何もしない人より"失敗する人"がいい理由
プレジデントオンライン / 2019年5月7日 9時15分
■松永安左エ門に言われた一言
誰かが偉くなるとか、社長になるとか、人の将来なんて見た目だけではわからないものです。スポーツの場合、素質の有無は早いうちにわかりますが、それでも素質がある人が必ず成功するとは限りません。ビジネス界だって、「あれ? あいつ、社長になっちゃったよ……」というようなケースは少なくないのです。
ただ、私の目ではわからないものが、女性にはわかることもあるようで、芸者さんなどは「この人は見込みがあるかも」と一瞬で見分けます。私は貧乏だった頃、某店の女将に可愛がられて、10年ぐらい未払いのまま飲ませてもらっていました。最後は柿の種しか出てこなくなりましたが(笑)、1999年に国内市場より先に米国ナスダック市場で株式を公開したら、「そろそろ払える?」とさっそく電話がかかってきました。
私は酒ばかり飲んできた行儀の悪い人間ですから、目の前の相手が偉いとか偉くないとか、気にしたことがありません。そのわりに、なぜか世間的に有名なおじいさんたちから可愛がられてきました。
学生時代、「電力王」と呼ばれた実業家、松永安左エ門さんと飲んだことがあります。そのとき松永さんから「若いうちはあまり肩書のある人間と会うもんじゃないよ。お互いつまんないんだから」と言われました。話題が合わないし、若いほうは緊張するだけ。なるほどと思ったものです。そのくせ、30代になると偉い人たちと飲むようになりました。
NECを日本最大のパソコンメーカーに育てた関本忠弘さん(元相談役)とは、2人でジンを1本空けて、酔っ払って言い合いになりました。ホンダ創業者の本田宗一郎さんには「おまえ、生意気なことを言うな」とポカッとやられました。殴っておいて「これも愛情だ」などと言うので、「愛情はいらないから、痛いのは嫌だ。僕はホンダの社員じゃない」と文句を言ったものです。
若くして亡くなられましたが、東京電力の副社長だった山本勝さんにも、大変お世話になりました。山本さんは若い人を可愛がり、私が素人ながら通信事業を始めたときにも「面白い」と見にきてくれた方です。豪胆でいて気配りは万全、私も含め多くの人から尊敬を集めていました。みなさん、私のような生意気な若造に、よく我慢してつきあってくれたと思います。
■いい子だけど、ちょっと弱い
運というのは大事なもので、偶然や運がないと大会社の社長になどなれないでしょう。私は、自分は運の悪い人間だと思っています。運が悪いからインターネットなどをやってきたので、「日本が世界から遅れちゃいけない」と思って立ち上がったものの、なかなか理解されず、それでもやっと仕組みができたのでやめようと思ったら、それもできなくてずるずる続けてきました。ただ私の昔の仲間には、世の中で知られるようになった人が大勢いて、「もしかすると自分は人に運を与えるタイプなのかな」と思ったりします。
![](https://president.jp/mwimgs/b/8/-/img_b8d3dc68a8b9fee89c38af92edf5ec5188914.jpg)
ただ、今の若い人を見ていると、運不運の前に努力しない人が多いと思います。人間は努力の結果で変わるもの。大成するためには、変わっていく要素がいります。優秀な人でも、自分の殻にはまってしまうと伸びません。逆に見かけがチャランポランでも、そういう精神を持った人もいます。自分を変える努力ができたうえでの運であり、成功なのです。
人間は本気で努力するときには余裕がなくなり、目が吊り上がってきます。上に行く人は、必ずそういう経験をしています。そこは、傍から見ていてもわかりますね。
今のIIJの社内にも、失敗ばかりしているけれども、「こいつ、面白いな」と思う人がいます。会社としては失敗するより成功してもらうほうがいいわけですが、私は「失敗する人は、何もやらない人よりはるかに見込みがある」と思っています。
何もしなければ、何も起きません。何か1つ、自分の持っているものを活かせればいいのです。そういう人を我慢して見守ってやるのが、上の人間の役割です。一方で「いい子だけど、ちょっと弱いな」という人もいます。仕事はやればやるほど増えていくもの。そこを耐えてやり切るか、自分に甘えてしまうかです。
今の日本は、まだ長期雇用の慣習が残っていて、ホワッとしていても生きていける国かもしれません。それでも向上心のある人は、本気で突っ走って壁を乗り越え、一皮剥けて変わっていくものです。
●殻を破ろうとしているか
●失敗しているか
●甘えずに仕事をやり切るか
----------
IIJ会長(CEO)
1946年生まれ。早稲田大学文学部卒業。日本能率協会等を経て92年、インターネットイニシアティブ企画(現IIJ)設立。94年IIJ社長。2013年より現職。
----------
(IIJ会長(CEO) 鈴木 幸一 構成=久保田正志 撮影=永井 浩 写真=iStock.com)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
晩年の松下幸之助、本田宗一郎との出会いで、稲盛和夫氏が確信した経営者のあるべき姿
PHPオンライン衆知 / 2024年7月22日 11時50分
-
41歳の冨永愛がたどりついた“わりと幸せ”な境地「自分の人生を誰かのせいにはしない」
CREA WEB / 2024年7月18日 11時0分
-
真面目な人ほど「就活」で損する演技社会の「茶番」 会社が求める演技をできる人が評価される現実
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分
-
ソフトバンク元副社長が自戒「老害三原則」の中身 人間には持って生まれた「残念な特質」がある
東洋経済オンライン / 2024年7月14日 17時0分
-
「頑張っているのに報われない人」が陥っている“思考の癖”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月12日 12時0分
ランキング
-
1「脱ママチャリ」電動自転車がここへ来て人気の訳 10万超でも高性能化、小型化で「1人1台」に?
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 10時0分
-
2「地方に多いホームセンター」が都会進出を狙う訳 人口減少が進む中、大手を軸に再編が進行
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 8時30分
-
3円安は、バイデン大統領と共に撤退か
トウシル / 2024年7月23日 10時31分
-
4日本製鉄、中国宝山鋼鉄との自動車鋼板合弁解消へ
ロイター / 2024年7月23日 17時19分
-
5ユークス、脚本家の野島伸司氏が社外取締役を辞任 一身上の都合
ロイター / 2024年7月23日 16時55分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)