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シティ社長が忘れない"入社1日目"の言葉

プレジデントオンライン / 2019年5月9日 9時15分

シティグループ日本代表 リー・ウェイト氏

世界160以上の国・地域でサービスを展開する米金融大手シティグループ。同社に36年在籍して要職を務め、2018年8月、日本法人代表に就任したリー・ウェイト氏に、一流のビジネスマンに求められる条件について聞いた。

■入社後すぐの業界の洗礼

大学を出て就職した証券会社、E・F・ハットン(シティグループの前身の一社)で働き始めた日のことは、今でも忘れられません。

私はワシントンDCの支店でトレーニングを受けることになっていました。支店のアシスタントマネジャーが、私を支店のブローカー(セールス担当者)たちに紹介して回ります。最後に、その支店で一番稼いでいるブローカーのところに行き、「今日からトレーニー(研修員)として働きます」と挨拶をしました。

その間、その人はずっとこちらに背中を向けたままで、その後ゆっくり私のほうを向き、「わかりました。じゃあ6カ月あげます」と言いました。一人前になるまで6カ月間だけ待ってやる、という意味です。あまり歓迎されていた感じではなかったですね。

当時の証券業界は非常に厳しい世界で、職場もタフでないと生き残れないような雰囲気がありました。ですから私も、なんとか6カ月の間に能力のあるところを示して、私がその支店にとって価値ある存在であることを証明しようと努力しました。おかげで、そのブローカーとは、その後一緒に釣りに行くほど仲良くなることができたのです。

ただ、そうした厳しい環境はまったく過去のもので、この30年以上の間に証券業界も大きく変わりました。今はそんな態度を取る人は容認されませんし、実際にそういう態度を取るような人もいないでしょう。

それ以来、長年にわたりシティグループで働いてきましたが、その間、さまざまな上司の下で仕事のやり方を学んできました。その中には、「何をすべきか」だけでなく、「何をしてはならないか」という教訓もありました。

私が最初に付いたマネジャーは、非常にいい人で個人的にも大好きでしたが、優柔不断なタイプでした。例えば、「AかBかを決めてください」とお願いすると「1週間後に返事をする」と言い、1週間後に聞くと「まだ決まっていない」と言うような人でした。こうした決断力のなさは、この業界では致命的です。私は、「最初の決断の段階で80%くらい合っていればいい、もし間違っていたら後で修正すればいい」と考えていましたので、その人とは仕事がしづらかったことを覚えています。

もう1人、非常にワーカホリックな上司がいました。毎週月曜日の朝に、週末に考えたアイデアやプランを25項目くらい書き連ねたリストを見せて、「これをやるべきだ」と言うのです。

しかし、翌週になると、ほとんどが新しいアイデアやプランに変わっていて、先週と同じ項目は1つか2つしかありませんでした。私はいつも、上司の前では「わかりました」と言いながらメモを取りましたが、自分の部屋に戻ると、そのメモを丸めてごみ箱に捨てていました。

人間は25もの項目を1度に手をつけることはできません。そこで、リストの中に2週間前と同じ項目が残っていれば、それが本当に重要なことだと考え、そこに焦点を当てて仕事をするようにしたのです。

もちろん、上司から学んだ良いところもたくさんあります。ある上司からは、会議のやり方を学びました。例えば、会議に使う資料は会議が始まる48時間前までに提出しなければならず、参加者は事前にその資料を読み込んだうえで会議に参加します。そのため、会議が始まると、すぐにQ&Aから始まり、速やかに意思決定へと至ります。タイムマネジメントと準備の大切さという良い教訓を得ました。

■自分より自分を知る存在

コーチやメンターの存在も大きかったです。フォーマルでもインフォーマルでも構いませんが、信頼関係があり、自分のことを常に気にかけてくれ、時には聞きたくないような厳しいフィードバックもしてくれる存在は、とても大切です。自分の能力やキャリアは、コーチやメンターのほうがよくわかっている場合もあります。

例えば、私がそれまで経験のなかった法人株式営業に異動になったとき、「ほかにもっと適任者がいるのではないか」と思いました。しかし、メンターに聞いてみると、私が適任者である理由を5つリストアップしてくれました。私の場合は、たまたま直属の上司がそういう存在でしたが、メンターを見つけるなら、上司以外の人にしたほうが、もっと相談しやすいかもしれません。

■正しい判断をする唯一の方法とは

シティグループはM&Aを重ねながら成長してきましたが、その過程で常に求められてきたのが、迅速な決断です。私自身、幾度となくM&A直後で混乱した組織に赴き、短期間で状況を判断し、改善のための意思決定を行い、組織を正しいと思う方向へと導いてきました。

早く決断するために大切なのは、オープンな姿勢で、社内のさまざまな知識を持ったプロフェッショナルたちの意見をまず聞くことです。そうすることで、多くの事実が集まり、判断がしやすくなります。日本に来てからも、私はまだ日本での経験が1年にも満たないので、日本でずっとビジネスをやってきた人たちの意見には、常に耳を傾けるようにしています。

■人間は完璧な存在ではありません

もちろん、意見を踏まえて決定したことが結果として間違っていたり、期待以下だったりする場合もあるでしょう。そのような場合には、「あいつの言うことを聞かなければよかった」などと誰かを批判する必要はありません。人間は完璧な存在ではありませんから、そんな無駄なことはせずに、間違いを正直に認めて、適切な修正を行えばよいのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/franckreporter)

社内のさまざまな意見を聞くために、上に立つ人間にはフレンドリーで話しかけやすい雰囲気が必要です。そうすることで、部下は何かあれば、上司に気軽に話をすることができます。もし部下が話しにきてくれないなら、こちらから話を聞きにいくべきです。

私自身、社内の人たちが抱えている問題や、良いことも含めて、いつでも気軽に話してほしいと思っています。組織というのは非常に複雑で、流動的な部分もあります。その中で、何か少しでも気づいたことがあれば、ぜひ教えてほしいですし、そういうときに、「あの人は近寄り難いからやめておこう」となってしまうような状況は避けるべきです。また、話しやすい関係を保つことで、相手の持っている良い面を引き出すこともできるでしょう。

▼ウェイト流 一流の条件
●「Not to do」を知っているか
●適切な“メンター”がいるか
●即時に決断ができるか

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リー・ウェイト(Lee Waite)
シティグループ日本代表
1959年生まれ。83年デューク大学経営学修士取得後、証券会社E・F・ハットン(現シティグループ)に入社。株式部門グローバル法人営業責任者などを経て、2018年8月より現職。

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(シティグループ日本代表 リー・ウェイト 構成=増田忠英 撮影=宇佐美雅浩 写真=iStock.com)

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