お酒に弱くても楽しめる「バーの流儀」
プレジデントオンライン / 2019年5月10日 11時15分
■度々訪れないエリアだからこそ、ローカルの味を楽しみたい
出張の楽しみといえば、地元でしか味わえない食材や、料理を堪能することだろう。料理を楽しんだ後は、そのままホテルへ戻ってゆっくりするのもいいけれど、やはり、ローカルなバーへ足を運んでみるのも出張の楽しみのひとつ。
ふだん暮らしているエリアと違い、知っている店はほぼゼロ。以前雑誌に掲載されていて、機会があればいつか行ってみようと記録していた店か、スマホで急きょ調べた店のいずれかだが、いきなりそうした店を訪れるのは、いつも以上に勇気がいる。男性ならばこうした場合、躊躇せずに目についた料理店やバーにも足を踏み入れられるのだろうが、女性はなかなかそうもいかない。少しでも評判がよく、しかも味がよくなければ入りたくないのだ。だからこそ、その街で暮らす仕事先の人々への聞き込み調査がものをいう。
今回訪れた札幌は、北海道随一の都会。東京には入ってこない新鮮な魚介類を食せる店も多く集まっている。めずらしい魚を出す店を紹介してもらい、その後のバーもリサーチしてみた。いくつか候補が挙がったところで、ベテラン女性バーテンダーの店を訪問してみることにした。
■出張の締めの1杯を求め、狸小路の老舗バーへ
おいしい料理を堪能した後、ふらふらと歩いて8分ほど。そのバーは歓楽街「すすきの」の狸小路を入ってすぐの雑居ビル10Fにあった。
「ドゥ エルミタアヂュ」
ワンフロア1店舗形式のビルの10Fでエレベータを下りると、そこがバーの入り口だ。
奥に広がるのは、15席のカウンター。棚にはウィスキーやリキュールがズラリと並んでいる。
「いらっしゃいませ」
カウンター越しに明るい声で迎えてくれたのは、オーナーバーテンダーの中田耀子(ようこ)さんだ。中田さんほか男性バーテンダーが2人。何度となく一人でバーを訪れているが、女性バーテンダーが迎えてくれるだけでなぜか安心してしまうから不思議だ。
平日の22:30、カウンターには男性の先客が数人、中田さんに促されて奥のカウンターに座る。春のおすすめカクテルのメニューが目に飛び込んでくる。
「早春賦」という美しい名前にひかれてオーダーする。訪れた時季は、北海道はまだ桜の開花前、「早春」という言葉がよく似合う。
「どうぞ」とスッと提供されたのは、ジンをベースとしたやさしげな若草色のカクテルだ。聞けば、手作りのレモンチェロを使用しているのだという。
ワインやウィスキー、ブランデーなどをオーダーするのもいいが、カクテルは各店オリジナルのものも多いので、女性にはぜひ試してもらいたい。
■オーナーは、女性バーテンダーの草分け的存在
オーナーバーテンダーの中田耀子さんは、現在74歳。札幌の有名デパートに就職後、手に職をつけたいとバーテンダーをめざし、26歳で札幌・すすきのにある老舗バー「やまざき」に入店。当時は、女性でバーテンダーをめざす人は全国でもめずらしかったという。38歳で独立、50歳で2店舗目となる、ここ「ドゥ エルミタアヂュ」をオープンしたのだそう。
女性バーテンダーの草分け的存在の中田さんのバーテン歴とともに、長年通い続ける客も多いのがこの店の特徴のよう。さらに中田さんのやさしい雰囲気に安心できるのか、女性のひとり客も多く訪れているようだ。全日本バーテンダー協会主催のコンクールで受賞歴もあり、業界でも名が知られている中田さんが考えたオリジナルカクテルだけでも60種以上。女性に人気の旬のフルーツを使用したカクテルもオーダーできる。
1杯目をクイクイッと飲み干し、2杯目は「スノードロップ」という、こちらもクラフトジンをベースにしたカクテルをオーダー。グラスに沈むミントチェリーがアクセントだ。
ベースのお酒を効かせるのがこちらのバーの特徴だそうで、このカクテルもジンの風味が効いている。お酒の弱い人は、オーダー時にアルコール弱めのものをオーダーするといいだろう。
■アルコールが飲めなくても、バーを楽しもう
「バーはお酒が飲める人が行くところ」、アルコールが飲めない人は、バーを訪れてはいけないと思い込んでいる人も多いが、そうではない。アルコールを必ずオーダーしなければならないという決まりもない。
アルコールが苦手な人にはハードルが高く感じるが、ひとたび入り口に足を踏み入れれば、バーはやさしく受け入れてくれる。
「飲めなくても来てくださる。これほどうれしいことはありません。そんな方々のために、ノンアルコールのカクテルやソフトドリンクなども提供させていただいています」と中田さん。
「飲めないから」と何もオーダーしないのは、ルール違反。さらに、オーダー時に「私はお酒が飲めないから……うんぬんかんぬん」と事細かに私的な事情を説明する必要はない。
席についてひと言「ノンアルコールのものを」と伝えればいい。周囲のお客に飲めないことがバレるのがイヤという人はそういないだろうが、もし気づかれたくないのであれば、ノンアルコールカクテルの名前を1、2個覚えておくのもいいだろう。
バーには、人を癒やす雰囲気がある。お酒が飲めなくてもぜひ訪れて、バーテンダーとの何気ない会話や、カウンターでひとり静かにその日の疲れをリセットするのもいいだろう。
大人の女性のたしなみのひとつに「バー」があってもいいように思う。
少しアルコールが回ってきたので、最後の締めにノンアルコールのカクテル「チョコっとミント」をオーダー。札幌では、お酒の後に「シメパフェ」するのがローカルたちの定番なのだそう。そこまでヘビーに締めたくないので、生クリームを使ったこのオリジナルカクテルはちょうどいい。ミントの香りが鼻をくすぐり、カカオの味がまるでデザートのようで札幌の夜を締めくくるにはちょうどいい。ノンアルコール派にもおすすめしたい。
スイーツで締めた気分で、口中も幸せになったところで本日は終了。2時間弱、3杯を楽しんだ夜だった。
北海道・札幌、すすきのにある1994年開店のシックな空間の老舗バー。オーナーは女性バーテンダーの草分け的存在。現役でカウンターに立ち、腕をふるっている。60種以上にのぼるオリジナルカクテルが自慢。女性のひとり客も多く利用しやすい。カウンターのほか、6人座れるBOX席もあり。
北海道札幌市中央区南3西4丁目 南3西4.B.L.D10F
TEL=011-232-5465
営業時間=月~土:18:00~25:00 *祝日は23:00まで
休業日=日曜
※チャームチャージ=1800円が別途かかります。
(プレジデントウーマン編集部 戌亥 真美)
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