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京プラ社長「ダメ出しは素人でもできる」

プレジデントオンライン / 2019年5月10日 9時15分

京王プラザホテル社長 山本 護氏

■高校同期、豊田社長の才気

一流の人物というのは笑顔がすばらしい。顔が笑っているのに目はけっして笑っていないという人がいますが、本物の人物は目元もやわらかいものです。やはり目が笑っていないと、相手は心を開いてくれません。

一流と聞いて私の知人で思い当たるのは、かつて慶應義塾高校で机を並べたトヨタ自動車の豊田章男社長です。日本のリーディング企業を背負いつつ、現場を引っ張っているところに、彼の包容力を実感します。トヨタの経営がぶれることなく、グループ全体が同じ方向に進んでいるところを見てもまさに脱帽です。ニュースなどに登場している彼を見ると、演出のうまさということもあるかもしれませんが、自然体で振る舞っている感じです。2019年初め、アメリカ・デトロイトでの新型スポーツカーの発表時も、とてもいい顔を見せていました。

笑顔が大切ということは社員にも伝えています。2016年6月の社長就任時には「笑顔日本一のホテル」というスローガンを発表しました。京王電鉄グループのフラッグシップを自負するうえで最善のマナーと笑顔は欠かせません。お客様へにこやかに接すれば、誰もが「このホテルに来てよかった」と幸せな気分になってくれます。それはまさに“笑顔力”といっていい。そしてこれが、当社がめざす顧客満足(CS)にほかなりません。

笑顔づくりに関しては「スマイルコンテスト」を実施してきました。最初は2年半前、新宿・八王子・多摩のホテルで、全スタッフ参加で行われました。投票率は9割におよび、新宿では宴会洋食シェフのスタッフが1位でした。各ホテルで上位3名にベストスマイラーバッジを授与しています。その後、彼らを含め、毎回の得票上位者は「プラザスマイルアンバサダー」に就任してもらい、私どものホテル会報誌に紹介するほか、人材教育面のスマイルトレーナーも務めて笑顔を広げています。

■カッコよさより、話しかけやすさ

昔はホテルの宴会サービス係のスタッフなどは、ピシッとしていて恐いような感じのほうが格好いいと思われた時期もありました。しかし、それではお客様はもちろんのこと、スタッフ同士でも話しかけづらくないでしょうか。そういうわけで、当ホテルでは話しかけやすさを重視して、笑顔を基本としています。

とはいえ、「笑顔日本一のホテル」という目標の永遠の課題なのですが、いつ日本一になれるかわからないし、もうなっているかもしれません。とにかく、いつかお客様から「笑顔が日本一ですね」と誉められるホテルをめざす。ゴールはまだ見えませんが、一歩一歩努力を積み重ねているところです。

そのためには当ホテルのスタッフ各々が、心から仕事を楽しんで、生き生きと日々の業務をこなしているかどうかも大事になってきます。つまり、CSに加えて従業員満足(ES)の向上も不可欠なのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/shapecharge)

こう考えたとき、先ほどお話しした豊田氏がトップとして持っている“包容力”に気がつきました。おそらく、豊田創業家の血を受け継ぐ立場で帝王学を叩き込まれてきたのでしょう。それは、周囲の人たちをほんわかと包み込むリーダーシップといって差し支えないでしょう。

その意味で、私や当社の幹部クラスが彼から学ぶべきことは、従業員の意見を真摯に聞くということです。もし、その人の意見を取り入れないのなら、きちんと理由を説明します。ときには理不尽と思われる場合もあるかもしれません。しかし、それは会社という組織なので、その論理を懇切丁寧に説いて納得をしてもらうしかありません。

私の体験からいっても、入社後数年間は10提案しても、部長クラスまで上がるのは2つか3つ。採用はさらに少ないでしょう。その代わり、たとえ新人の意見であっても、やると決めたら全社一丸で実行します。これこそが会社が社員を大切にする姿勢そのものです。

実は、先ほどのCSとESは危機管理やメンタルヘルスにも直結する要素といえます。私どもでは全社的課題として取り組んでいるのですが、スタッフが笑顔だとコミュニケーションが円滑になり、現場での意思疎通をあえて確認する必要がありません。部下の仕事上のミスや悩みにしても、話しやすい風土ができていれば、上司に報告しやすい。当然、リスク回避になり、精神衛生上もプラスです。従業員が元気に働けているということが何より重要なことですから。

■プロは良い点に注目

有名なことわざに「人の振り見て我が振り直せ」があります。この格言については、「他人の欠点を見て自分の行動を直す」のではないと、あるコンサルタントから教えられました。正しくは、「良い点に気づいてそこを吸収すること」だというのです。特に印象深かったのは「同業者についてダメな部分を見つける必要はない。そこは素人でもわかる。プロの目で良い部分を取り入れろ」とのアドバイスでした。

つまり、意識しないとネガティブな考え方をしがちだから、一流になるためにはポジティブな思考を習慣づけることが大切だということです。現に、私の座右の銘は「どんなことも楽しく」です。どのような仕事の中でも何か小さな楽しみを見つけて仕事を進めてきました。

■2021年に開業50周年を迎えます

京王プラザホテル(新宿)は、2021年に開業50周年を迎えます。私のように従業員が楽しめる仕掛けをどんどんつくっていきたいと考えています。どんな勤務体制でも辛さがあってはいけません。ルーティンの仕事に携わるかもしれませんが、1つでも楽しみを見つけてほしいと思っています。例えば「昨日は3分かかった仕事を、今日は2分50秒でできるようになろう」と工夫するだけでもいいでしょう。クリアしたら、小さな達成感を味わえるはずです。

ホテル業界は19年のラグビーワールドカップや20年の東京オリンピックを控え、インバウンドの増加が追い風になり、どこも業績は堅調です。京王プラザホテルでも生け花や茶の湯で、訪日外国人の方に日本文化を体験していただいています。また館内には、春には吊るし雛を飾るなど、東京にいながら季節ごとに全国の伝統を味わっていただく企画も進めています。

しかし、ただ時流に乗るのではなく、いかにお客様が非日常を満喫できるかに心を配るべきでしょう。私どものホテルのホスピタリティに満足していただけるか。そのときにファンを掴むのは、万全な接客です。そのためにも「笑顔日本一のホテル」というスローガンの実現に全社一丸で取り組んでいるのです。

▼山本流 一流の条件
●目まで笑っているか
●人の意見を受け入れるか
●何事もポジティブか

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山本 護(やまもと・まもる)
京王プラザホテル社長
1957年、東京都生まれ。79年、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)入社。京王観光、京王百貨店などへの出向、京王電鉄常務取締役総合企画本部長などを経て、2016年6月より現職。

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(京王プラザホテル社長 山本 護 構成=岡村繁雄 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)

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