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不安払拭の"神頼み"で不安が倍増するワケ

プレジデントオンライン / 2019年5月25日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

■心理学でも証明「信じるものは救われる」

なぜ人は迷信やジンクスにすがり、神頼みをしてしまうのでしょうか。自らが抱える不安に対処するためです。自分は成功できるだろうか――。目の前の問題の大きさにかかわらず、誰もがいつでも、そんな不安や恐怖心を抱えるもの。そんな負の感情に対し、ジンクスは、「自分の未来をコントロールできる」と思い込ませてくれる。「信じるものは救われる」というわけですが、その効果は心理学でも証明されています。

成功のイメージを持っていると、心はそれに寄せていこうとするのです。「自分はできる」と思うことで、恐怖に打ち克ち平常心を保つ。認知行動療法では「自己教示訓練」といいます。この自己教示訓練の有用性は、ビジネスの現場でも同じです。

例えば、大事なプレゼンが控えていると想像してください。最初から、うまくいくとはなかなか思えません。成功と失敗という2つのイメージが浮かぶものです。この矛盾する2つでモヤモヤした状態を、「認知的不協和」と呼びます。これを解決するための手段として、占いや迷信、ジンクス、神頼みを使うのです。

迷信やジンクスを支えているのは何かというと、一言でいってしまえば「偶然」にすぎません。本当は高い頻度で起きているわけではないのに、たまたまだからこそ印象に残ってしまうことを「間欠強化」といいます。迷信やジンクスはそうして生まれ、ジンクスに当てはまらなくても成功していることがたくさんあっても、自分の都合よく判断してしまうようになるわけです。

もちろん、迷信やジンクス、神頼みで、気持ちをポジティブにできるのであれば問題ありません。しかし、あまりにもそれにすがりすぎて、反対に仕事に手がつかなかったり、周りに迷惑をかけてしまっては考えものです。迷信によって、反対に不安に苛まれるようになってしまう人もまた多くいて、ひどくなるとカウンセリングが必要なケースもあります。

■よい意味で「諦めること」も必要

カウンセリングではどう対処するかというと、エビデンスを重視します。「職場に足を踏み入れたら苦しくなるに違いない」。そんな不安を抱える人に、昨日はどうだった? おとといは? と聞くと、実は何も起こっていないとわかる。確率を計算してみるのもよいでしょう。自分が信じているものだけに囚われている状態から一歩引いて、客観的に検証してみると冷静になれるのです。

妄信に陥りがちな相手に対しては、3つの点を押さえて関係を築いてください。「(気持ちは)わかります」と共感すること。できたことに対して「すごいですね」「頑張りましたね」と承認すること。そして、「○○さんならできると思います」と主語をはっきりさせて励ますことです。

それでも言葉が心に届かない人もいます。例えば新興宗教や陰謀論を信じ込んでしまっている場合、いくら周りが頑張ったり、環境を変えても難しい場合があります。むしろ、周りが傷ついてしまうことも多い。そんなときは、「なんとかしようとしない」ことも大事。相手の背景だけは理解してあげて、よい意味で「諦めること」も必要です。

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藤井 靖
明星大学心理学部心理学科准教授
臨床心理士。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程臨床心理学研究領域修了。

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(明星大学心理学部心理学科准教授 藤井 靖 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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