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"謝罪の名人は出世する"と断言できるワケ

プレジデントオンライン / 2019年6月6日 9時15分

放送作家・PRコンサルタント 野呂エイシロウ氏

■経済界も芸能界も腰が低いと好かれる

「会社の社長のような偉い人たちは、人から頭を下げられることはあっても、人に頭を下げることは少ないだろう」――世間一般の人は、そんなイメージを持っているのではないでしょうか。しかし実際には、むしろその逆。社会的地位が高い人ほど、よく謝り、謝り方もうまいケースが多いんです。

会社のマネジメント層なら、部下が仕事でミスをしたり、取引先とトラブルになったりしたとき、一緒に謝りに出向くことがありますよね。昇進して部下が増えれば増えるほど、謝る機会も増え、場数を踏んで鍛えられるのです。会社のトップなら、謝る回数もトップクラスのはず。謝罪会見などで社長が深々と頭を下げる姿を、TVなどでよく見かけるでしょう。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉は、まさにその通りだと思いますね。

もちろん、すべてのトップが「謝り上手」というわけではありません。社長の中にも「謝り下手」の人がいるし、最近不祥事続きの大学のトップも、謝るのに不慣れな人が目立ちます。なかでも、政治家は人気商売にもかかわらず、ビックリするほど謝るのが下手。エリートコースを順調に進みすぎて、苦労知らずなのかもしれませんね。

けれども、PRコンサルタントとして、さまざまな企業のトップを見てきた僕は、こう断言できます。「謝り上手の人なら、どこに行っても信用を得て、着実に出世する」と。超一流のトップは、謝り方も超一流です。というより、人間ができていて謝り上手だから、成功できたのかもしれません。

僕は長年、放送作家の仕事もしていますが、芸能界でも謝り上手でないと、周りから愛されず、生き残っていけません。謝るのがうまい有名タレントの代表といえば、お笑いコンビ、キャイ~ンのウド鈴木さんでしょう。一緒に仕事をしているとき、悪いことをしていなくても、彼は「すいません、すいません」と何度もいいます。逆に、ウドさんが仕事場で怒られているところを、僕は1度も見たことがありません。

経済界の謝り上手を挙げるなら、ライフネット生命保険元会長の出口治明さん。自分の間違いに気づけば、僕みたいな人間にでも、即座に謝ります。若手のベンチャー経営者では、ビズリーチ社長の南壮一郎さんもマメに謝りますね。先日、南さんにお目にかかったとき、お互いに会釈しかできなかったんですが、南さんから「きちんとご挨拶できなくて、すみませんでした」と、すぐにSNSで連絡が来ました。

■部下にも頭を下げられるか

謝罪の名人は、いつでも、どこにでも謝りに行けるように準備を怠りません。経営者なら、社長室に地味なスーツやネクタイを常に用意しています。その場で土下座できるように、脱ぎやすい「ローファー」の靴を履いていくのもいいかもしれませんね。また、誰彼かまわず、謝ることができます。得意客や権力者だけでなく、部下や仕入先といった、自分よりも“弱い立場の人間”にも素直に謝るのが特徴といえるでしょう。

謝罪の名人からは、上手な謝り方を学ぶこともできます。僕なりに見つけた心得の1つが「すぐに謝れ」ということ。例えば、会社のスキャンダルが発覚した場合、問題が大きくなってから、やっと火消しに動き出す企業が多いのですが、それでは遅すぎます。週刊誌やTVで取り上げられることが予測できたら、先手を打って、マスコミの報道がかすんでしまうくらい大々的な謝罪会見を開くべきです。そうすれば、傷が浅くてすみます。

もう1つの心得が「思い切り謝れ」ということ。「そこまで謝らなくても」と思われるくらい、自分が悪かったと、ひたすら頭を下げるのです。決して他人に責任を転嫁したり、言い訳をしたりしてはいけません。「謝」という漢字は、「言葉で心を射る」という字です。相手の心が動くまで、謝り続けましょう。

時事通信フォト=写真

■伊達政宗のごとく死ぬ覚悟で謝る

戦国時代の武将、伊達政宗には、「豊臣秀吉のもとに白装束で謝罪に赴いた」というエピソードがありますよね。「あなたに殺されてもかまいません」という意思表示のためのパフォーマンスだったのですが、その度胸のよさと潔さが秀吉に気に入られ、政宗はかえって豊臣氏に重用されました。このように、「超一流の謝罪の名人」は、マイナスをゼロに戻すだけでなく、プラスにも転じることができるのです。

ただし、何ごとも闇雲に謝ればいいというわけではありません。謝罪のポイントは「自分に非があるかどうか」でしょう。例えば、法廷闘争が日常茶飯事の米国人も、自らの非が明らかな場合、あっさり「I’m sorry.」と謝ります。

超一流の人はなぜ上手に謝ることができるのでしょうか? それは、志が高いからでしょう。謝罪の名人の経営者といえば、「新しいビジネスで社会を変えたい、世の中をよくしたい」といった理想を抱いている人ばかり。大義を実現するためには、眼前のトラブルの芽を早めに摘み、信用を守らなければなりません。だから、自分のプライドにこだわらず、さっさと謝罪できるのでしょう。

■「善後策」を求めるパターンが多い

謝り上手の人は「謝られ上手」でもあります。謝る人の立場も、よく理解しているからでしょう。謝罪の名人の経営者がくどくど怒っているのを見たことがありません。「善後策」を求めるパターンが多いですね。未来志向で、相手との間にわだかまりも、しこりも残さないんです。

突き詰めれば、謝罪もコミュニケーションの1つだと、僕は考えています。「謝罪」も「感謝」も同じ「謝」の字を使います。自分の誠意を相手に伝えて、その場の空気をよくし、人間関係を円滑にしていくことが、謝罪の目的であるわけです。どちらが悪いとか、負けたとかいうのは本来、どうでもいい問題なんですね。そう考えれば、抵抗感も、恐怖感も覚えずに、上手に謝れるのではないでしょうか。

Q:土下座覚悟で謝罪するときどうする?
A:すぐ脱げるローファーの靴を履いていく

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野呂 エイシロウ(のろ・えいしろう)
放送作家・PRコンサルタント
放送作家として「奇跡体験!アンビリバボー」などのテレビ番組を手がける。同時に有名企業の戦略的PRコンサルタントを務める。著書に『なぜ一流の人は謝るのがうまいのか』(SBクリエイティブ)など多数。

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(放送作家・PRコンサルタント 野呂 エイシロウ 構成=野澤正毅 撮影=石橋素幸 写真=時事通信フォト)

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