるという。準備はしたものの、意外に役立たなかった例はほかにもある。

「英会話フレーズ集。丸暗記だと応用が利きづらい」(40代・アメリカ)
「決まった流れを練習するビジネス英会話レッスン。同じシチュエーションに出くわすことがなかった」(30代・シンガポール)

なお、やっておけばよかったと思うことは、「TVの英語放送を聞くこと」(60代・アメリカ)、「英字新聞に目を通す」(50代・オランダ)、「日本の歴史の勉強」(30代・アメリカ)など。意思さえあれば今からでも始められるものが目立った。

一方、事前準備で役立った学習として評価が高かったのは、オンライン英会話だ。

「話題は仕事のことに絞り、毎回同じ内容を繰り返し話す練習によって、即戦力で使える最低限の英語を身につけることができました」(30代・アメリカ)
「ある程度の下地があって、その次のレベルに行くのに非常にいいツール。毎日できて、さらに安価。家族持ちのサラリーマンには助かる存在でした」(40代・アメリカ)

白藤氏は、日本で赴任者の事前教育をする際、アポイントメントの取得法と会議を連絡するフォーマットを徹底的に仕込むという。

「英語は主語のすぐ後に述語がくる言語体系のため、結論を早く求める思考になります。なので日本流の『とりあえず1度会いたい』『いったん集まりましょう』のような連絡ではなく、必ず目的を明瞭に伝える。英語圏の人の合理的思考と、彼らに取り合ってもらえる伝え方を理解することは、英語そのものを覚えることと同じぐらい重要なんです」

■海外に行っても、英語が上達しない人の行動

準備をして、いざ現地へ――。しかし、海外にいるだけでは必ずしも英語力は上がらないようだ。

「現地では自分の英語が通じるか、尻込みするもの。そこで駐在仲間とつるんだり、日本語のSNSに興じたり、逃げに走ってしまうと英語は上達しません」(中村氏)

現地では何をすべきか。得策のひとつが、「意識的に日本語から距離を置き、英語に触れる時間を最大限に増やす」である。

「お店に行けば店員に、タクシーに乗れば運転手に、仕事でカンファレンスなどに参加したときは、日本人がいないテーブルについて隣の人に話しかけました」(40代・アメリカ)

■英語アプリで勉強してみる

「スマホの設定を英語にする。だらだらSNSを見るのをやめて、英語アプリで勉強してみる。やれることはいくらでもあります」(30代・アメリカ)

簡単な英語を恥ずかしがらずに使ってみるという姿勢も重要だ。

「数字で50なのか15なのかよくわからなければ、『You mean five zero or one five?』」と、納得がいくまで確認しました」(40代・アメリカ)
「会議中にパワーポイントを指し示しながら、『Important Things are this…and this…』でもいい。日本の英語学習では『ダメな英語』ですが、問題視されることはないし、ジャパニーズイングリッシュで、大きなビジネスを進めている人もたくさんいます。重要なのは、シンプルな英語で話すこと」(30代・シンガポール)

中村氏の説明によれば、「海外赴任先で仕事を楽しんで、英語力が伸びる人がいる一方で、もう海外はこりごりと帰ってくる人もいる。オープンな姿勢になれるかどうかが明暗を分けます」。結局、「いろんなものに興味を持ち現地に馴染むように努めれば、相手も心を開いてくれるし、言葉も上達します」(30代・アメリカ)という声が、言語習得の一番の本質なのかもしれない。

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白藤 香
SPCコンサルティングラボ所長
新市場新事業コンサルティング、多国籍人事組織コンサルティングを実施する。著書に『海外勤務が決まったらすぐ読む本』(あさ出版)など。
 

中村達也
JCM流通事業部海外事業推進室長
海外赴任経験は16年。同社編集の『海外赴任ガイド』は32年にわたるロングセラーで、毎年5万部以上の発刊実績を誇る。
 

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■▼英語で役立った準備は?

(プレジデント編集部 鈴木 工 写真=iStock.com)

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