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世界一想像力があるのに自信がない日本人

プレジデントオンライン / 2019年4月26日 15時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sihasakprachum)

世界5カ国5000人に「世界でいちばんクリエイティブな国はどこか」と聞いたところ、日本人を挙げる人が最多だった。ところが「日本が世界一だ」と答えた人の割合は、日本人がいちばん低かったという。なにが原因なのか。デザインディレクターの石川俊祐氏が「デザイン思考」という考え方から解説する――。

※本稿は、『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■もっと主観的でいい

デザイン思考を実践するために必要なマインドセットは、いくつかあります。まずはその中でも「主観」という、とくに日本のみなさんが欠かしがちな要素についてご説明しました。

デザイン思考において、「マインド」と「スキル」は車の両輪です。まっすぐ前に進むためには、両者を同じように大きく育てなければならない。どちらが大事というものでもなく、両方とも必要不可欠なものなのです。

けれどあえて言えば、日本のみなさんにまず意識していただきたいのはマインドのほうだ、とぼくは考えています。なぜなら、みなさんは、自分自身にかけている「ブレーキの力が半端なく強いから。

これは、いままでの社会人生活の中でしっかり身につけてきた、思考のクセとも言えます。このブレーキを外して車輪を前に進めるためにも、まずは「デザイン思考家として持つべきマインドセット」を知り、普段から意識することがファーストステップ。それがみなさんの「クリエイティブ・コンフィデンス」――「自分の創造性に対する自信」を育てる第一歩になるはずです。

■人生にはクリエイティビティが必要だ

いまぼくは「クリエイティブ・コンフィデンス」という言葉を使いましたが、これもまた、IDEO(アイディオ)が提唱している概念です。しかし、「クリエイティブ」は「デザイン」と同じく、どうも誤解されがちなカタカナ。ワークショップでこの言葉を使うと、「あ、自分の話ではないな」という顔をされることが多々ありました。業種で言えば広告代理店やメディア、職種で言えば企画やデザイナーといった「都心で働くごく一部の人の仕事」を連想されてしまう。

でも、「クリエイティブ」は業種や職種とはまったく関係ありません。もちろん、小説やマンガ、映画といった、いわゆる作品をつくる力のことでもありません。

意志のある人生を送る。モノや体験をつくり、イノベーションを起こす。国が抱えているような大きな問題を解決する。

……こうした大小さまざまなところで発揮される「未来をつくる普遍的な力」こそ、クリエイティビティ――「創造性」と呼ばれるものです。

「自分には、周囲の世界を変える力がある」という自信。
「自分にはなにかを生み出し、実行する力がある」という自信。
「自分の考えってイケてるぞ、みんなに聞いてもらおう」と思える自信。

これらが、「クリエイティブ・コンフィデンス」なのです。

■クリエイティブ・コンフィデンスを持つためのマインドセット

さて、先ほどからテーマにしている「主観を信じること」に加えて、ぼくたちデザイン思考家が掲げているのが、次の4つの「クリエイティブ・コンフィデンスを持つためのマインドセット」です。

①曖昧な状況でも楽観的でいること

一般的に、人は方向性や仮説がないモヤモヤした状況を嫌うもの。そんなとき、「自分ならいつかいいアイデアが出るさ」と楽観的に構えることはとても大切です。切羽詰まって机に向かって頭を抱えたり、眉間にシワを寄せたりしない。コーヒーを飲んで雑談しつつ、「どこにヒントがあるかな」とワクワクしながら探していくからこそ、いいアイデアが浮かびます。

ですから、クリエイティブ・コンフィデンスがある人って、「なんだか楽観的」なんですね。

②旅行者/初心者の気分でいること

はじめて訪れる国では、信号機、看板、店員のふるまいなど、目に入るすべてが「どうしてこうなんだろう?」「おもしろい!」ですよね。旅行者にとって、旅は気づきの宝庫。この旅行者と同じマインドを普段の生活にも持ち込んでみることが、2つ目のマインドセットです。「こういうもの」という思い込みをそぎ落とし、ヨソモノの目を持ってみる。そうすれば、見慣れている風景にも新鮮な発見があるはずです。

この「旅行者の目」を向ける対象は、日常だけではありません。入社したときに不思議に思った会社や業界の慣習、上京したてのときに衝撃を受けた都会のルール。これらに対して、だんだんなにも感じなくなっていった、という経験はありませんか? すっかり「当たり前」になってしまったことに対してもう一度初心者の目を取り戻すことで、キラリと光るアイデアの原石を見つけられるんです。

③常に助け合える状態をつくること

ぼくも(失礼ですがきっと)みなさんも、オールマイティな天才ではありません。得意と不得意があり、好きと嫌いがある、個性的な人間です。そんな凸凹な人間を組み合わせ、チームを組んでアイデアを出すことで、個人でいるよりずっとクリエイティブになれるのです。ですから、困ったときに声を上げたらすぐに助けてもらえたり、声をかけられたら「お安いご用!」と手を貸したりする環境をつくることが大切です。

