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茂木健一郎が"課金サイト"を選ばないワケ

プレジデントオンライン / 2019年6月9日 11時15分

無料でオープンに発信したほうが人気が集まりやすい。(PIXTA=写真)

■ファンが増える最新ネット戦略

インターネット上には、さまざまなビジネスモデルが現れては消えていく。

まさに、ネットは常に戦国時代で、栄枯盛衰も激しい。

そんな中、最近のトレンドの1つに、サブスクリプション方式がある。映画やドラマなどの動画配信に加えて、テキストにおいても、記事ごとに、あるいは月いくらなどの方法で課金する。そんなビジネスモデルをよく目にする。

インターネット上の情報は無料であるという意識が強い中で、どのようにして課金するかということは難しい問題である。

ネットフリックスなどの、明らかにお金も時間もかかっている動画ならば、課金されても見ようかという気持ちになるかもしれない。一方、テキストも確かにお金も時間もかかっていると言えば言えるのだろうけれども、「本」などのパッケージになっていない限り、なかなか有料という意識になりにくいというのが一般の本音ではないだろうか。

私自身、ツイッターやブログなどで、毎日かなりの量のテキストを発信しているけれども、「課金」したいと思ったことは今までない。一部、課金が可能なメディアでも書いているけれども、課金オプションを選択したことは1度もないし、これからもその予定はない。

なぜ、テキストに課金することに抵抗があるのか? 1つには、課金してしまって「壁」の向こうになると、多くの方に読んでもらえないということがある。ネットの特徴は、誰でもアクセスできるという自由さにある。課金でそのような自由さが失われてしまうことに抵抗がある。

もう1つ、さらに深い理由がある。すなわち、今の時代、あるテキストが読んでもらえるだけでもありがたいという意識があるのである。

かつてのマスメディア全盛時代とは異なり、今はネット上にコンテンツがあふれている。選択の幅は広がって、その中で人々が自由に自分の読むもの、見るもの、聞くものに出合っている。

そんな中で、自分たちのつくった、あるいは関わったコンテンツに興味を持って、接してもらえるだけでありがたいと思わなければならない。そんな気持ちが強い。そして、そのことが回り回ってある種の「経済圏」もつくることになるのだと思う。

課金すれば、短期的には経済的な見返りがある。その一方で、接触する人の数は、どうしても限られたものになる。

■読んでくださって、見てくださってありがとう

一方、無料で誰でもアクセスできるようにしておけば、短期的な収益は上がらないけれども、回り回って、知名度が上がり、親しみも増し、結果として将来に見返りがあるかもしれない。もちろん、その保証は全くないけれども、少なくとも人々の脳には刻まれる。それが一番大切だ。

これだけコンテンツがあふれ、人々の可処分時間の奪い合いになっている現代。読んでもらえるだけでも、見てもらえるだけでもありがたいという謙虚な気持ちが、案外と時代の「真ん中」なのではないかと感じる。

企業の宣伝の戦略でも、いわゆる「広告」がだんだん効かなくなってきていて、「パブリシティ」の部分が重要になってきている。その際には、人々の自然な興味や口コミが命だから、「読んでくださって、見てくださってありがとう」という姿勢が大切になる。

今の時代、ネット上で一番広がるのは、「無私」と「感謝」の精神なのだ。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=PIXTA)

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