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"採用面接の5分間"でボロが出る人の特徴

プレジデントオンライン / 2019年5月8日 9時15分

カインズ社長 高家正行氏

■五感を総動員して、相手の人間性を見極める

人と会うことが経営者の仕事のかなりの部分を占めています。人の本質を見抜けないと経営者は務まりません。自らを振り返ると失敗だらけですが、そのなかから学んだことがいくつもあります。

人と会うといっても、取引先と会う場合は相手の信用を見るというより、私の信用をアピールすることのほうを優先します。ですから、以下では社内の人や、会社に新しく仲間として迎え入れる人と会うときに、どういう視点を持っているかということをお話ししましょう。

いまの私の立場では、採用面接でも会社の幹部クラス(部長職以上)になってもらいたい人とお会いします。私が見るのは、その人が部下として長く一緒に働いてもらいたい人かどうか、という一点です。すると、スキルや能力だけでなく、もう少し突っ込んでその人の人柄まで見抜けなければなりません。

そのために大事なのが、最初の5分間です。本題に入ってからだと、当然ですがビジネスの話題に集中します。その前に、お天気のようなたわいもない雑談から始め、その間に身だしなみ、言葉遣い、仕草、醸し出す雰囲気などを、それこそ五感を総動員して感じ取り、相手の方の人間性を見極めるようにしています。

■最初の印象と仕事上の実績が不自然に乖離していないか

もっとも、自信たっぷりに話をする人は仕事ができるとか、身につけているもののセンスがいいと円満に組織をまとめてくれるとか、誰にも共通するパターンがあるというわけではありません。一緒に長く働いてほしい人かどうかは、一見してわかるような仕草や外見とは別のところで判断しています。これは経験に裏打ちされた直感のようなもの、というほかありません。

ただ、ひとつだけ明言できる基準があります。それは最初に受けた印象と、その後、「本題」での対話によって得られたその人の仕事上の実績とが、不自然に乖離していないかということです。通常、雑談の5分間で人柄を感じ取ったあとでビジネスに関する話題に移りますが、ここで私は、かなり細かい突っ込んだ話を聞くことにしています。

態度が堂々として口調にも自信があふれている人は、たいてい「前職でこれだけ売り上げを伸ばしました」「このプロジェクトを成功させました」とアピールします。しかし、会社やチームの業績は1人で成し遂げられるものではありません。私が知りたいのは、その成果にその人がどれだけ主体的に関わってきたかということです。そのため、ここではいろいろな方向から「ボール」を投げて、事実関係を明確に把握するように努めるのです。

■自分自身を客観視できない人を採用しないワケ

組織の成果と個人の貢献との関係については、本人にもはっきりと区別できていないケースは少なくありません。場合によっては、自分に有利になるようにわざと混同させたまま話す人もいますから、ここは詳細なヒアリングが必要です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

ただ、1時間ほどみっちりと対話をすれば、だいたいの事実関係は聞き出せます。第一印象がよかった場合、そうして得られた本当の実績と第一印象との間に開きがなければ、その人は信用できるということになりますし、長く一緒に働いてもらいたいと思います。

問題は、第一印象と実績との乖離がある場合です。

たとえば前職では輝かしい実績を残していても、実際、本人はメンバーの1人にすぎず、重要な意思決定は別の人が行っていたという事実が判明したとします。すると、その人がいくら自信たっぷりに振る舞っていようと、その自信は「過信」であると判断しなければなりません。

過信とは、自分について客観視できず、過大評価しているということです。30歳くらいの若手であれば、その根拠なき自信は大きな仕事にチャレンジするときの推進力になるかもしれません。しかし私が欲しているのは、それなりの数の部下を率いて、バランスよく会社に貢献してくれる幹部です。自分自身を客観視できない人を、幹部候補として迎え入れることは難しいでしょう。

■失敗を隠す人は、失敗を繰り返す

とはいえ、面談だけで実績のすべてがわかるわけではありません。迷ったら第三者の目を借りることになります。

企業の幹部、とりわけ執行役員や取締役候補として名前が挙がるような人は、どこかで私の知人・友人ともつながりがあります。そうでなくても、何らかのルートを通じてその人の評判は耳に入ります。

そのときに、前職で大きな失敗をしていたとわかることがままあります。もちろん失敗の質にもよりますが、失敗そのものが悪いわけではありません。大事なことは、その失敗から何を学んだか、そして次の機会にどう成功に結びつけようと考えているかということです。

最初の面接で本人がそれを語ってくれるのが一番です。そうすればその人の信用は大きく増すでしょう。

しかし、隠してもいずれはわかるような失敗の事実を、なかったことにしてしまう。場合によっては、自分が失敗したという自覚がない。そういう人は、せっかくの失敗の機会に学ぶことをせず、自分の責任を認めようとしない人だと判断しなければなりません。もしカインズの部長や役員として部門を率いるようになったら、その人はまた同じような失敗をするはずです。そのような懸念がある以上、軽々しく採用するわけにはいかないのです。

■自分を過信せず、実績には客観性をもって対峙する

自分を過信せず、実績には客観性をもって対峙する。それができる人と一緒に長く働きたいと思うのは、私だけではないはずです。

「高家さんは柔軟ですよね」

カインズ前社長で現在は会長を務める土屋裕雅がこう私に言ったことがあります。別の会社(ミスミグループ本社)で社長を務めた経験のある私をカインズへ誘ったのは創業家出身の土屋です。

前職で私は5年間社長を務め、その間、リーマンショックを経ながらも売上高、利益とも約1.6倍に伸ばしました。そのことには多少の自負もあります。しかし私は、カインズの社長として前職のときと同じ経営スタイルを続けようとは一切考えませんでした。前職時代の仲間がいまの私を見たら、別人のようだと思うのではないでしょうか。

機械商社のミスミグループ本社とホームセンター運営の当社とでは、業種も社風も社員の性格も違いますから、経営スタイルも違って当たり前。そして数字に表れた実績も、自分1人ではなくチームや時勢に助けられてのこと。

自分のことですから気恥ずかしいのですが、土屋が「柔軟ですね」と言ってくれたのは、そういう考え方が私の行動にも表れていたからだと思います。その期待に応えるには、当社でも実績を上げ続けなければならないのですが(笑)。

▼高家流 一流の条件
●人柄を見る5分の雑談
●長く一緒に働ける人か
●判断には五感を総動員

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高家正行(たかや・まさゆき)
カインズ社長
1963年3月、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。三井銀行、A.T.カーニーを経てミスミグループ本社へ。2008年から社長。16年カインズ取締役、副社長を経て19年3月から現職。

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(カインズ社長 高家 正行 構成=山口雅之 撮影=永井 浩 写真=iStock.com)

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