④クリエイティブな行動を信じること

いままでと同じものをつくる。みんなと同じことをする。競合を意識する。差別化する。……これらはクリエイティブの反対の姿勢で、誰かが描いた地図を見ながら船を進めるようなものです。危険も少なく、ラク。でも、誰かが見つけ、すでに征服している大陸にしか行き着くことができません。

一方で、いままでと違うもの、みんなと違うアイデアを目指すのは、真っ白な地図を片手に、羅針盤さえもないまま北極星と太陽だけを頼りに船を進めるようなもの。ものすごく大変だし、相当な勇気が必要です。でも、誰も見つけていない海や、まっさらな大陸に辿り着く可能性があります。みなさんには、こちらの航海に挑んでほしいのです。

クリエイティブでありたいと思うのであれば、クリエイティブな行動を信じ、まずは動いてみましょう。机の上で地図を眺めていても、新大陸は見つからないのですから。

■本当は世界一クリエイティブな日本人

「クリエイティブ・コンフィデンス」の概念を広めることに関しては、IDEOの創業者であるデビッド・ケリーと、その弟のトム・ケリーも長年熱心に取り組んでいます。「誰でもクリエイティブになれる。だからみんな、もっと自信を持とうよ」というメッセージの共著を出しているくらいです(『クリエイティブ・マインドセット』日経BP社)。

また、兄のデビッドはスタンフォード大学にデザインスクール「d.school(ディースクール)」を設立するなど、デザイン思考を広げる活動にも取り組んでいます。いま世界中で「デザイン」へのリテラシーが上がっているとしたらIDEOの、そしてケリー兄弟の貢献が大きいと言ってよいでしょう。

このクリエイティブの塊のようなケリー兄弟。兄のデビッドが癌を克服した際、快気祝いの兄弟旅行で東京と京都を選ぶほど筋金入りの日本ファン。そんな日本をこよなく愛する彼らは、共著の中で日本人の奥ゆかしい性質に関してこう記し、残念がっています。

「世界5カ国の5000人を対象とした最近の調査によると、日本以外の国の回答者たちは、日本が世界でいちばんクリエイティブな国だと答えました。ところが、日本がもっともクリエイティブだと回答した人の割合は、なんと日本人がいちばん低かったのです」

■結果を出す人は「目を輝かせ、胸を張り、大きな声を出す」

……なんとなく、納得のいく結果ですよね。ぼくもこの結果を見て「日本人らしいなあ」と感じました。これはひとえに、「自分たちがもっともクリエイティブなんてとんでもない」、ひいては「自分はクリエイティブな人間ではない」という自身に対する自信のなさのせい、「ブレーキ」のせいでしょう。

ここでみなさんにお伝えしたいのは、「自信(クリエイティブ・コンフィデンス)がなければ創造性は発揮できない」ということ。「自分のアイデアなんて」と萎縮しているうちは、創造的にはなれないということです。

ちょっと思い浮かべてみてください。

いい切り口の企画を考える同僚、メディアやSNSで見かける起業家、「新しい働き方」を生き生きと実現している人たち。

彼らは、自分のアイデアに強い自信を持っているように見えませんか? 目を輝かせ、胸を張って、大きな声でみんなに呼びかけ、行動に移している。

もちろんそう「見せる」こともアイデアを実行するための戦略のひとつです。しかし、彼らは間違いなく自分の発想に対して信頼感を持っている。そしてこの「自信」が行動につながり、次のクリエイティブを生み出す。より創造的になっていくのです。

■あなたのアイデアは、すばらしい

ですから、ここでぜひ2つの約束をしてください。

まず、自分は創造的ではないとか、自分のアイデアなんて高が知れているという考えが頭の片隅にでもあるとしたら、その思い込みを捨てること。いきなり自信を持つことはむずかしいかもしれません。でも、まずは両手に抱えた「不信」を手放してみましょう。

そしてもうひとつが、自信を持つ前であっても、むりやり「クリエイティブな行動」を取ってしまうこと。

具体的にはどうすればいいか? ぼくは、はじめのアクションとして「場づくり」をおすすめしています。自分が思いついたアイデアを「客観的」に選別せずに発することができ、

石川 俊祐『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』 (NewsPicks Book/幻冬舎)

決して評価も否定もされない「場」。

信頼できる仲間と自分が抱えている課題に対するアイデアを出し合う時間を設けるもよし。SNSグループをつくるもよし。部署で「水曜日のランチタイムは新規事業のプランを出し合う会」とルール化するもよし……。

はじめは、自分のアイデアを口に出すのを気恥ずかしく思うかもしれません。「賢く見えるアイデアを言わなきゃ」と背伸びしたくなるかもしれません。でも、続けるうちに少しずつ「これ、おもしろくない?」と臆さず素直に言えるようになるはず。それに比例して、浮かぶアイデアの質と量が変わってくるのを感じられるはずです。

クリエイティブな人とは、ただ発想力に優れている人ではありません。自分の主観を信じる力が強い人が、結果としてクリエイティブになっていくのです。自信と創造性は、ニワトリと卵のようなところがあるんですね。

(IDEO Tokyo デザインディレクター 石川 俊祐)

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